ついに“黄金時代”が終焉か…王者バイエルンに立ち込める暗雲とドルトムントに差し込む光

ついに“黄金時代”が終焉か…王者バイエルンに立ち込める暗雲とドルトムントに差し込む光

リーグ7連覇中のバイエルンに暗雲が立ち込めている [写真]=Getty Images

 いつ以来だろう。ブンデスリーガの優勝予想において、人々の意見がこれほど割れるのは。旧知のミュンヘン在住ジャーナリストは意外にもドルトムントを推す。サッカーカルチャー誌『エルフフロインデ』は、ドルトムント41%、バイエルン25%というアンケート結果を発表。一方で、各ブックメーカーに目を向けると、バイエルンが1.25〜1.35倍と圧倒的な人気を誇っている。2番人気のドルトムントは5.00〜5.50倍といったところだ。

思い通りに進まなかった夏の移籍市場

 智将ユリアン・ナーゲルスマンを招聘したRBライプツィヒ、昨シーズン後半にドルトムント以上の好成績を収めたレバークーゼンが覇権争いに加わるとの見方もある。背景にあるのは、王者バイエルンに生じている不安だ。後半戦の巻き返しに成功した昨シーズンは、見事に前人未到の7連覇を成し遂げた。ただ、積み上げた勝点は2012−13シーズン以降では最少の78で、2位ドルトムントとの差はわずか2という薄氷の勝利だった。

 その昨シーズン限りで、一時代を築き上げたフランク・リベリーとアリエン・ロッベン、ニコ・コヴァチ監督の信頼を得られなかったハメス・ロドリゲスが退団。大きな問題は彼らの穴を埋める実力者を1人として確保できていない補強状況で、エースのロベルト・レヴァンドフスキは「新たなアタッカーが3人必要だ」と嘆く。一部で合意間近と報じられたマンチェスター・Cのレロイ・サネは先日、膝の十字靭帯を部分断裂。仮に獲得まで漕ぎ着けても、シーズン前半は戦力としての目途が立ちそうにない。

 3人のビッグネームが去った影響は、ドルトムントに0−2の完敗を喫したドイツ・スーパーカップではっきりと窺えた。セルジュ・ニャブリが欠場したものの、ビハインドの状況でピッチに登場したのはアルフォンソ・デイヴィスとレナト・サンチェス。ともに将来性十分の有望株には違いないが、相手への威圧感はリベリやロッベン、ハメスとは比べるまでもない。焦りの色を濃くしたフロントはクロアチア代表MFイヴァン・ペリシッチを獲得した。契約期間は1年間のレンタルで、買取オプション付き。シーズン開幕前の応急処置ともいえる補強でアタッカーを手に入れた。

 昨シーズンのうちに獲得が内定したDFベンジャマン・パヴァール、リュカ・エルナンデスに続く朗報がないバイエルンに対し、ドルトムントはあっという間に今夏の宿題を片付けた。マルコ・ロイス不在時の攻撃に難があった前線に、どちらもリーグ屈指のアタッカーと称されるトルガン・アザールとユリアン・ブラントを確保。正真正銘のリーダーが不在だった最終ラインには、2016年夏にバイエルンへと去ったマッツ・フンメルスを買い戻した。補強箇所だった左SBの強化(ドイツ代表のニコ・シュルツを獲得)も抜かりなく進め、ほぼ全ポジションに2人の実力者がいる陣容を完成させている。

ワールドクラスを擁するのはバイエルンだが…



 リーグ戦の開幕を約1週間後に控えた現時点における2強の予想布陣は以下の通りだ。

■バイエルン[4−1−4−1]
GK:ノイアー
DF:キミッヒ、ズーレ、L・エルナンデス、アラバ
MF:チアゴ、ミュラー、ゴレツカ、ニャブリ、コマン
FW:レヴァンドフスキ

主なバックアッパー/GK:ウルライヒ、DF:パヴァ―ル、ボアテング、MF:ハビ・マルティネス、トリッソ、サンチェス、デイヴィス、ペリシッチ、FW:アルプ

■ドルトムント[4−2−3−1]
GK:ビュルキ
DF:ピシュチェク、アカンジ、フンメルス、シュルツ
MF:ヴィツェル、ヴァイグル、サンチョ、ロイス、アザール
FW:パコ・アルカセル

主なバックアッパー/GK:ヒッツ、DF:ザガドゥ、ハキミ、バレルディ、MF:ブラント、ゲッツェ、ゲレイロ、ブルーン・ラーセン、ヴォルフ、ディレイニー、ダフード

 正真正銘のワールドクラスを多く擁するのはバイエルン。ただ、前述したように、選手層はドルトムントの方が厚い。繰り返しになるが、バイエルンは攻撃の強力な切り札が少なすぎる。仮にもビッグイヤーを最大目標に掲げるチームなら、最低でももう1枚は即戦力となるアタッカーを加える必要があるだろう。レヴァンドフスキが怪我とほぼ無縁ながら、CFの頼れるバックアッパーがいない点も気がかりだ。

ドルトムントはさらなる補強の可能性も

 一方のドルトムントは1トップに流動的な動きを求めるリュシアン・ファーヴル監督の意向で、大型CFが不在となっている。ただ、攻撃に高さをもたらせるストライカーがいても損はない。一時期、獲得候補に浮上していたエディン・ジェコには見劣りするかもしれないが、ドルトムント行きを熱望とも言われるローマのパトリック・シックは興味深い選択肢だろう。退団の噂があるゲレイロが抜ければ、左利きのアタッカーが不在になるという観点でも、レフティーのシックは貴重な戦力になりそうだ。

 サネに加え、マタイス・デリフト、カラム・ハドソン=オドイ、ブラント、ルカ・ヨヴィッチ、ティモ・ヴェルナーなど有力視された新戦力候補を獲得できず、スカッドに不安を残すバイエルンの今後の補強次第とはいえ、現時点では戦力的な上積みが大きいドルトムントが覇権を奪還する可能性は十分にある。この挑戦者の独走はあっても、王者が優勝争いを大きくリードするような展開にはならないはずだ。バイエルンの黄金時代にいよいよ終止符が打たれるシーズンになるかもしれない。

文=遠藤孝輔

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