【インタビュー】IL VOLO 〜気鋭のオペラユニットが語る“カルチョ愛” イタリアから情熱を届けに〜

【インタビュー】IL VOLO 〜気鋭のオペラユニットが語る“カルチョ愛” イタリアから情熱を届けに〜

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 2009年、イタリアの人気オーディション番組に出演した14、15歳だった3人の少年が、同番組プロデューサーから三大テノールのようなオペラ歌手ユニットにしようとの発案から、IL VOLOを結成。世界に飛び立つこととなった。

 2011年に本格ブレイクを果たすと、全世界を虜に。羽生結弦やエフゲニー・プルシェンコといったフィギュアスケートの名選手が楽曲を使用したこともあり、知名度が高まると2017年には初来日公演。2公演をソールドアウトさせた。

 結成10周年となる2019年には4月にニューアルバム『MUSICA』をリリースし、5月には2度目の来日公演を開催したIL VOLOのメンバーを直撃!

 イタリア人だけあり、3人とも大の“カルチョ”ファン。しかも好みのチームもバラバラということで、時には真面目に、時には互いに煽り(?)ながら、イタリアにおけるサッカーの魅力を語ってもらった。

(L to R)ピエロ・バローネ、イニャツィオ・ボスケット、ジャンルカ・ジノーブレ

インタビュー=小松春生
写真=須田康暉、Getty Images

■カッサーノのアシストからゴールを決めたんだ!



―――皆さん、サッカーが大好きだとうかがいました。

ピエロ 僕らはイタリア人だからね。

イニャツィオ イタリアでは、子どものときからサッカーで遊びながら成長していくんだ。だから、みんな好きなんだよ。

―――私たちの会社はサッカーの魅力を伝える雑誌『CALCiO2002』の創刊から始まったんです。

ジャンルカ 2002−03シーズンに、ローマ対パルマの試合を見たよ。中田(英寿)がオリンピコで試合をしていたのを実際に見たんだ。
※中田英寿がパルマ在籍時代

―――ジャンルカさんはロマニスタなんですよね。

ジャンルカ 僕はローマ人ではないし、ローマに住んでいるわけでもないけど、叔父やいとこがローマの近くに住んでいたんだ。僕が生まれた街もローマから200キロくらいの距離だったし、ロマニスタの親戚がバカンスで僕の家にやってくるたび、カードやマフラー、ユニフォームを持ってきてくれたから、すぐにジャッロロッソ(黄赤)とフランチェスコ・トッティの虜になったんだよ。

 実は何回か一緒にプレーしたことがあるんだ! 歌手仲間が集まったチームがあって、アレッサンドロ・デル・ピエロやトッティと試合をしたんだよ。アントニオ・カッサーノもいたね。実はトッティの虜って言ったけど、人生の中で一番幸せだったのが、カッサーノからのアシストで僕がゴールをしたことなんだ。一番幸せな日だったね。

―――後世にも伝えたい思い出ですね。

ジャンルカ そうだね。僕には何よりも歌があるけど、サッカーも一番と言えるくらい大好きだから、一緒にプレーした経験は子どもから孫までずっと語り続けていくよ。

■デル・ピエロになれると思ってプレーしていた



―――イニャツィオさんはユヴェンティーノとお聞きしました。

イニャツィオ (デル・ピエロが表紙の雑誌を手に取り)この人の影響だね! 昔から友達とよくサッカーをしていたけど、自分がデル・ピエロになれると信じてやっていたんだよ。すごく頭のいい選手で、人間的にも偉大な人物だと思っている。

―――家族の影響などはなかったんですか?

