2018−19シーズン開幕! セリエA全20クラブ戦力分析

2018−19シーズン開幕! セリエA全20クラブ戦力分析

セリエA20クラブの戦力を分析 [写真]=Getty Images

 クリスティアーノ・ロナウドがやってきた! イタリアのティフォージは、それがもうかなり長い間低迷を続けているカルチョの復権につながることを切に願っているに違いない。もっとも、これでユヴェントスのセリエAでの“一強体制”がさらに強化されたことは間違いないが……。空前絶後のセリエA8連覇という偉業に挑むユーヴェに死角はないのか?

 名伯楽マウリツィオ・サッリを失ったナポリ、昨シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)で旋風を巻き起こしたローマ、久しぶりにCLの舞台に立つインテル、ジェンナーロ・ガットゥーゾが“闘魂”を注入中のミラン……。いずれも昨シーズンより若干のレベルアップがあったが、一強を脅かす雰囲気はない。チャンスがあるとすれば、ユーヴェがCL制覇に全神経を集中した上で、追走するチームにカルチョの女神が格別の庇護を与えた時だけだろう。

文=小川光生 写真=ゲッティ イメージズ

ユヴェントス 戦力評価:S



 世界最高峰のプレーヤーCR7の入団、世界屈指のCBレオナルド・ボヌッチの復帰と、カルチョの貴婦人はこの夏、世界の移籍市場のトップニュースを独占した。それ以外にも、リヴァプールからエムレ・ジャン、バレンシアからジョアン・カンセロを獲得するなど、彼らのセリエAでの優位は戦力的にもメディアへのアピールの点でもゆるぎないものとなった。もはや8連覇という異次元の記録の継続は最低限の課題で、今シーズン彼らが目指すのは、1996年以来23年間遠ざかっているCLのタイトルの奪還であろう。C・ロナウドのモティベーションがフレッシュなうちに何とかこの悲願を達成したいところだ。

ナポリ 戦力評価:A



 昨シーズン、「もしかすると……」というところまで王者ユーヴェを追い詰めたナポリだが、躍進の立役者サッリ監督がチェルシーに引き抜かれる事態に。代役として、名将カルロ・アンチェロッティに白羽の矢が立った。英仏独伊と4カ国でリーグ制覇、CL制覇3回と実績は申し分ないが、セリエAで、しかもサッリ色が染みついたナポリで1年目から結果を残せるかどうか。新戦力はベティスからMFファビアン・ルイス、リールからSBケヴィン・マルキュイらを獲得。ドリース・メルテンス、ロレンツォ・インシーニェ、マレク・ハムシク、カリドゥ・クリバリ、アルカディウシュ・ミリクなど中軸のほとんどが残留したのは強みだが、さらに強力になったユーヴェと昨シーズンのように渡り合えるかは疑問符がつく。

ローマ 戦力評価:A



 昨シーズンはCLで準決勝に進出し、ファンを狂喜させた。ラジャ・ナインゴランはインテルに去ったが、その穴埋めとしてハビエル・パストーレ、ブライアン・クリスタンテら実力者を獲得。偉大な父パトリックの素質を受けついだジャスティン・クライファートの加入も話題を呼んでいる。新正GK候補はスウェーデン代表としてロシアW杯で再三好セーブをみせたロビン・オルセン。そのほか、インテルからダヴィデ・サントン、ディナモ・ザグレブからアンテ・チョリッチを獲得するなどバックアッパーの補強も万全だ。あとはエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督のマジックで王者ユーヴェをどこまで苦しめることができるか注目したい。

インテル 戦力評価:A



メルカートでは活発な動きを見せた。アトレティコ・マドリードからロシアW杯で大活躍したクロアチア代表DFシメ・ヴルサリコ、ラツィオからステファン・デ・フライ、ユーヴェからクワドォー・アサモアをそれぞれ獲得し、ディフェンスラインを一変。中盤にはローマからナインゴラン、サッスオーロからマッテオ・ポリターノを補強。新加入のヴルサリコをはじめ、イヴァン・ペリシッチ、マルセロ・ブロゾヴィッチとW杯で旋風を巻き越したクロアチア勢が攻守の中軸にいるのも興味をそそる。ここ数年の課題は、序盤のスタートダッシュを後半まで持続できないこと。その克服と久しぶりのCLでの奮起を期待したい。

