中村憲剛が示し続ける『生き残る術』…決意を新たに17年目の新シーズンへ

中村憲剛が示し続ける『生き残る術』…決意を新たに17年目の新シーズンへ

[写真]=Jリーグ

「いやあ、嬉しいですね、率直に。ここで取れなくて早何年って感じなので。一発勝負に勝つことがチームの力になっていくって話をオニさん(鬼木達監督)も試合前にしていたし、入り方とか試合の推移もそうですけど、1−0でしっかり終わらせて勝つっていうのはすごく大きい経験値だと思います」と中村憲剛は息を弾ませた。

 2019年シーズン最初の公式戦となった16日の「FUJI XEROX SUPER CUP2019」。2017・18年とJ1連覇を果たした川崎フロンターレは、昨季天皇杯王者の浦和レッズをシュート1本に抑え込み、新FWレアンドロ・ダミアンの一撃で初タイトルを獲得した。2003年に川崎へ入団し、今季で17年目を迎える生え抜きのレジェンドにとっても、喜ばしい出来事に他ならなかった。

「満男さんたちが引退したのは寂しいこと。でも……」

「シルバーコレクター」と揶揄された苦しい時代を経て、今や川崎はJ1屈指の強豪チームへと飛躍した。その様は誰もがうらやむタレント軍団と言っていい。前線にはデビュー戦から見事なパフォーマンスを披露したレアンドロ・ダミアンと小林悠の点取り屋コンビが君臨。中盤にはリーグMVPの家長昭博、ロシア・ワールドカップ日本代表の大島僚太、森保ジャパンに繰り返し招集されている守田英正、2014年ブラジルW杯日本代表の齊藤学とハイレベルな人材がひしめいている。レギュラー争いは熾烈を極めることが予想され、経験・実績ともに申し分ない中村といえども、のんびりとしていられない状況だ。

 そんな厳しい戦いを目の前にしても、「自分が何をやるべきかの判断をしっかりつけていかないと、このチームでは出られないと思っている。みんなすごくやれるようになってきたし、個人の個性も出てきているから。自分が果たすべき役割も変化が加わってくると思うし、今年も新しい発見を求めてやっていきたいです」と中村は目を輝かせた。

 2018年末に小笠原満男、中澤佑二、楢崎正剛、川口能活といった偉大な選手たちが次々とユニフォームを脱いだ。それでも中村は進化を追い求め、時代の最先端を走り続けてきた。だからこそ、38歳になった今も日本サッカー界のトップに君臨できている。

「満男さんたちが引退したのは寂しいこと。でも僕はまだこのチームで走り続ける決断をしている。38歳であることには変わりないし、今年も頑張るだけです」(中村)

 中村は以前から「ベテランの価値を認識させたい」という思いを抱いてきた。昨今のJリーグではベテランが逆風を受けることが多いからだ。昨年も同い年の玉田圭司(V・ファーレン長崎)が名古屋グランパスからゼロ円提示を受け、1つ年下の駒野友一(FC今治)、山瀬功治(愛媛FC)、前田遼一(FC岐阜)らも契約満了となり、移籍先を模索した。年齢はどんなアスリートにとっても抗えない壁だが、他を凌駕する際立った武器や魅力があれば、チームから必ず求められるはず。中村はその重要性をしっかりと示してくれている。

『ここぞの場面』で仕事ができる特別な存在

 昨シーズン終盤にしみじみと語った彼の言葉には重みがあった。

「『生き残る術』を後輩たちに見せたいっていうのが俺にはあるんだよね。特別なことは何もやっていないし、タマちゃん(玉田圭司)もヤットさん(遠藤保仁)も多分そうだと思う。ただ、大事なのは『技術』と『頭の中』。そこさえクリアになれば、プレーに無駄がなくなるから。高い技術でしっかりとボールをコントロールできれば、余計なことをしなくていいからね。もちろん、チームのスタイルやビジョンも大事ですけど、そこを磨いていくことが長生きできる秘訣なのかなと思いますね」

 メリハリの利いた判断力、FKやスルーパス、ゴール前のフィニッシュといった卓越したスキルは、家長や大島でも敵わない武器だろう。過密スケジュールの中で90分間フル稼働する回数は減ったかもしれないが、サッカーはプレー時間や走行距離、スプリント回数といった単純な数字だけで評価できるスポーツではない。攻守両面の要所で変化を与え、『ここぞの場面』でゴールに直結するプレーを繰り出す。そういった仕事ができる中村はやはり「特別な存在」と言えるだろう。

「私たち対戦相手は中村憲剛をつねに厳しくマークします。それだけプレスをかけている中でも彼とフロンターレはその網をうまく抜け出すことができました」と浦和のオズワルド・オリヴェイラ監督も中村の卓越した戦術眼を絶賛した。対戦相手に手を焼かせる老獪さを備えたこの男がいてこそ、川崎のリーグ3連覇、まだ手にしていないアジア王者という目標に手が届く。

「ここまで来るのに時間がかかりすぎた」と苦笑いした中村は、一目散にその領域まで上り詰めたいはずだ。2019年は自身とチームの成長スピードを一気に上げて、大輪の花を咲かせてくれることを祈りたい。

文=元川悦子

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