イニャツィオ 父はそこまでサッカーを見ていなかったんだ。住んでいた場所の影響で、見るとしたら、ボローニャの試合だったね。でも、ユーヴェに親近感を持っていたんだ。家族のほとんどがユヴェンティーノだよ。僕は、あの偉大なフェノーメノ(ロナウド)がいた時期に、少しだけインテルが気になったことがあったけど、ユーヴェは常に心にあったよ。

―――ピエロさんはミランがお好きとのことですが、2人と比べるとそこまで情熱を捧げているタイプではないそうですね。

イニャツィオ 彼は重要な部分をチェックするくらいだね。

ピエロ そうだね。イニャツィオが言ったように、例えばチャンピオンズリーグの決勝、優勝が決まるリーグ戦の試合、ダービーといったビッグマッチを見るんだ。あとは好きな選手がいるチームの試合かな。例えばリオネル・メッシがいるバルセロナ、クリスティアーノ・ロナウドがいたレアル・マドリードとか。今となっては、全イタリア人がユーヴェの試合を見ているよ。C・ロナウドは世界で一番の選手だからね。あとはプレイステーションでよく遊ぶんだけど、リヴァプール、レアル・マドリード、ユヴェントスはよく使っているね。でも、カラーとしてはサン・シーロのミランが好きなんだ。



―――3月に行われた“デルビー・ディ・ミラノ”を僕も現地で見ましたが、サポーターの熱気がすごかったです。

ピエロ ユヴェントスのファンは他のクラブと比べて、あまりいいファンとは言えないかな。ユヴェントスのことだけを考えすぎて、悪く言われたら大変なことになるよね。熱狂的なことはいいことだけど、熱狂的すぎるかな。

イニャツィオ みんなだいたいそうでしょ。

ピエロ いや、偉そうだね(笑)。どのチームのファンも、自分のチームのことを悪く言われたら腹は立つよ。でも、ユヴェンティーノは少し特殊かな。最近力をつけ、イタリアで一番になっているから、余計に何か言われることが気に入らないんだと思うよ。

―――3人は贔屓のチームが違いますが、ケンカになったりは…?

ピエロ 一度、公園で言い合いになったね(笑)。コンサートの日にちょうどチャンピオンズリーグ決勝でのユヴェントスの試合があって、レアル・マドリードに1−4で負けたんだ。その話をしたときに、すごく暑かったこともあって、イニャツィオが余計に興奮して、ケンカになったよ。

―――情熱が故に、ですね。

イニャツィオ もちろんだよ!

■本当のファンはクラブのことで言い争わず、スポーツを讃える気持ちを持っている



―――イタリア国内ではユヴェントスの好き・嫌い度は、どの程度なんでしょうか?

ピエロ イタリア人の50%はユヴェントスを応援しているね。

イニャツィオ イタリアにはユヴェンティーノがたくさんいるけど…。一度、ユヴェントスには社会的問題(カルチョーポリ)が起きたことがあって、それをきっかけに批判する人たちも増えたと思う。でも、偉大なチームであることには変わりはないし、近年はクラブ全体が新しくなり、他の助けを借りなくても自分たちで勝っていけるようになったんだ。あのときとはずいぶん違ってきているよ。

―――ユヴェントス、ミランと比べればローマが一番スクデットから遠ざかっています。

ジャンルカ それは確かだけど、同じ街にラツィオという大きなライバルがいるし、今も世界のローマと紹介されるよね。(隣のイニャツィオが「何言っているんだ」とジェスチャー)。二つのチームがある中で、ファンとしては難しい立場だね。いとこがラツィアーレだから、言い争いになるときもあるんだけど、僕自身は、“ローマファン”であっても“ローマクレイジー”ではないんだ。本当のファンというのは、クラブのことで言い争いをするのではなく、スポーツを讃えるという気持ちを持っていること。僕はサッカーを愛しているし、ケンカをしたり、言い争いをするような気持ちはないね。

―――ローマはカッサーノ、トッティ、デ・ロッシと相次いで象徴的な選手が退団することになり、変革の時を迎えています。

ジャンルカ それはどこのチームでも起こることだよ。確かにデリケートなときを迎えている。メンバーが変わるということは難しいことだし、乗り越えることもたくさんあるだろうから、すごく難しい時期を過ごしていることに間違いはないかな。

イニャツィオ ローマにいるニコロ・ザニオーロとか、2000年代生まれの有望なイタリア人選手が増えたよね。フィオレンティーナのフェデリコ・キエーザもすごく良くなってきている。

―――キエーザはユヴェントスへ移籍すると言われていますね。

イニャツィオ 知っているよ(笑)。ジョアン・カンセロはたぶんマンチェスター・Cに移籍かな。



―――皆さんプレー経験があるとお話しいただきましたが、どのような選手でしたか?

