チェルシーが早くも“イメチェン”に成功? サッリ新監督とともに「魅せるチーム」へ

チェルシーが早くも“イメチェン”に成功? サッリ新監督とともに「魅せるチーム」へ

サッリ新体制のチェルシーはリーグ開幕戦を3−0の快勝で飾った [写真]=Getty Images

 ロマン・アブラモヴィッチがチェルシーのオーナーになってから早15年。石油王による“ロシア革命”以降のクラブは5度のプレミアリーグ優勝を成し遂げ、名実ともにビッグクラブの仲間入りを果たした。

 チームにタイトルをもたらしてきたジョゼ・モウリーニョやアントニオ・コンテの率いる集団は確かに強かった。しかし、彼らのチームは堅守速攻が特徴であったり、効率重視の“軍隊式”であったりと、相手をねじ伏せることはできても、そこにオーナーが望むようなスペクタクルはなかった。アブラモヴィッチが真の意味で満足するようなチーム、世界中のフットボール・ファンを魅了するような美しいチームでは決してなかったのである。

 そんなオーナーの宿願がついに成就する時がくるかもしれない。今シーズンからベンチを預かったのは、ナポリを欧州屈指の「魅せるチーム」に育て上げたマウリツィオ・サッリ監督だ。元銀行員の肩書きを持ち、母国イタリアの9部リーグから独自の戦術理論を磨いてトップレベルへの階段を上ってきた異色の指揮官は、就任会見でこう宣言した。

「私がチェルシーで目指すのは、見ているファンが楽しいと思えるようなフットボールだ」

 その言葉を証明するように、華麗なテクニックでファンを楽しませてきたジャンフランコ・ゾラを自身の右腕となる助監督に招いた。結果と内容の両立。クラブのレジェンドを従えた新指揮官はチェルシーというクラブに文字どおり革命を起こそうとしている。

 その予兆は、ハダースフィールドに3−0で快勝した8月11日のプレミアリーグ開幕戦で早くも見られた。コンテ前監督のトレードマークだった3−4−3システムから心機一転、4−3−3システムで試合に臨んだ新チームは、サッリがナポリから連れてきた愛弟子のジョルジーニョを核として華麗なポゼッションワークを披露。基本的に相手にボールを“持たせる”サッカーだったコンテ時代とは対照的だった。

 各選手がワンタッチ、ツータッチで“当てて、落として、後方から出てくる選手につなぐ”というパスの上下動を繰り返し、小気味よくシンプルに、時に緩急をつけながら全体を押し上げて相手守備陣を揺さぶっていく。この日のチーム2点目はジョルジーニョのPKによるものだったが、この場面ではファウルをもらうまでの過程で一度も敵にボールを触らせることなく、自陣から14本ものパスをつないで敵陣ボックス内まで侵入している。

 一連のプレーは間違いなくチェルシーの変貌ぶりを示していた。それでもサッリは試合後、「攻撃ではさらに速くパスを回さないといけない」とチームにいっそうの向上を求めた。少し時間は必要かもしれないが、サッリが頭に描いているのと同じ絵を選手たちが描けるようになれば、パスワークのテンポや精度、継続性はどんどん上がっていくはずだ。

 チームには指揮官の理想を体現し得るだけのメンバーがそろっている。最終ラインではコンテに干されていたダヴィド・ルイスが輝きを取り戻しつつある。全体をコンパクトに保つためのハイライン戦術や、DFにも積極的な縦パスを求めるスタイルは、D・ルイスの持ち味とマッチしている。本人ものびのびとプレーを楽しめている様子だ。

 中盤では開幕戦で93.9パーセントという高いパス成功率を叩き出したジョルジーニョがアンカーの位置に収まったことで、エンゴロ・カンテに新たな役割が与えられた。リーグ屈指のボールハンターとしての顔に加え、新体制下では持ち前のスタミナを生かしながらハイプレスの急先鋒となり、実は巧みな足技を駆使して崩しの局面にも絡んだ。ボックス・トゥ・ボックス型のインサイドハーフとして新境地を開くかもしれない。

 ジョルジーニョ、カンテと並ぶもう1枠には、ロス・バークリーやセスク・ファブレガス、新加入のマテオ・コヴァチッチら、シュートやラストパスといった一芸で攻撃に華を添えるクリエイティブなタイプが入るだろう。個性豊かな中盤の3センターはチェルシーの新たなシンボルとなりそうだ。

 そして最後はアタッカー陣だ。開幕戦ではパスワークの中で相手の裏を突くプレーを得意とするバルセロナ育ちのペドロ・ロドリゲスが躍動した。同じスペイン人のアルバロ・モラタも、周囲と連動してゴールに迫るサッリのスタイルと水が合いそうだ。昨季は不発だったモラタが奮起すれば、ポゼッション後のフィニッシュも心配はなくなる。

 あとはレアル・マドリード行きが噂されるエデン・アザールが、スペインの移籍期限である8月末を過ぎてもブルーのシャツを着続けているかどうか。エースが残留の道を選んだなら、それこそが今夏最大の“補強”になる。10番のドリブル突破を引き続き攻撃の切り札にできるのであれば、最強の呼び声高いマンチェスター・シティとも互角にわたり合えるかもしれない。

文=大谷 駿

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