「黙して完璧な試合」をしたネイマール、リベンジを果たしたエムバペ。雪の下で神話をつくったパリSGにフランスが熱狂【現地発】

「黙して完璧な試合」をしたネイマール、リベンジを果たしたエムバペ。雪の下で神話をつくったパリSGにフランスが熱狂【現地発】

降りしきる雪のなかで固く抱き合ったネイマールとエムバペ(7番)。 (C)Getty Images



 チャンピオンズ・リーグ(CL)準々決勝第1レグでタイトルホルダーのバイエルンを下したパリ・サンジェルマンに、フランス人の多くは、しばしの陶酔に浸っている。

 試合後の討論番組では、「奇跡と言うべきか、それとも英雄的と言うべきか」の題目が登場。多くは「両方」の意見で盛り上がった。

 また一夜明けた現地時間4月8日付の『L’EQUIPE』紙も、ヴァンサン・デュリュック記者の社説を掲げ、「叙事詩の香り」「雪の下の試合の神話」「互いのために英雄的に戦った」と珍しく美しい賛辞を贈呈した。

 ただ、「今朝の時点でもまだ、パリSGが本当のところ長期的にどういうチームなのかはわからないが、少なくとも宿命の夜にどんなチームになれるのかはわかるようになった」として、「明日われわれに理性が戻ったら、そのときはセカンドレグが残っていることを考えねばならず、心配しなければならないだろう」と目覚ましをかけるのも忘れなかった。

 とはいえキリアン・エムバペとネイマールは、予想を超える活躍で人々を幸福にしたのも事実。しかもふたりは、それぞれのリベンジを見事に果たした。
 
 まずエムバペは、マヌエル・ノイアーに敗北した昨年夏の借りを返した。

 昨夏のCL「ファイナル8」に怪我明けで出場した22歳の怪物は、仕掛けやアシストで貢献したもののゴールはなかなか決められず、とくにファイナルでは立ちはだかったノイアーとの1対1に屈した。

 この屈辱を忘れていなかったのだろう。7日夜、背番号7は雪が降りしきる敵地でのリベンジを決意。ノイアーを初っ端から崩し去り(3分)、さらにはノイアーが微動もできない股抜きシュートで決勝ゴールをものにした(68分)。

 これでエムバペは、2月16日のバルセロナ戦以来、シュート12本、枠内9本、6ゴールを実現し、今大会ノックアウトラウンドに残っているチームの中で最高の効率をマーク。しかもカンプ・ノウでハットトリック、アリアンツ・アレーナでドゥブレ(1試合2ゴール)と、凄まじい実力を世に披露したことになる。

 そして、ネイマールは、自分自身の失敗にリベンジを果たした。

 直前のリーグ戦、リール戦(0−1)でキレてしまったネイマールには、フランス中から怒りと憤懣が噴出。レッドカードで退場した後も廊下でケンカをしたため、前科も考慮され、「3試合出場停止うち1試合執行猶予」と厳しい処分が下されていた。

 パリSGのOB、ジェローム・アロンゾは、「パリSGはエムバペ、ネイマールという世界トップ5に入る選手を2人も擁していながら、バイエルンを倒せるかどうかわからないと疑問符をつけられている」と語り、厳しく戒めのプレッシャーをかけたほどだった。

 このためネイマールは、雪が降ろうが削られようが、黙って完璧な試合をするしかなかった。そしてそれを、彼は実行に移した。エムバペへの見事なアシスト(3分)とマルキーニョスへのインスピレーションに溢れるアシスト(28分)だった。その後はしきりに足を痛がったが、きっかり90分までピッチに立った。
 
 ノックアウトラウンドでフランスのクラブがバイエルンを下したのは、1969年のサンテティエンヌ以来。半世紀以上なかった一大快挙だ。降りしきる雪もロマンをかきたてた。あれほど攻められても落ちなかった「パリ城」も伝説になった。

 ヨーロッパカップ戦の直近103試合の統計によれば、敵地を3−2で制したチームが次ラウンドに進出する率は95%とかなり高いという。

 だが、歴史は常に書き続けられる。最近はルモンタダも多い。しかも相手はバイエルンだ。パリは1週間後、もう一度英雄になれるだろうか。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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