補強は成功だったのか? アンチも期待の“MCN”は活躍できる? PSGの悲願達成は?

補強は成功だったのか? アンチも期待の“MCN”は活躍できる? PSGの悲願達成は?

[写真]=Getty Images

『欧州の頂点に立つ』を目標に掲げてカタールは2011年、フランスの首都クラブを手に入れた。その後のパリ・サンジェルマン(PSG)のチャンピオンズリーグ(CL)での戦績は次のとおりだ。

■2012−13シーズン
準々決勝でバルセロナに敗退(2−2、1−1 2戦合計:3−3 ※アウェイゴール数により敗退)

■2013−14シーズン
準々決勝でチェルシーに敗退(3−1、0−2 2戦合計:3−3 ※アウェイゴール数により敗退)

■2014−15シーズン
準々決勝でバルセロナに敗退(1−3、0−2 2戦合計:1−5)

■2015−16シーズン
準々決勝でマンチェスター・Cに敗退(2−2、0−1 2戦合計:2−3)

■2016−17シーズン
決勝トーナメント1回戦でバルセロナに敗退(4−0、1−6 2戦合計:5−6)

■2017−18シーズン
決勝トーナメント1回戦でレアル・マドリードに敗退(1−3、1−2 2戦合計:2−5)

■2018−19シーズン
決勝トーナメント1回戦でマンチェスター・Uに敗退(2−0、1−3 2戦合計:3−3 ※アウェイゴール数により敗退)

 優勝どころか、ベスト4入りさえ果たせず、いまだ8強止まり。「5年でビッグイヤー獲得!」を就任時に宣言したナセール・アル・ケライフィ会長は、いまさらながらこのコンペティションの厳しさを痛感していることだろう。

 出だしはまだ良かった。最初の4年間は準々決勝に進出している上に、2012−13と2013−14の2シーズンはアウェイゴール数による惜敗だったため、「あと一歩で壁は超えられる」感があった。しかし、ここ3シーズンは連続してラウンド16で敗退している。しかも、2016−17シーズン、そして昨シーズンと、1stレグでは勝ち抜けの可能性が相当高い(実際、昨年は統計上は100%だった)状況を手にしていながら、『奇跡的な大逆転劇』でひっくり返されてしまった。こんな逆転をこの短いスパンで二度も食らうのは普通とは言えない状況で、今ではPSGのCL挑戦には、「期待外れ」感が漂っている。

本気の挑戦へ揃った強力なメンバー

 それでも莫大な資金を投じているカタールの王族一家が指をくわえて黙っているわけはなく、今季はPSGにとってはかなり本気な挑戦となるはずである。その気合は、スポーツダイレクターにレオナルドを呼び戻したことからも見て取れるのだが、彼は期待通り今夏のメルカートで実のある補強を実現した。

 出る出ないでゴタゴタしたネイマールも、結局引き止めに成功。さらに攻撃陣には、インテルからマウロ・イカルディを加えた。ボックス内で威力を発揮するフィニッシャータイプのイカルディは、現チームにはいないタイプのアタッカーで、献身的で広範囲をケアしつつ相手DFに絶えず圧をかけるエディソン・カバーニ、“カウンターの鬼”キリアン・ムバッペ、黄金のキックを持つアンヘル・ディ・マリア、そしていつ何時も攻撃アクションがしかけられるネイマール……。誰をどう組み合わせて最大限の出力を得ようか、トーマス・トゥへル監督はニヤけながら策を練っていることであろう。

 昨年、ベテランGKのジャンルイジ・ブッフォンと若手のアルフォンス・アレオラが分け合っていたGKのポジションには、フルアムでプレーしていた26歳と伸び盛りのスペイン人GKセルヒオ・リコと、レアル・マドリードでバックアッパーだったベテラン、ケイラー・ナバスを獲得した。マンチェスター・U戦ではGKのポジションがしっかり確立されていなかったことによる不安定さが敗戦に加担した一面もあったため、GKの補強はチームにとって急務だったのだ。

 そして中盤には、入団早々に負傷してしまったがマンチェスター・Uから獲得したアンデル・エレーラとエヴァートンからイドリッサ・ゲイェを獲得。手薄だったディフェンスラインにもアブドゥ・ディアロが加わり、負傷者が出た場合のバックアップも層が厚くなった(PSGはスター選手のサラリーが圧迫しているため、各ポジションの選手層という面は案外泣きどころであるのだが…)。

アンチも期待する“MCN”の活躍

 ところが、戦力的には昨シーズンより確実に充実しているのだが、開幕後やメルカート終了前の滑り込み移籍も多かったため、新戦力たちを実戦で試せていない。本格的に始動するのは国際マッチデー明けからであり、今のところは「机上の戦力」にすぎない。ネイマールの引き止めもイカルディ獲得も、それが成功だったのかを判明するには時間がかかるだろう。

 ただ、この2年間で最も重要な決勝トーナメントの時期にネイマールは負傷欠場し、“CL要員”としての役割を果たせず、というか、挑戦すらできていない。マルコ・ヴェラッティ、マルキーニョス、チアゴ・シウバらが陣取るエリアはプレーの質は高く、その上で、ネイマール+カバーニ+ムバッペのトリオを止めるのは相当厳しい。

「この3人が揃って最大限の威力を発揮したら、CLでどこまでいけるのか?」――。この疑問については、「アンチ・ネイマール」を掲げるPSGサポーターでさえ期待しているのだ。それを今シーズン、ネイマール入団から3年目にして目撃できるかどうか、さらに突発的に超ファインプレーを繰り出すディ・マリアや、イカルディという新戦力がどう絡むのか。

 ネイマールは昨シーズンのマンチェスター・U戦における審判への侮辱発言により、3試合の出場停止処分が科された。だが、処分明けの頃には負傷中のカバーニとムバッペも調子を取り戻している可能性もあり、今季こそCLで“MCNパワー”が炸裂するところを見せて欲しい。

 グループステージでは、クラブ・ブルージュ、長友佑都擁するガラタサライ、そしてレアル・マドリードと対戦するが、ここでの勝ち抜けはまず間違いない。初戦はホームでのレアル戦だが、むしろまだチームが十分に温まっていないときに対戦するのは、一番強いとおぼしき相手の方が良かったりもする。

精神面の強化も課題の1つ

 昨年のマンチェスター・U戦では、アカデミー上がりの若手選手たちに逆転負けを喫したことで、トゥヘルの選手管理法も非難された。実際に、2ndレグでは「勝率100%」の上にあぐらをかいていた選手もいたらしい。この敗戦のショックから、そのあとはフランス杯決勝にも破れるなどチームはメンタル的にボロボロだった。このあたりの精神的な弱さを克服することもPSGの課題だ。

 決勝戦が行われる5月30日には、クラブ創立50周年を祝うコンサートを本拠地のパルク・デ・プランスで盛大に行う予定らしい。今季の決勝戦進出はないとふんでいるのか、それとも、この機会をパブリックビューイングにしてしまう腹づもりなのか。いや、まずはこれまで超えていないベスト4入りの壁を超えること。それが今季のPSGの絶対目標だ。

文=小川由紀子

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