ピエロ キーパーをやっていたんだ。背番号は12番で、例えるならジーダだね(笑)。僕が生まれ育ったシチリアでは、8歳から12歳くらいの子どもはサッカーで遊ぶんだ。午後になると広場や中庭がピッチになり、ガレージの入り口がゴールになるんだ。

―――憧れた選手は?

ピエロ ジャンルイジ・ブッフォンかな。

イニャツィオ Ah…、ミラニスタじゃないのか?

ピエロ ジーダがいたし、クリスティアン・アッビアーティもいたけど、ブッフォンは憧れたかな。インテルにはPKをいつも止めていたフランチェスコ・トルドもいたね。

ジャンルカ トッティはキャリアでも屈指のゴールをインテルから決めているよ! 20メートルからのクッキアイオ(ループシュート)だったな。
※2005−06シーズンのインテルvsローマ、インテルのGKはジュリオ・セーザル

イニャツィオ いや、サンプドリア戦のゴールも綺麗だった。

ジャンルカ そうだね。あれがセリエAで一番綺麗なゴールだよ。
※2006−07シーズンのサンプドリアvsローマ、角度のない位置から左足ダイレクトボレー

―――お2人はどんな選手でしたか?

ジャンルカ 僕たちも友達と中庭や広場で遊んでいたよ。大きい扉の入口があれば、そこをゴールにしていたね。僕は1年間スクールに通っていたんだ。DFから始めて、チェントロカンポ(中盤)になって、ゴールも決めていた。そこから左サイドバックに移ったんだけど、ある試合で3得点したことがあるんだ。そうしたら、僕のシュートが強烈だったのか、GKがケガしてしまったんだよ!

ピエロ その彼は今、審判をやっているよ(笑)。

―――どんなタイプの選手でしたか?

イニャツィオ 役割としてはポール・ポグバで、足元の技術だけアンドレア・ピルロかな。

ジャンルカ ルカ・トーニの間違いだろ(笑)。

イニャツィオ 待て、そんなこと言ってないぞ! ポジションはポグバだけど、技術は誰にも負けなかったんだ。

ピエロ とにかく、僕らのチームのフォーメーションは、僕はDFで、イニャツィオはチェントロカンポ、ジャンルカはFWだね。

ジャンルカ 僕も2人と状況は同じで、街の庭や公園でサッカーをしていたよ。13歳まで6、7年間サッカーのスクールにも通っていたんだ。大会に参加するため、イタリア国内で遠征もしていたよ。いつもFWだったんだ。

 当時の僕は性格的に問題があって(苦笑)、ものすごく一生懸命プレーするけど、うまくいかないとすごく頭に来てしまって、例えば試合途中でも、抜け出してしまうような子だったんだ。

イニャツィオ カッサーノみたいにね。

ジャンルカ そう。だから、みんなから小さいカッサーノ(ピッコロ・カッサーノ)と呼ばれていたんだけど、褒められているのではなく、悪い意味で言われていたね。

ピエロ ジャンルカはカッサーノで、イニャツィオはカッサータ(シチリアのお菓子)だね。

イニャツィオ 子どものときは太っていたけど、サッカーはうまかったぞ。

■サッカーは人々をつなげる役目と、分断させてしまう両面の要素を持っている



―――イタリアの方たちにとって、サッカーはどういう意味を持っているんでしょうか?スタジアムに行った際は応援もしますが、自己表現の場ともしている印象があります。

ピエロ 今、イタリアでは経済危機や雇用問題など、たくさんの問題を抱えていて。ほとんどの人々がスタジアムに行って試合を見ることで、そのいろいろな問題を忘れることができるんだ。そういう大事なイベントでもあるね。

