プロ分析官が注目の一戦『FC東京×川崎』を徹底展望! 37回目の多摩川クラシコ、鍵を握るのは森重と…

プロ分析官が注目の一戦『FC東京×川崎』を徹底展望! 37回目の多摩川クラシコ、鍵を握るのは森重と…

杉崎氏の「FC東京対川崎フロンターレ」予想フォーメーション。



 今回で37回目を数える伝統の一戦、“多摩川クラシコ”が4月11日に味の素スタジアムで行なわれる。

『サッカーダイジェストWeb』では、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストとして、リーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、9節・FC東京対川崎フロンターレの勝負のポイントを伺った。

 確かな分析眼を持つプロアナリスト界の第一人者は、注目の一戦をどう見るのか。予想してもらった布陣の解説、両チームのポジティブ・ネガティブ要素、注目選手を挙げてもらった。

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【FC東京予想布陣 解説】
 中3日での3連戦目。この試合の後に1週間空くので、おそらく疲労面に関しては考えていないはず。そういったことも考慮して、前節に近いメンバーにしています。

 森重真人選手をアンカーに使うのか、CBで使うのかは監督としても悩みどころでしょう。川崎の攻撃の特長は中盤でボールを握り、真ん中やサイドを使って組み立てることなので、そこを抑えたいはず。そのうえで、森重選手をCBにして最終的に守ろうという判断もできますが、それよりも最終局面まで行かせないという方に焦点を当てたいのではないかなと考えています。

 ただし、森重選手と東慶悟選手のダブルボランチの可能性もあります。そうなれば、東選手ではなくて、よりボランチ色の強いアルトゥール・シルバ選手という選択肢もありますが、ホームですし守るよりは攻めたいはずなので、前に出ていく推進力のある東選手が有力です。

 右のサイドバックは、前節は中村拓海選手が起用されましたが、なんといっても三笘薫選手を抑えないといけない。若干の疲労感が残っている選手よりも、前節出ていないフレッシュな中村帆高選手が先発すると予想します。

【川崎予想布陣 解説】
 左サイドバックを車屋紳太郎選手にした理由は、登里享平選手が怪我明けでここまで2試合連続で出場していて、連戦が続くなかで無理をさせない選択肢を取るのではないかと考えました。

 旗手怜央選手の可能性もありますが、対峙するのはおそらく田川亨介選手。よりフィジカルが強く、登里選手よりも少し上背もある車屋選手の方が対応しやすいのではないかと思います。

 前線はいつものメンバーです。もちろん、試合によって長谷川竜也選手が左ウイングで出たり、小林悠選手が右ウイングで出たりもしますが、ビッグマッチと捉えれば現状のベストメンバーで臨むのではないかと考え、この形を予想しました。
 

FC東京
今季成績(8節終了時):6位 勝点15 4勝3分1敗 14得点・11失点

【ポジティブ要素】
 ホームで2連戦目なので、移動がないのはかなり優位に働きます。またそのなかで、自宅でのルーティーンも含めてゆっくり準備ができる。これは、大事な一戦に向かううえで非常にポジティブな面だと思いますね。

 そのなかで、前線に主力が少しずつ戻ってきたというところも大きい。前節はレアンドロ選手と永井謙佑選手がベンチ入りをしましたし、前線にベンチメンバーを含めて5人いるという状況になった。ですから様々な切り札が使えそうです。

 この試合におけるFC東京のキーポイントは、守備ではなく攻撃。いかにホームで川崎を相手に点を取るかです。3トップはどうしても守備に追われることもあると思いますし、カウンターを仕掛けるスピード感を維持するのであれば、良いタイミングで控え選手を入れて、さらにスピードアップしなければいけない。そこで川崎のウイークポイントを突いていくには、裏に抜けられるアダイウトン選手、ディエゴ・オリヴェイラ選手、田川選手が積極的に力を発揮していくべき。そのうえで、彼らが疲れても控えに優秀な選手がいるのは心強いです。
 

【ネガティブ要素】
 前節一発レッドで退場となった渡辺剛選手が、最終ラインにいないのは不安要素です。中3日での試合で、この4バックの組み合わせの連携強化を行なう時間があまりなかったはずだからです。

 いまJリーグで一番得点力があるチームに対して、連携が足りないなかで守ることには不安がどうしても出てくる。渡辺選手がいないことが不安要素ではなく、普段慣れていない4人で川崎の攻撃を抑えなければいけない。この4人のなかで誰かが前に出たのにカバーがいないとか、ものすごく細かいミスが試合中に出てくるだろうなと。

