相撲文化を支える“三つの掟”【二宮清純のスポーツコラム】

相撲文化を支える“三つの掟”【二宮清純のスポーツコラム】

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 大相撲人気は止まるところを知らない。横綱・白鵬の38度目の幕内最高優勝(全勝優勝は13度目)で幕を閉じた夏場所、幕内の懸賞は2153本となり、これまで最多だった2015年秋場所の1979本を上回った。入場券も完売状態で、15日間すべて満員札止め。初場所、春場所に続き、3場所連続。新弟子暴行死事件、力士による違法賭博、八百長問題などで人気が低迷した2011年には年間観客動員数30万人余りにまで落ち込んだが、それも、もう過去の話である。

 人気回復の主役は横綱・稀勢の里。負傷した左上腕部が完治しておらず、夏場所は11日目に休場したが、2場所連続優勝は見事だった。ところで稀勢の里は具体的に、どの部位を故障し、全治何カ月なのか。これはまだ詳らかになっていない。スポーツ紙は<左大胸筋損傷、左上腕二頭筋損傷>という書きぶりである。

 角界には3つのタブーが存在する。(1)寺切り、(2)タバコ、(3)焚きつけ、である。まず寺切りだが、これは“寺銭泥棒”の隠語で、要するに盗みを意味する。部屋での共同生活を余儀なくされる相撲の世界においてはご法度だ。

 タバコは言うまでもなく喫煙。元小結の旭道山によれば、「タバコを吸っている連中は稽古中、唇が真っ青になる。要するに厳しい稽古に付いていけないんです。相撲はタバコを吸いながらでもやれるような甘い世界ではない」とのこと。

 そして3つ目の焚きつけ。これは部屋の秘密を外部に漏らすことを意味する。とりわけ故障箇所、その軽重は他の部屋の力士にすれば、喉から手が出るほど欲しい情報だ。それをペラペラ口にする裏切り者には厳罰が科せられる。稀勢の里の症状が漏れ伝わってこない所以である。

 相撲社会には隠語も含めた独自の文化がある。グローバルな時代だからこそ、逆に新鮮に感じられる面もあるのだろう。そういえばガチンコ(真剣勝負)という隠語も、今ではすっかり若者言葉(ガチ)である。

二宮 清純 (にのみや せいじゅん)
スポーツジャーナリスト。(株)スポーツコミュニケーションズ代表取締役。1960年、愛媛県生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」「プロ野球“衝撃の昭和史”」「最強の広島カープ論」「広島カープ 最強のベストナイン」など著書多数。スポーツ情報サイト「SPORTS COMMUNICATIONS」:http://www.ninomiyasports.com/

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