北九州で攻撃センスを光らせるMF高橋大悟…清水での積み重ねがもたらした“良縁”

北九州で攻撃センスを光らせるMF高橋大悟…清水での積み重ねがもたらした“良縁”

ギラヴァンツ北九州で存在感を高めている高橋大悟 [写真]=平柳麻衣

「すごく充実してますね。(試合に出続ける)大変さも含めて、楽しいなって思います」

 その弾んだ声を聞かずとも、プレー中の様子や表情から、日々の充実感が窺えた。ギラヴァンツ北九州のMF高橋大悟は今夏、清水エスパルスから育成型期限付き移籍で加入し、すぐさま右サイドハーフの定位置を確保。第21節から7試合出場4得点と、持ち前の攻撃センスを開花させつつある。

 神村学園高校から昨年加入した清水では、約1年半でリーグ戦出場こそなかったものの、ポテンシャルの高さは随所に光らせてきた。以前、ベテランFW鄭大世が15歳も年下の高橋について、「シュートがメチャクチャうまいし、イマジネーションが豊富だから、『コイツは何かやりそうだな』って思わせられる」と高く評価していたのを耳にしたことがある。

 20日に行われた明治安田生命J3リーグ第27節・アスルクラロ沼津戦では、81分に決勝点をマークした。ペナルティエリア内でこぼれ球に合わせた形だったが、北九州の小林伸二監督は、決して簡単なシュートではなかったと振り返った。「確かにフリーで打ったシュートでしたけど、その前に椿(直起)の足にボールが当たって少しブレている。だから、しっかりあそこまで走っていないと取れないゴールで、彼はそういう部分を大事にしている選手だということが表れていたと思います」

 20歳の小柄なレフティーが新天地ですぐに出場機会を得られた要因は、攻撃面のセンスだけではない。清水の兵働昭弘コーチ(昨季は選手として清水に在籍)に話を聞くと、「チームへの順能力」を挙げた。

「公式戦に出て点を取るのは、どのカテゴリーでも難しいこと。特に、夏の移籍というのは難しくて、即戦力として期待されている中で、早くチームの戦術を理解して、その上で自分の良さを出さないといけない。大悟の場合、攻撃面はもともと良いものを持っているので、あとは守備がどうかな…と思っていましたけど、すぐにチャンスをつかめた。それは、もちろん清水で一緒に居残り練習をしたりして積み重ねてきたものもありますし、彼自身が周りの人からいろいろなものを吸収しようという意欲と、今回の移籍に際して相当な覚悟を持って臨んでいるからだと思います」

 さらに小林監督が評価しているのは「継続力」=「トレーニングとゲームが続いている中、普通ならプレーの質に波が出てしまうことがあるけれど、彼はそういうことがなく、うまくやってくれている」と、守備での「献身性」だ。高橋はそれらについて「清水での下積みがあってこそ」と語気を強めた。

 沼津戦はある意味、特別な一戦だった。静岡県での開催とあって、愛鷹広域公園多目的競技場には清水サポーターも多く駆けつけていた。また、この日は清水の練習がオフだったため、スタンドには高橋がよく慕っているDF鎌田翔雅の姿もあった。試合後の場内挨拶で彼の存在に気づいた高橋は、とびっきりの笑顔を見せて駆け寄った。

「北九州に来て試合に出られるようになって、北九州で出会った方々への感謝はもちろんあります。だけど今の自分がいるのは、清水でやってきたことがあるから。(北九州の戦術を)すぐに理解できたのも、翔雅くんや(増田)誓志(清水からソウル イーランドFCに期限付き移籍中)さん、(金子)翔太くんとかが僕に教えてくれたことが、そのまま生きているんです。だから本当にメチャクチャ感謝しているし、清水で出会った人たちはかけがえのない存在です」

 鎌田や金子をはじめ、清水には2017シーズンまで指揮を執っていた小林監督の教え子が多く在籍している。試合に絡めない中でもくさることなくサッカーと向き合い、日々の練習をとおして彼らから学び得たものが、奇しくも北九州での躍動に結び付くこととなった。明るく前向きな性格で、人付き合いを大切にする高橋だからこそ、巡ってきた“良縁”と言えるだろう。

 若手の育成に定評のある小林監督は「もっと相手選手と駆け引きをしたり、まだまだ質を上げなければいけない。もっと高いレベルを目指してやってほしい」とさらなる成長に期待を寄せている。だが、高橋本人はあえて個人目標を掲げず、「今はチームが昇格することしか考えていません」ときっぱり言いきった。

 悩みに悩み、北九州への移籍を決めたのは、ただ、ゴールを決めたいからじゃない。華麗な技を披露したいからでもない。白熱する昇格争いの中で、高橋は「チームの力になる」喜びを噛み締めながら、ピッチを全力で駆け回っている。

文=平柳麻衣

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