プロ分析官が代表ウィーク明けの注目カード『名古屋×FC東京』を徹底展望! グランパス7連勝のカギを握るのは?

プロ分析官が代表ウィーク明けの注目カード『名古屋×FC東京』を徹底展望! グランパス7連勝のカギを握るのは?

杉崎氏の「名古屋グランパス対FC東京」予想フォーメーション。



 約2週間の代表ウィークが終わり、ついにJ1リーグが再開を迎える。

『サッカーダイジェストWeb』では、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストとして、リーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、7節・名古屋グランパス対FC東京の勝負のポイントを伺った。

 確かな分析眼を持つプロアナリスト界の第一人者は、注目の一戦をどう見るのか。予想してもらった布陣の解説、両チームのポジティブ・ネガティブ要素、注目選手を挙げてもらった。

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【名古屋予想布陣解説】
 名古屋は開幕から全勝しているので、システムを変えることは考えづらい。稲垣祥と相馬勇紀は代表帰りでコンディションの心配もありますが、そこまで問題はないでしょう。ただ、相馬はU-24アルゼンチン代表との2連戦で、2試合目に長い時間出場していることを考えると、若干ですが相馬の方がコンディションに影響があるかもしれない。もしかしたら齊藤学の先発出場もあるかもしれません。

 また前線は、一番前に柿谷曜一朗を置いて、2列目のトップ下にガブリエル・シャビエルということも考えられます。それでも柿谷をトップ下にした理由は、もしFC東京が4-1-4-1の形できたとすると、森重真人のところに守備でアプローチがしたいと思うんです。そうなってくるとG・シャビエルより柿谷かな・・・・・・と。柿谷は守備の選手ではないですが、G・シャビエルよりは森重をけん制することができるかなと思っています。

 逆に名古屋がボールを握る展開になるとしたら、柿谷は森重の両脇を動き回ってボールを受けて、さらに2列目から飛び出すことができれば、それが大きな強みになると思います。
 

【FC東京布陣予想解説】
 FC東京も、代表組のコンディションが気になります。渡辺剛はU-24アルゼンチン代表との第2戦に出ていないので問題ないでしょう。ただ日本代表の小川諒也は、2戦目のモンゴル戦でフル出場しているので、もしかしたら中村帆高が左SBで、中村拓海を右SBで使うことも考えられます。しかし、名古屋の右ウイングがマテウスだと考えたときに、力のある小川を使いたいはず。3月30日の代表戦から中3日ですが、体力的には問題ないかなと思います。

 怪我人も多くなってきていて、右ウイングの渡邊凌磨や紺野和也。また規律違反で活動を自粛していた波多野豪と安部柊斗(先日練習に復帰したばかり)をいきなりスタメンで出すことは考えづらい。GKは、波多野が不在だった2試合で良いセービングを見せていた児玉剛かなと思います。

 田川亨介はアルゼンチン戦の最後に怪我をして交代しているので、大事を取って先発では使わないと予想して、右ウイングには東慶悟を配置しました。あとの問題は永井謙佑をどうやって使うか。ディエゴ・オリヴェイラを右ウイングにして、永井をスタートから真ん中で使うことも考えられます。ただ、長谷川健太監督は切り札をベンチに置いておきたいタイプなので、もし田川が怪我でベンチにすら入れない場合に、ベンチにFWがいなくなってしまうという考えでこの布陣予想になりました。
 

名古屋グランパス
今季成績(6節終了時):2位 勝点18 6勝0分0敗 9得点・1失点

【ポジティブ要素】
 開幕から6連勝していて、失点も開幕戦のアビスパ福岡相手のオウンゴールのみ。さらに、しばらく試合がなかった点も優位に働くと思っています。ほかのチームはルヴァンカップをやっていましたけど、ACLに出る関係でそれすらなかった。おそらく調整期間が長かったことで落ち着いて整理ができたことがポジティブな要素になるはずです。

 そこで何が修正できたかと言えば攻撃ではないでしょうか。準備期間でおそらく紅白戦や練習試合をやったと思いますが、そのなかで攻撃にフォーカスして、相馬と稲垣が代表でいない状況のなかでどうやってコンビネーションを作っていくかというのが、この2週間を使って確認できたと思います。

 FC東京は最近ちょっと失点をしていますが、もともと守備が強いチームなので、そこをどう崩すかという整理も含めて単純に相馬や齋藤学、前田直輝、マテウスという両ウイングだけを使うのではなく、ほかの様々な形にもチャレンジできたのではないかなと考えます。
 
【ネガティブ要素】
 今回、FC東京にはD・オリヴェイラやアダイウトンといった、スペースがなくても自ら裏にどんどん仕掛けられるアタッカーがいます。そこで最終ラインが押し下げられてしまったときに、名古屋がボールを奪う位置がかなり自陣の深い位置になると、相手ゴールまでの距離が遠くなるので攻撃に時間がかかる。そうなると膠着状態が続くことも考えられます。

 名古屋としてはホームゲームなので、積極的に攻撃にいきたいと思う。だからといって、裏のスペースを空けてしまうと、FC東京の強力な3トップが積極的に裏に抜けてくる。これまでの名古屋の6試合に関しては、裏を取らせない守備がハマっていて防げていましたが、FC東京には通用しない可能性があります。