ラツィオ 戦力評価:A



 2016年春の就任以来、着実にチームを強化してきたシモーネ・インザーギ監督。昨シーズンは「3−5−2」を基調としたシステムがシーズンを通じて機能し、最終節までインテルとCL出場権を争った。昨シーズン得点王(29ゴール)のチーロ・インモービレ、ファンタジスタのルイス・アルベルト、プレーメーカーのルーカス・レイヴァら昨シーズンの躍進を支えたベースメンバーの残留はなにより心強い。インテルに移籍したCBデ・フライの代役は、サッスオーロから加入のフランチェスコ・アチェルビが務めることに。継続性という点では、20チーム中随一か。ボローニャの監督に就任した実兄フィリッポとの兄弟対決(18節、37節)にも注目。

ミラン 戦力評価:A



 昨シーズン序盤は極度の不振に苦しんだ“悪魔軍団”だが監督がガットゥーゾに変わってから立ち直り、最終的には6位でヨーロッパリーグ(EL)出場権を手にした。今季の目標は4位以内を確保し、過去5回優勝しているCLの舞台に2013−14シーズンぶりに舞い戻ることだろう。ユーヴェに復帰したCBボヌッチの抜けた穴は、実質トレードの形で加入したマッティア・カルダラが、前線にはCR7の加入でユーヴェを押し出される格好となったゴンサロ・イグアインが加わった。GKジャンルイジ・ドンナルンマ、DFアレッシオ・ロマニョーリ、MFジャコモ・ボナヴェントゥーラ、FWスソと主力の大半が残ったのは、大きなプラス要素だろう。序盤のスタートダッシュ次第では優勝争いに加わることも可能か。

アタランタ 戦力評価:B



2シーズン連続でEL出場権獲得というプロヴィンチャのクラブとしては上々の成績を残したアタランタ。「3−4−3」基調の攻守の切り替えの早いサッカーは新シーズンも健在だろうが、中盤の格となっていたクリスタンテの抜けた穴が埋まるかどうか。前線のキーマンは、ナポリ、ウディネーゼ、サンプドリアなど移籍先で常に決定力を示してきた新加入FWドゥバン・サパタだろう。ヴィスワ・プウォツクから獲得したサイドバックのアルカジウス・レカあたりがおもしろそうだ。上位に喰い込み、「2度あることは3度ある」を証明してほしい。

フィオレンティーナ 戦力評価:B



 正GKのマルコ・スポルティエッロがフロジノーネに移籍。彼の後釜としてトゥールーズから褐色の守護神、アルバン・ラフォンを獲得、プレシーズンマッチで好セーブを連発しヴィオラの新アイドルになりつつある。前線にはユーヴェからシャルケを経て、クロアチア代表としてロシアW杯でも活躍したマルコ・ピアツァが加入。何とか慰留に成功したジョバンニ・シメオネ、フェデリコ・キエーザとの3トップは楽しみだ。ステファノ・ピオリ監督の「4−3−3」はすでにチームに浸透しており、安定感も増してきたが、課題は中盤。灯台役としてブライアン・ダボあるいはマルコ・ベナッシあたりの覚醒が期待されるところだ。

トリノ 戦力評価:B



昨シーズン、レンタルで加入しMVP級の活躍をみせたCBのニコラ・ヌクルをリヨンから買い取れたことが最大の補強か。そのほか、ジェノアからアルマンド・イッツォ、モナコからメイテらを獲得。突出した能力というより、自身の3−5−2を基調としたシステムの中でいかに有効な働きができるかを重んじるマッツァーリ監督の意向が反映された。トーロ躍進のカギは、FWベッロッティの復活。マッツァーリのメカニックサッカーが機能した時、それを結果に変える点取り屋の存在が必要不可欠だからだ。今季は昨季の9位を上回るEL出場圏内での戦いが期待される。

