久保建英の新天地レアル・マドリード・カスティージャってどんなクラブ?

久保建英の新天地レアル・マドリード・カスティージャってどんなクラブ?

カスティージャを頂点とするレアル・マドリードのカンテラは、世界屈指のレベルの高さを誇る [写真]=AFLO

 若干18歳でA代表のデビューを飾り、コパ・アメリカでも印象的な活躍を見せた日本代表FW久保建英が、いよいよ7月にレアル・マドリード・カスティージャへ加入する。

 スペインではカスティージャの名前だけでも通じる久保の新天地とは、レアル・マドリードのカンテラ(下部組織)で最上位カテゴリーに位置するリザーブチーム(Bチーム)のことだ。10歳から3年半過ごしたバルセロナへの復帰も囁かれていた久保が、宿敵レアル・マドリードのカンテラに入団することは、両者のライバル関係が日本では想像できないほど根深いスペインでは論争を呼ぶことは想像に難くない。だが、そんなことは百も承知の久保が、あえて茨の道とも言えるカスティージャを選択したのは、スペイン紙『マルカ』が年俸120万ユーロ(約1億5000万円)の6年契約と報じた条件以外にも相応の魅力があるからだろう。

 カスティージャの原点は、レアル・マドリードが地元のアマチュアチームであるプルス・ウルトラとの間で、経済援助をする見返りに希望する選手を優先的に獲得できるという提携を結んだ1948年に遡る。以降、元スペイン代表監督のビセンテ・デル・ボスケを始め、レアル・マドリードに多くの選手を供給し続けたプルス・ウルトラは、1972年にカスティージャCFへと名称を変更。完全なレアル・マドリードのリザーブチームとなり、1991年からはレアル・マドリードB、2005年からはレアル・マドリード・カスティージャと名を変えている。

■武者修行を経てトップチーム入りが主流

 カスティージャはまさにトップチームへの登竜門であり、伝統的に多くの若手がこの険しい道を通って一流選手へと育って行った。とりわけ“キンタ・デル・ブイトレ”(禿鷲部隊)と呼ばれた1980年代後半の黄金期のチームでは、呼称の由来である“エル・ブイトレ”(禿鷲)ことエミリオ・ブトラゲーニョや、長きに渡りキャプテンを務めた“マノーロ”ことマヌエル・サンチス・オンティジュエロを筆頭に、多くのカンテラ出身選手がクラブの看板を背負った。また、1990年代に入っても、ラウール・ゴンサレスやグティといったスターを輩出した。

 だが、2000年代に入ると、クラブはルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デイヴィッド・ベッカムといった世界的なビッグネームを次々と獲得。“ロス・ガラクティコス”(銀河系軍団)と呼ばれたトップチームで、生え抜きのラウールやグティをも上回る存在感を示すこととなった。さらに、有望な若手まで外部から引き抜くのがビッグクラブの常套手段となった現在、カスティージャの選手にとってトップチームは一段と高い壁となっている。実際、現在のトップチームで、カスティージャから昇格後そのまま複数年プレーし続けているのは、2012年から在籍している準レギュラーのナチョ・フェルナンデスのみだ。レギュラーの座を掴んだ選手に至っては、1999年にトップチームに昇格したイケル・カシージャス(現ポルト)まで遡らなければならない。

 その一方で、他クラブでのプレーを経てトップチーム入りするカスティージャ出身選手は増えている。その筆頭格が不動の右サイドバックのダニエル・カルバハルで、カスティージャからレヴァークーゼンへと移籍し、1年後トップチーム契約でレアル・マドリードに買い戻された。同様にカゼミーロ(ポルト)、ルーカス・バスケス(エスパニョール)、マルコス・ジョレンテ(アラベス)、ヘスス・バジェホ(フランクフルト)、マリアーノ・ディアス(リヨン)、フェデリコ・バルベルデ(デポルティーボ)らも出戻り組だ。このように武者修行を積んで戻ってくるパターンが、カスティージャの選手がトップチームの一員になるための主流となっている。

 実力やタイミング次第では一気にトップチームへと駆け上がることも不可能ではない。実際、昨年夏に加入したヴィニシウスは、久保にも制約として付きまとうEU圏外枠の選手でありながら、出場わずか5試合でカスティージャを卒業してトップチームに定着した。とはいえ、この夏は同ポジションのエデン・アザールがチェルシーから加入したため、レンタルに出される可能性が取り沙汰されている。

■逸材2人が加わる攻撃陣の競争は極めて激しい

 カスティージャを頂点とするレアル・マドリードのカンテラは、世界屈指のレベルの高さを誇る。フットボールのデータや統計を専門とする『CIES Football Observatory』によると、今シーズンのヨーロッパ5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)のトップカテゴリーで、UEFAが規定するクラブ育成選手が36人を数えたレアル・マドリードは、35人のオリンピック・リヨンや34人のバルセロナを抑えてトップに立っている。フアン・マタ(現マンチェスター・ユナイテッド)やホセ・カジェホン(現ナポリ)に代表されるよう、移籍先で主力として定着したカスティージャ出身選手は多い。

 その反面、カスティージャが現在所属しているセグンダB(3部)は、プロからアマチュアまで混在するスペインの地域リーグに過ぎない。カスティージャは今シーズン、4つの地域に分かれて戦う同リーグのグループ1で4位に入ったが、昇格プレーオフ初戦でグループ4の2位カルタヘナに惜敗。レベルが大きく上回るセグンダ(2部)行きを逃したことは、選手育成面で非常に痛いと言わざるを得ない。

 久保にとっては、類まれな才能が集まるチームで切磋琢磨できることはプラスとなる一方、日本のJ1よりもレベルが落ちるリーグでプレーすることはマイナスを意味しかねない。久保には2年目にはトップチームへの昇格ないしトップクラスのクラブへのレンタルが保証されているとも報じられている。だが、カスティージャで実力を証明しなければ、前者が実現する可能性は皆無であり、後者の場合も希望に叶ったオファーを手にする可能性は低い。

 カスティージャには新シーズン、既にトップチームでもデビューを飾っているセサル・ヘラベルトがフベニールA(U−19)から昇格し、4500万ユーロ(約54億9000万円)もの移籍金でサントスから獲得したロドリゴ・ゴエスが加入予定。久保と同年齢の逸材2人が加わる攻撃陣の競争は極めて激しい。すなわち、久保は初年度から正念場を迎えると言っても過言ではないだろう。

 なお、カスティージャは新シーズンからクラブのレジェンドのラウールが指揮を執ると報じられている。指導者として初年度の今シーズン、フベニールB(U−18)をリーグ優勝に導いたラウールは、現役時代はクリスティアーノ・ロナウド(現ユヴェントス)に抜かれるまでクラブの最多得点記録を保持し、チャンスメイクにも長けた万能ストライカーだった。そんなワールドクラスから直接指導を受ける久保が、近い将来サンティアゴ・ベルナベウを沸かすスターへと飛躍できるか、再び上陸するスペインでの新たな挑戦から目が離せない。

文=北村敦

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