鬼木達監督からのメッセージ。A代表デビュー戦ゴールの山根視来を押し上げた向上心

鬼木達監督からのメッセージ。A代表デビュー戦ゴールの山根視来を押し上げた向上心

代表デビュー戦とな韓国戦でゴールを挙げた右SBの山根。さらなる活躍を誓う。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



「彼の向上心はチームにも本人にもプラスになっていますし、彼の努力を称えたいです」

 川崎を支える右SBの山根視来が日本代表に初選出された際、指導する鬼木達監督は柔和な表情でそう評した。

 対人に強く、足もとの技術、攻め上がりのタイミング、走るコースなど、彼の真骨頂は数多くあるが、なによりの持ち味は「向上心」、そして「学び続ける心」と言えるのだろう。

 2020年に湘南から川崎に加入した際は、新加入選手であれば誰もが通る、川崎のパスサッカーへの戸惑いを覚えた。シーズン開幕から右SBのレギュラーを掴んだが、口癖は「まだまだです」。ゴールを奪うなど勝利に貢献した試合の後に話を訊いても、スタンスは常に変わらなかった。それだけ上を見続けてきたということである。

 行き詰まった際にはサッカーノートに、その時点の課題を書き込み、自らのプレースタイルを改めて整理してトレーニングに臨んだ。入団1年目の昨季、チームは圧巻の成績でリーグ戦を制し、山根も不動の右SBとしてプレーしたが、鬼木監督も思い悩む姿も目にしていたという。

「昨年の途中、一回、迷っているような時期もありましたが、悩んだことが逆に良かったのかなとも思います。自分自身もこのタイミングで、この要求をすると悩むかなという想いもありましたが、伝えなければ上に行けないと思い、その時は少しパフォーマンスは落ちましたが、自信につなげてくれました。だからパス回しひとつとっても変わったなと感じました」
 高いレベルを求め合う川崎でプレーすることで得られた自信、そしてその自信が目に見える結果として現われる。今季は7試合にフル出場してすでに4アシスト。鬼木監督も「昨年の後半から今年の頭、キャンプの時から変わってきたなと、顕著に表われていたので、ここまでの試合は彼らしいプレーが見えています」と目を細める。

 そしてクラブと同じ右SBで先発し、A代表デビューを果たした韓国戦での豪快なゴールである。トレーニングから最終ラインを組む選手たちを中心に密にコミュニケーションを取り、通常より「1.5倍」の強さで当たりにいったほうがいいとの吉田麻也の助言などを、真摯に受け止め、キッチリ実行したというのも彼らしいエピーソードである。

 韓国戦を経て、山根の活躍に関して、鬼木監督に話を訊けば、喜びを口にする。

「(得点シーンで)あそこにいるのが視来だと思っているので、彼らしさが出て嬉しかったです。ただ、自分たちの試合でもあそこまでいっているので、自分たちの時も入れてよと想ってもいました(笑)。

 それは冗談として、デビュー戦で取れたというのは彼の努力があってこそだと思いますし、ああいう舞台に立つには心の準備はすごく大事だったと感じるんです。日韓戦でしたしね。そこでああいう持っている力を出せたというのは、身体の準備とともに、心の準備をもしっかりできたんだろうなと思います。でも彼はスタートラインに立ったところなので、これからもっと頑張ってもらいたいですね」

 
 その言葉通り、日本代表で今後、右SBのレギュラーを掴むには、酒井宏樹という大きな壁を越えなくてはいけない。本人もそれを自覚している。

「去年の10、11月の活動の試合を見ても、3バックをやってもSBをやっても、対人の強さは圧倒的でしたし、正直、テレビで見ていてあの代表のなかで化け物だと思っていました。普段のリーグ戦ではネイマールを相手に止めている選手。違いはかなりあると思います。自分の良さはSBらしくないというか、中でもプレーできる、得点のところだと思うので、そこで結果を残していきたいです」

 ふと振り返れば、今冬に川崎からポルトガルへ移籍した守田英正が、昨年にリーグ優勝を決めた試合後に「良い意味で本当に“サッカーマニア”が今の川崎には多くて。今日の優勝を決めたあとも視来くんや(田中)碧なんかが『あそこのシーンは…』とか反省会を始めているんですよ」と笑い話をしていたが、どんなに喜ばしい結果を得てもすでにその目には、次の目標が写っている。

 それこそ韓国戦の後には、湘南で指導を受けだ貴裁監督(現・京都監督)を含め、多くの関係者からメッセージが届いたというが、彼の頭はすでに3月30日のカタール・ワールドカップ・アジア2次予選のモンゴル戦へ切り替わっているようだ。

 だからこそ、彼のさらなる活躍を楽しみにしたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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