サンプドリア 戦力評価:B



 昨シーズン、守備での課題が露呈したサンプドリアであったが、14年からゴールマウスを守ってきたエミリアーノ・ヴィヴィアーノをスポルティングへ放出。ユーヴェからインドネシア生まれのエミル・アウデロ、ナポリから元セレソンのラファエウを獲得し競わせるようだが、いずれもその実力は未知数だ。ディフェンスラインに高さと堅実さを兼備したガンビア代表のCBオマー・コリーが加入したのはマルコ・ジャンパオロ監督にとってはいい報せ。ローマからレンタルで獲得したグレゴワール・デフレルもサッスオーロ時代のキレがよみがえれば、ベテランのファビオ・クアリャレッラや、昨シーズンは期待外れに終わったが潜在能力はピカイチのウルグアイ代表MFガストン・ラミレスとのトリオは、他クラブのDF陣にとって脅威となるはずだ。

サッスオーロ 戦力評価:B



 チームを残留に導いたジュゼッペ・イアキーニがベンチを去り、昨シーズン奮闘しながらもベネヴェントを最下位で降格させたロベルト・デ・ゼルビがベンチにやってきた。新戦力の目玉は過去ミランで活躍した“プリンス”ことケヴィン・ボアテング。その他、守備の要アチェルビの抜けた穴はサンプドリアからジャン・マルコ・フェラーリを獲得している。瞬足のサイドアタッカー、フェデリコ・ディ・フランチェスコもいい。新監督を含め未知数の部分が多いチームだが、昨シーズン、ELとの二足のわらじで苦しんだことを考えると、今シーズンはリーグ戦に集中できるのは大きい。「まずは残留。その後は彼ら次第」というところか。

ジェノア 戦力評価:B



 下部組織からの生え抜きで元イタリア代表のDFドメニコ・クリシートがロシアから8シーズンぶりに復帰し、ファンを喜ばせた。ただ、守護神マッティア・ぺリン、DFディエゴ・ラクサールなど昨シーズン後半にダヴィデ・バッラルディーニが築いた堅実なDF陣はほとんど移籍。クリシートの経験値と統率力に期待を寄せるほかない。そのほか、期待の新戦力はベネヴェントから移籍してきたMFサンドロとポーランドの新鋭FWクシシュトフ・ピョンテクあたりか。ペリンの抜けた穴には、ラツィオから元代表GKフェデリコ・マルケッティを移籍金ゼロで獲得しており、こちらは問題ないだろう。新顔の多いディフェンスラインが序盤からうまくまとまれば、上位進出の可能性も十分にある。

キエーヴォ 戦力評価:C



 昨シーズン最後の3試合で指揮を執り、チームを残留へと導いたロレンツォ・ダンナ監督が留任。“ミラクルキエーヴォ”時代に守備の要としてプレーした指揮官は、今シーズンも堅守を軸に戦うつもりだろう。その観点でみるなら、GKステファノ・ソレンティーノ、CBネナド・トモヴィッチという2人の守備職人を慰留できたのは大きい。攻撃のキーマンは、5年目を迎えるヴァルテル・ビルサとレンタル先のナポリから買い取られたエマヌエレ・ジャッケリーニの2人だ。技術に長け、経験も豊富な彼らの前線での働きがカギとなる。ポーランドの新鋭FWマリウシュ・ステピンスキの覚醒にも期待したい。

ウディネーゼ 戦力評価:C



MFロランド・マンドラゴラを約25億円で、ウラカンからFWイグナシオ・プセットを約10億円で獲得と、ウディネーゼにしては贅沢な買い物をした今夏のメルカート。もっとも、それはGKアレックス・メレト、MFヤクブ・ヤンクト、DFシルヴァン・ヴィドマーなど昨シーズンの主力数人を他チームへと売りさばいたから可能になったことだ。昨シーズン不振のチームで奮闘したケヴィン・ラザーニャ、アントニン・バラークを慰留できたことが最大の収穫か。監督には、スペイン2部を主戦場としていたフリオ・ベラスケスを抜擢。未知数だが、それでも何とか残留にこぎつけるというのが、ここ数年の彼らの戦い方である。