 また、森重選手をアンカーかCBどちらで使うか悩んでしまっていることもひとつのネガティブ要素。前節から中3日で、実質リカバリーで2日間を費やさなければいけないとしたら1日しか準備する時間がない。そのなかで、どれだけチームの連携を高められるかが重要です。
 



川崎フロンターレ
今季成績(8節終了)※9試合消化:1位 勝点25 8勝1分0敗 22得点・4失点

【ポジティブ要素】
 5節・ヴィッセル神戸戦だけ引き分けましたが、それ以外は勝っていて、今季はずっと結果を出していますね。その勝ち方として、固定メンバーで勝ってきたわけではないことがひとつのポジティブ要素です。FC東京のネガティブ要素とは真逆で、人が変わっているのに連携面に不安がないですよね。

 さらにFC東京のポジティブ要素だった、ベンチメンバーの豊富さという点も川崎は備えています。仮に先発の3トップでなかなかゴールが生まれなくても、控えに小林選手や長谷川選手がいたり、タイプの違う選手をゴロゴロ揃えています。

 それに怪我人も少ない。登里選手が戦列に復帰して、中盤の3人も90分間このメンバーというわけでもないですし、時間を見て交代ができる。2、3点取っているなかで、ちょっと選手を休ませる交代もしつつ結果を出せています。これがひとつポジティブ要素なのかなと思います。今年の川崎は、誰が出てもできるということが自分たちにとっても自信になっていると感じます。
 


【ネガティブ要素】
 これまでナイトゲームを多くやってきた川崎にとっては、3月21日以来のデーゲームです。加えて気温も上がってきていて、現在の日曜日の予報が最高気温18度。いつも通り自分たちのプレーをするでしょうが、ボールを失った後、相手のカウンターを何回も受けたときに疲労感が出ないかどうかが心配な点です。

 さらに、そうした気象条件で、ジョアン・シミッチ選手を先発で使うかどうか。彼はここまで多くの試合でフル出場していて、直近の8節・サガン鳥栖戦で12.9キロ、その前の7節・大分トリニータ戦で13.1キロ走っています。中盤の3人は、攻守でかなりキーになるプレーヤーたちだと思いますが、もし彼らが疲れてしまうと相手のスピードについていけないということも出てくる。これがひとつのネガティブ要素なのではないかなと。

 そもそもフロンターレは走りまくるチームではないですが、今シーズンに関してはスプリントのデータも変わってきている。Jリーグ公式サイトによると、チームあたりの平均値が190回とリーグで4位なんです(FC東京は191回で3位)。なので、スプリントにフォーカスすると川崎は走れないチームではない。ただ、そこをデーゲームでFC東京を相手に出せるかどうかがですね。
 



【FC東京注目選手】
DF森重真人
 まず、どこで使われるかがポイント。CBなのかボランチ、アンカーなのか。これによって彼のタスクが変わるし、川崎は中央でゲームを作れるチームなので、そこに対して蓋をする、自由にやらせない、守備で相手が嫌がることをできるかどうかが重要です。

 さらに、攻撃になったときには前線の3人を走らせるのか、それともそこを封じられてサイドバックが縦に仕掛けるのかなど、彼が攻守においてのスイッチになる。もしダブルボランチになったときでも同じ。パートナーとともに周囲を動かし、またパートナーをどう動かしていくのか。彼のプレーは注目すべき点だと思います。

【川崎注目選手】
MFジョアン・シミッチ
 この4-3-3システムでは、彼の両脇が使われやすいのですが、運動量があるので守備でも献身的にボールサイドに寄ってカバーができる。ただこの2試合で、各13キロ近く走っている疲労感が気になります。彼の守備におけるポジショニングや、振る舞い、疲労感に注目してみると面白いのではないかなと思います。

 また今季加入のJ・シミッチ選手は、最初は若干不安がありましたが、試合を重ねるごとに田中碧選手、脇坂泰斗選手など、インサイドハーフの選手との連係がうまくできてきています。

 実は川崎の対戦相手が二桁以上のシュートを放ったのは、開幕節の横浜F・マリノスだけ。それは、自分たちがボールを保持して守備をする時間が少ないという単純な理由もありますが、それ以上にこの中盤の3人を含めて、相手に自由にやらせていない証拠だと思います。それが失点数の少なさや自分たちがボールを握れていることにも表われているのではないかと思います。
 



【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。


◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014〜15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年〜20年)

◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝 
2018年:ルヴァンカップ・準優勝 
2019年:J1リーグ優勝
 

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