―――良い方向に出れば、熱狂的な雰囲気であふれかえると言えますが、悪い方向に出れば、悲しい発言や態度が観客席からピッチに投げかけられることにもなります。

イニャツィオ その通り。サッカーには人々をつなげる役目と、分断させて戦わせてしまう両面の要素を持っている。何においてもチームやアイドルを応援することは、良いことだけど、行き過ぎたファナティシズムは一番ダメなことだよ。武器を持ち込む、物を投げて事件になってしまうことは絶対にあってはいけない。

ジャンルカ 一つのスポーツである、ということは忘れてはいけないことだね。

イニャツィオ 僕もユヴェントスの熱狂的なサポーターだけど、きちんとスポーツだと認識しているよ。……、いやいや、本当だよ(笑)。スポーツというのは、例えばローマがユヴェントスに勝ったときには、ちゃんと「いいプレーだった」と言うことだよね。

 知ってもらいたいこととして、ユヴェントスとインテルの間には強烈なライバル関係がある。だからユーヴェにとって、インテルとは常に負けるべき存在なんだ。でも、個人的には、例えばインテルがチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場した場合、イタリアのチームなんだから、応援するよ。ナポリだってローマだって応援したんだ。

 でもロマニスタと違うところは、ロマニスタはユヴェントスが敗退したら喜んだ。僕はユヴェンティーノだけど、昨シーズンのCLでローマが敗退したとき、残念に思ったんだ。これがロマニスタとユヴェンティーノの違い。イタリアではユーヴェは一番重要だと考えられているから、責任が重くのしかかるチームなんだ。だから、みんなは勝たないといけないと言うけど、ヨーロッパ全体で見れば、リヴァプールやトッテナムをはじめ、強いチームがあるんだから、負けても仕方がないことだよ。

―――CLの話が出たので、CLの話も。近年の決勝戦ではチャンピオンズリーグ・アンセムに合わせ、アンドレア・ボチェッリさんが歌ったり、2CELLOSがパフォーマンスをしています。そこに立ちたい、という気持ちは?

イニャツィオ もちろん! もし呼んでくれたら毎年でも歌いたいし、喜んでやるよ!

―――僕は2009年にローマのオリンピコで行われた決勝で、ボチェッリさん歌ったパフォーマンスが印象的です。

ジャンルカ 僕たちもオリンピコでは、2015年のコッパ・イタリア決勝で歌ったんだよ。

ピエロ スタジアムで歌うことはすごく難しいんだ。広くて反響もあるし、イヤーモニターがないといけないからね。

イニャツィオ でも、すごく感動的だったよ。僕らはロサンゼルスのドジャー・スタジアムでアメリカ国歌を歌ったこともあるんだ。素晴らしい経験だったね。アメリカ人の前でアメリカの国歌を歌うことは、すごく嬉しい経験だったね。

―――今後のさらなるご活躍、期待しております。最後に、日本のサッカーファンにメッセージをお願いします。

(応援歌を歌い始める)

イニャツィオ JUVE! STORIA DI UN GRANDE AMORE(ユーヴェ 偉大なる愛の物語)

ピエロ MILAN MILAN

ジャンルカ GRAZIE ROMA CHE CI FAI VIVERE E SENTIRE ANCORA(ありがとう、ローマ 生きる意味を感じさせてくれて)

イニャツィオ サッカーが世界で一番素晴らしいスポーツだと思います。エレガントに無駄なことをせず、みんなで応援してくれることを願っています。

ピエロ いろいろなインタビューを日本で受けてきたけど、今までは全て音楽のことを話してきた。だけど、僕たちは舞台裏でサッカーのことを話すし、試合があったときには必ず話題になる。今回、サッカーの話ができ、すごく嬉しかったよ。

ジャンルカ 本当にありがとう。またお会いしましょう。

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