ボローニャ 戦力評価:B



 2シーズン半チームを率いたロベルト・ドナドーニが去り、かつての名FW“ピッポ”・インザーギが、ミランを指揮した14−15シーズン以来4年ぶりにセリエAで采配を振るうこととなった。コペンハーゲンから移籍したパラグアイ人FWフェデリコ・サンタンデールと、昨シーズン、レンタル先のフィオレンティーナで無得点に終わった未完の大器ディエゴ・ファルチネッリがかつての点取り屋のもとで覚醒を果たせるか。また、インザーギサッカーの肝となる両サイドのウイングバックも、アヤックス生え抜きのミッチェル・ダイクス、ユーヴェ下部組織出身のフェデリコ・マッティエッロと楽しみな素材が加わった。インザーギ1年目の目標は、早期に残留を決めて最終的にはEL出場権獲得圏内に喰い込むことだろう。

カリアリ 戦力評価:C



 昨シーズン後半、ウルグアイ人指揮官ディエゴ・ロペスをベンチに招へいし、なんとか残留を決めたカリアリ。今シーズンは初めからベテランのロランド・マランにチームを託すこととなった。メルカートでの派手な動きはなかったが、マランのキエーヴォ時代からの愛弟子MFルーカス・カストロ、ロシアW杯でもプレーしたクロアチアの新鋭MFフィリプ・ブラダリッチ、06年ドイツW杯で日本のGK川口能活にPKを止められた元クロアチア代表のダリヨ・スルナらが新戦力として加わった。特にブラダリッチには、中盤でのビルドアップという重要な任務が託される。目標は残留だ。

SPAL 戦力評価:C



 昨年、49シーズンぶりにセリエAに復帰し、最後の最後で残留を決めた彼らだが、新シーズンも“いばらの道”が待っているだろう。DFにはスイス代表歴75キャップを誇るヨハン・ジュルーを、中盤には瞬足で守備にもたけるモハメド・ファレスをヴェローナから譲り受けた。昨シーズン、ビッグネームと無名選手が混在しメンバーがなかなか固定しなかったFW陣であるが、今シーズンは昨シーズン11ゴールを挙げたミルコ・アンテヌッチと新加入のアンドレア・ぺターニャで安定した前線を作り上げたいところ。レオナルド・センプリチ監督の斬新な采配は今シーズンも楽しみだが、戦力的に決して高くはなく、現実的な目標はあくまで残留だろう。

エンポリ 戦力評価:C



 昨シーズン、セリエBを首位で終え最短でのA復帰を果たしたトスカーナの雄。ローマでアシスタントコーチ、臨時監督を経験したアウレリオ・アンドレアッツォーリが昨シーズン途中から指揮を執り、チームを生き返らせた。昨シーズン、サンプドリアでレギュラーをはったマティアス・シルベストレがディフェンスラインに加わったのは朗報だが、中盤に核となる選手がいないのが弱み。セリエBで26ゴールを挙げて得点王に輝いたFWフランチェスコ・カプトもAではバーリ時代の10−11シーズンに1ゴールを挙げたのみ。第一目標は残留だ。

パルマ・カルチョ 戦力評価:B



 2015年に破産宣告を受け、一時は4部までカテゴリーを落としたパルマだったがその後、破竹の連続昇格をみせわずか4年でセリエAの舞台に返り咲いた。3部時代からチームを率いるロベルト・ダヴェルサ監督はすでにチームを掌握しており、あとは元ポルトガル代表のCBブルーノ・アルヴェス、スロヴェニア出身のレジスタ、ストゥラッチ、ベネヴェントから加入したアマト・チチレッティら新加入組とマッシモ・ゴッビ、ジョナタン・ビアビアニーら倒産後クラブを離れ再びパルマに戻ってきた復帰組が既存のシステムにどう融合していくか。新シーズンのサプライズとなる予感もある。

フロジノーネ 戦力評価:C



 セリエBでプレーオフをしぶとく勝ち抜き、わずか1年でセリエAへの復帰を決めた。もっとも、昨シーズンからチームを任されている42歳のモレノ・ロンゴ監督にとっては初めてのセリエA体験となる。アイスランド代表とW杯でもプレーしたエミル・ハルフレドソンをウディネーゼから、インテル下部組織出身の天才肌、MFロレンツォ・クリセティグをボローニャからレンタルで、DFもMFもこなせる左サイドのベテラン、クリスティアン・モリナーロをトリノからそれぞれ獲得。攻撃陣にはウディネーゼからレンタルでクロアチア出身のスティペ・ペリツァが加わり、ファンから厚い信頼を寄せられているバンディエラ(旗頭)のカミッロ・チャーノと2トップを形成する。

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