【ライターコラムfrom山形】FC東京を退けベスト8へ。天皇杯の快進撃が昇格の勢いとリンクした4年前を再現せよ

【ライターコラムfrom山形】FC東京を退けベスト8へ。天皇杯の快進撃が昇格の勢いとリンクした4年前を再現せよ

リーグ戦は12位の山形だが、天皇杯ではJ1のFC東京を下してベスト8に進出した [写真]=J.LEAGUE

 8月22日に行われた第天皇杯ラウンド16で、モンテディオ山形はFC東京と対戦。PK戦を制して準々決勝進出を決めた。連戦となった水曜日、FC東京は直近のリーグ戦から6人を替えていたが、山形もまた9人を入れ替えた先発メンバー。その力の差を木山監督が「自分たちが今持っている力を出し切って勝負になるレベル」と表したのは、妥当な現状認識と言っていいだろう。だから開始7分でPKを献上して失点した時には、山形番ライターとしては悲観的にならざるを得なかったのが正直なところだ。ピッチに立っていたFW阪野豊史でさえ「今日、大丈夫か?」という不安が頭をよぎったという。

 しかし、選手たちはたくましかった。失点から2分後にその阪野のゴールで追いつくと、前半のペースは山形が握った。後半、延長戦と時計が進むにつれFC東京のチャンスは増えたが、ゴールを割らせることなく1−1のまま120分を終える。PK戦も互いに譲らないままサドンデスに入り、FC東京7人目・FW富樫敬真のキックをGK児玉剛が止めた瞬間、準優勝した2014年以来のベスト8進出が決まった。10月に行われる準々決勝に駒を進めたのは、J2では甲府と山形だけだ。

 柏レイソルに2−1で勝利した回戦に続き、J1クラブを下しての躍進。その舞台でスポットライトを浴びることになったのは、直近の主力ではない、いわゆる「サブ組」の選手たちだ。柏戦でバックラインに入った坂井達弥と西村竜馬は、いずれもそれまでのリーグ戦出場は1試合。しかし落ち着いた守りで柏の攻撃をPKによる1点に抑え、坂井はセットプレーから先制点まで決めて見せた。FC東京戦では、未だリーグ戦出場のないルーキーFW中村駿太が公式戦初先発で躍動。児玉は櫛引政敏に正GKの座を明け渡して久しい中で起用され、120分間頼れる守護神の役割を果たし、PK戦でヒーローになった。

 試合に絡めていない選手に話を聞けば、異口同音に「いつチャンスが来てもやれるように練習から準備するだけ。それがプロ」と言うものである。とはいえ、選手も人間。それが正しいあり方だとわかっていても、実践するのはそう簡単なことではないだろう。プロだからこそ、試合に出られない、練習だけを積み重ねる日々は辛い。しかし、天皇杯でチャンスを得た選手たちは、その言葉が決して建前ではないことをプレーで証明して見せた。

「カップ戦に勝って行くと、クラブが良くなっていく」。他ならぬ児玉が言う。

「普段のリーグ戦でサブ組と言われている選手たちがパッとカップ戦に出て、勝つことができて、となってくると、リーグ選手にもそういう選手が絡んで来はじめて、在籍している選手全員が試合に絡むことができてくる。それで負けていない、いいプレーができるというのはクラブにとっていいことだと思います」

 それで思い出すのが2014年シーズンだ。4年前のちょうど今頃、天皇杯3回戦(対ソニー仙台)でアピールした山ア雅人(群馬)や川西翔太(山口)らが存在感を増してチーム力が上がり、リーグ戦ではJ1昇格プレーオフ出場権を獲得、天皇杯も4回戦の鳥栖、準々決勝の北九州を破って勝ち上がった。おかげでプレーオフ準決勝を4日後に控えて天皇杯準決勝を戦うはめになり、日程のハンディが懸念されたが、勢いが疲労を凌駕した。天皇杯に勝って弾みがついたチームは、プレーオフ準決勝で磐田に劇的勝利を収める(GK山岸が決勝ゴールを決めたアレである)。そして、プレーオフ決勝で千葉に競り勝ち、J1昇格を手にしたのである。1週間後に行われた天皇杯決勝戦では、三冠を達成したG大阪の前に屈したが、その悔しい経験も含めて、クラブとして初めての貴重な舞台だった。

 4年前の再現を、と期待するのはまだ早いし、楽観的にすぎるのはわかっている。木山監督も「(カップ戦で)下位リーグのチームが上位に勝つことは多々あること。でもそれとJ1昇格争いはまた別」と、柏戦後に釘を刺した。それでも、天皇杯の快進撃はリーグ戦の勢いにつながり得るし、逆に、天皇杯の勝ちがリーグ戦の不調に楔を入れてくれることもある。二つの大会を戦うことで、チームの一体感が増して行く。

 リーグ戦では30節を終えて(1試合未消化)勝点41の12位だが、プレーオフ出場圏の6位との差は8。まだまだ諦める数字ではないが、ギリギリのところにいるのも事実。天皇杯準々決勝が行われる10月24日の頃には、リーグ戦はラスト5試合になっている。その時まで、6位に滑り込む可能性を残しておくことができれば、何かが起きる、いや、何かを起こすことができるかもしれない。

文=頼野亜唯子

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