転換点とすべきほど暑すぎた夏、インターハイの「避暑」を提案したい

転換点とすべきほど暑すぎた夏、インターハイの「避暑」を提案したい

インターハイ決勝。スタンドも日傘やタオルをかぶる観戦者が並んだ [写真]=川端暁彦

 8月7日から13日までインターハイの男子サッカー競技を取材してきた。初日から最終日まで、である。ちなみに47都道府県から55チームが参加しており、優勝した山梨学院高校と準優勝の桐光学園高校は、ともに1回戦からの登場だったため、7日間で6試合を戦った計算になる。ハードな戦いを見事に勝ち抜いてきた両校には称賛の言葉しかないのだが、その一方で改めて疑問を感じる部分もある。要するに「ハード過ぎない?」という一点である。

 競技は35分ハーフで行われており、選手に聞いてみると「(試合時間が)短いので、練習やるより余裕ですよ」なんて言葉にはなる。だが、大会が進んでくるとやはり消耗の色は隠せなくなる。今大会は前後半に3分休憩となるクーリングブレイクを設定し、さらに飲水タイムもこれとは別に前後半に上乗せ設定することで暑熱対策を採っていた。

 これらの施策は熱中症対策という意味ではポジティブなものだったと思うし、「まず選手の安全」という考えには賛同する。だが、一方で試合の流れがぶつ切りになるこれらの施策が「サッカー」という点から良かったのかは議論のあるところだろう。富山第一・大塚一朗監督は選手の安全面に配慮するのは当然とした上で、「本来サッカーは90分でやるもので、それがこれだけ切れると……」とも言う。では、どうすべきなのか。

 分かりやすいシンプルな対応策として真っ先に思いつくのは「夕方からやれればいい」(大津高校・平岡和徳総監督)、「何とかナイトゲームとかにできないのか?」(富山第一・大塚監督)というところで、実際過去のインターハイでは一部の試合でナイトゲームが実施されたこともあるのだが、これはなかなか続かなかった。

 理由はまず施設面の問題があることと、費用面の問題である。各地の地方自治体の財政が火の車になりつつあり、今後もより悪化することになっていくと思われるなかで、これはシリアスな課題で、総体が現在広域開催(複数の都道府県が競技を分担開催する形)になったのも、経費節減が大きな狙いである。来年から出場校が削減となる理由も経費節減。その中でナイトゲームを実施する費用がどこから出せるのか?

 もう一つが、「雷」だ。今大会も準決勝が雷による試合中断に泣かされたのだが、試合開始を午前中に設定している現在でもこうして泣かされるのが、夕方に設定したらどうなるかという話が出てくる。大幅に準決勝の時間が遅滞した桐光学園高校が、回復のために決勝のキックオフ時間変更を求めたのに対し、大会側が時間を動かせない理由として真っ先に挙げたのも「雷」だった。過去には決勝戦が中止になって両校優勝になってしまったこともあり、日程を消化できないことへの忌避感は強い。

 そう、そもそも総体は日程に余裕がない大会でもあるのだ。7日で6試合を詰め込んでいるので、中日を試合の予備日にすることもできない。日本サッカー協会も大会運営に関してさまざまな意見を出しているそうだが、「そもそもサッカーだけの大会ではないので、難しい面がある」(西澤和剛競技運営部長)のも現実である。

 仮に大会開催期間を延ばすとなると、さらなる費用負担も必要となるし、かといって「出場校を16に減らして日程に余裕を持たせます」と言っても賛同は得られないだろう。多くの選手にとってインターハイは自身の進路を切り開く好機であり、進学校を中心に夏で引退を迎える選手たちにとっては高校生活の集大成の場だ。予選会を含め、目標としてのステージがあることの意味は決して小さなものではなく、そこを縮減することがプレーヤーたちの幸せに繋がるかは疑わしい。

 さらに進んで「総体なんかやめちまえばいい」という意見もある。ただ、どうにも賛成できないのはこの要素があるからで、また特にマイナー競技にとっては、こうした総合体育大会の存在自体によって、予算が回ってきたり、指導者の口があったりもする。サッカーだけのロジックにて「なくしてしまえ」というのは、やはり暴論だろう。

 ここから先はある種、勝手な提案である。

 西澤部長の言葉を借りるまでもなく、サッカー界だけでできる改革案ではなく、スポーツ界全体というより国家的施策として取り組む必要があるアイディアだ。ある意味でインターハイの根幹部分に関わる話だ。とはいえ、議論する価値のあるアイディアだとも確信している。

 現状、インターハイは持ち回り開催だ。そもそもは47都道府県の持ち回りだったのだが、現在は広域開催が基本となっている。たとえば今大会は男子サッカーが三重県で開催されているが、女子サッカーは静岡県、アーチェリーやカヌーは岐阜県、水泳やバスケットボールは愛知県、ヨットは和歌山県といった具合に周辺の自治体で開催権を分け合っている。このことによって宿泊地の確保や施設新築・改築の費用負担を軽減する狙いだ。言ってしまえば、日本の自治体に経済的な余力がなくなっているからこそのやり方である。

 ここからもう一週回って考えてみる手はあるのではないか。「そもそも、インターハイの開催地を持ち回りにする必要はあるのか否か」だ。そして酷暑の夏に、わざわざ暑い場所で開催する必要があるのかどうかという点である。

 現在開催中の日本クラブユース選手権(U−15)は北海道帯広市で開催されているが、8月の平均最高気温は25℃ほど。私もこの時季に何度も訪れているが、非常に快適に過ごせる場所である。本州でも東北の太平洋側、たとえば仙台市などはかなり涼しい。日本は広い国であり、気候も多彩である。これを利用するべきではないだろうか。

 つまりインターハイの開催地を寒冷な地域に固定してはどうかという案である。持ち回るたびに施設整備へ投資する必要はなく、毎年使うものとして整備すればいい。高校サッカー選手権や甲子園がそうであるように、開催地が固定されることによって宿泊などの問題もスムーズになるし、運営ノウハウも蓄積されていくだろう。開催地を固定化することによって、施設確保が容易になることで、競技日程に余裕を持たせる選択肢も出てくる。

 もちろん持ち回りにすることによって、まさに施設整備が進むといった各競技団体にとってのメリットがあるのも分かっているし、ディテールに関してはさまざまな議論が必要になるのは間違いない。しかし、日本のほとんどの土地において夏はもはや暴力的なまでに暑すぎる。その一方で、さほど暑くない地域もあるのだから、現実的な議論として考える価値はあるのではないか。

 当然ながらサッカー界はもちろん、高体連の中だけでどうにかなる話でもなく、文科省やスポーツ庁も巻き込んで話していく必要があるとは思うのだが、「インターハイとはこういうもの」という固定観念に囚われないような議論が必要な時期に来ているのは確かだ。

 暑すぎるならば、暑すぎない場所へ。より現実的な策として、インターハイの「避暑」を提案したい。

取材・文=川端暁彦

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