 あとは名古屋の右サイドも不安です。右サイドバックを宮原和也が務めると予想しましたが、アダイウトンとのスピード勝負に関しては分が悪いと思うんです。D・オリヴェイラも比較的左寄りに流れてくることもありますし、小川もどちらかと言えば攻撃的な選手。名古屋の右サイドは、多少ネガティブ要素が多いかなと感じています。
 

FC東京
今季成績(6節終了時):6位 勝点11 3勝2分1敗 12得点・10失点

【ポジティブ要素】
 渡辺をCBで使いたいという意図もあるでしょうし、おそらく森重はアンカーかボランチで使われるのではないかと思っています。ここ最近はルヴァン杯も含めて、森重をボランチにして結果を残せていますし、名古屋がボールを握ったときに森重が中盤の底で奪い、カウンターから裏を取るという流れは、やりやすいところではあるでしょう。

 あとは中村帆や小川、中村拓らサイドバックの選手たちが結果を残せるようになってきたというのもポジティブ要素のひとつ。長谷川監督も試合後に、「ようやくサイドバックがアシストした」なんて話もしていましたが、これまでは3トップや2トップのスピードなど、個人技だけで打開することが多かったですが、いまはサイドバックが積極的に攻撃に絡んで厚みを持たせることができてきた。そこに結果もついてきたというところがひとつポジティブな面だと思います。
 
【ネガティブ要素】
 不安な点はアウェーで勝てていないこと。ここまでホームゲームが多く、そこで結果を残してはいますが、実はアウェーを2試合やって両方とも引き分けなんです。理由には移動距離や環境の変化などの色んな要素があると思いますが、単純にそれだけではないと思います。アウェーで勝てていないという意識が、チームに精神的な影響を及ぼしている可能性もあります。

 ましてや今回の相手は名古屋。前線の4人は個の能力が高いので、東やアダイウトンなどウイングで使われた選手たちの重心が下がってしまうとかなり危険性があります。さらに、アルトゥール・シルバと萩洋次郎、森重の中盤3人もひとつのネガティブ要素になり兼ねない。A・シルバはどちらかというと守備的な選手ですが、できれば攻撃面で力を発揮してほしい選手。そのなかで柿谷や相馬、マテウスといった両ワイドの攻撃的選手のカバーに追われ、守備の時間が増えると、自分たちが攻撃を仕掛けるときに前線の人数が足りないことになってしまいます。

 さらに米本拓司、稲垣といった選手が最近は積極的にミドルシュートを狙ってくるので、そのケアもしなければいけない。彼らの比重が守備に置かれてしまうことは良くない。FC東京からすると、「それも狙い通りで奪ってカウンターにいける」と言うかもしれませんが、アウェーで勝てない原因はそこにあるのではないかと考えています。

 相手は名古屋なのでカウンター対策もしっかりしてくるはず。相手にボールをずっと握られる展開になると個人で打開できる選手が前線に揃っているので、簡単に切り崩されてしまう不安があります。
 

【名古屋注目選手】
DF宮原和也
 FC東京は左から崩してくることが多く、左ウイングの先発がアダイウトンか永井かは分かりませんが、どちらにしてもドリブルやスピードが武器。その相手に宮原が1対1でどれだけ対応できるかがカギになってきます。また小川も積極的に攻撃参加してくると思うので、マテウスとの守備の連係も非常に重要です。

MF米本拓司
 米本が相手の萩やA・シルバをどれだけ押し下げられるかがポイント。ボランチでコンビを組むことが予想される稲垣は代表帰りで、もし疲労が見えたときに、米本がどれだけ上下動繰り返して相手の嫌なプレーができるかです。仮にFC東京が、A・シルバと森重のダブルボランチで、トップ下が高萩という4−2−3−1できた場合、より米本が前に出ていってA・シルバにマークをつくのか萩につくのか、状況に応じた対応も大切です。

【FC東京注目選手】
DF森重真人
 自分たちがボールを握った際に、相手のサイドバック裏に森重がどれだけ正確なフィードを出せるかが攻撃では重要になってきます。実際、ホームゲームのどの試合でも彼は中盤でボールを奪って、一発アバウトに蹴ることを毎試合やっているので、これがチームの狙いどころだと思います。守備においては、柿谷やG・シャビエルというトップ下を抑える仕事、攻撃になれば、自分が柿谷やG・シャビエルに捕まらないような位置でボールを受けて、ロングボールを繰り出すことが求められます。

MF東 慶悟
 右ウイングで使われるのであれば、吉田と対峙しないといけないのはかなり厄介。もともとドリブルを仕掛けるタイプではないので、周囲を使ってパスを繋いで崩すのであれば、東のところで時間を作りたい。そのため、なるべく吉田に捕まらない展開が望ましい。またワイドに張らず、彼が得意なトップ下の位置でゲームを作るときには、名古屋のキープレーヤーである米本とマッチアップすることになります。米本がA・シルバや萩に対応しないといけないとき、東まで見る必要が出てくればかなり困るでしょう。そのように、米本を困らせるような動きができるかという期待を込めて東を挙げました。
 

【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献した。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍中。

◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014〜15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年〜20年)

◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝 
2018年:ルヴァンカップ・準優勝 
2019年:J1リーグ優勝

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