紆余曲折のサッカー人生を歩んできた南葛SC新キャプテン。チームを導くポジティブ思考と人間性を育んだ経験値

紆余曲折のサッカー人生を歩んできた南葛SC新キャプテン。チームを導くポジティブ思考と人間性を育んだ経験値

今季キャプテンを務める大河原。在籍4年目の守護神が「ポジティブ思考」でチームを牽引する。写真:滝川敏之



 前回のインタビューでは、大河原弘樹新キャプテンに2021年シーズンのチームの抱負を語ってもらった。

 その中で出てきたキーワードが「ポジティブ」。一見、当たり前のようでいて、保ち続けることが難しいメンタル要素だ。それでも説得力が伴うのはなぜか。それは新キャプテンがこれまでに歩んできたサッカー人生とも密接にかかわってくる。

 インタビュー企画第2回では、大河原弘樹というプレーヤーに焦点を当て、キャプテンに選ばれた理由を知ることから、南葛SCの目指すチーム像を探ってみたい。

――◆――◆――

 今回のインタビュー前、南葛SCの練習を見させていただいた。コロナ禍の現在、以前のように練習見学をするのは、はばかられるのかもしれないが、チームの成長を実感してもらうには、練習を見てもらえば一目瞭然のはずだ、と感じた。

 ゲーム形式の練習では、狭いスペースでもポンポンとボールが繋がる。いったいどこにパスコースがあるのか、展開が速すぎて分からないくらいなのだが、なんとなくでなく、意図を持ってボールを繋ぐシーンの連続に圧倒された。ディフェンスも手を抜いているわけではない。いったいこのプレーがリーグ戦ではどう表現されるのか、早くも期待に胸が躍った。

 チームは、「止める」「運ぶ」を突き詰めた「ボールを大事にするサッカー」の精度を上げる意識を強く持ち、さらに進化しようとしているのは明白だった。

 大河原が「今やっていることは間違いない」と手応えを感じるのもうなずける。

「試合をするたびに課題は出ます。それをどう改善して昇格に向かうのか。それは日々の練習からみんなで意識していることです。新加入の選手も今日のような練習に普通に入っていける。すごく力のある選手たちが加入してきてくれて。あとはチームでやることを統一できれば」

 今シーズンもJリーグから有力な選手が複数入団した。さらに高校、大学からの若手も加入。チームは確実に選手層を増した。まさに盤石の体制。しかし、新キャプテンも自信を覗かせつつ、慢心はしない。

「今やっている通りでいいのですが、考えているのは、負けてしまったり上手くいかないことが続くことなど、問題は絶対に起きるということです。そのときに問題にどう向き合うか」

 歯車が?み合わなかった2019年シーズンの教訓がここにあるのかもしれない。たしかに、思い描く展開と違うことになった場合の準備を怠ってはいけない。

「僕個人として心がけているのは、基本的にネガティブな声はかけないこと。ポジティブな声を個人的にどんどんかけていこうと。そういったところはGKですし、どっしり構えていないといけません。何があっても」
 

「ポジティブ」は大河原弘樹というプレーヤーの本質なのかもしれない。

 もともとはFWだった。小学生の時、チームのGKが風邪をひき、じゃんけんで負けて代わりにGKをした。当時の背の順で「前から3番目くらい」と小柄だったが、活躍したことで認められ、FWとGKを両方するようになった。当初は点を取る方が好きだったが、「シュートを止めた時の喜び。味方が『やられた!』と思った時にバチッと止める快感」の虜になっていく。奇しくも誕生日は、メキシコの伝説的GK、ホルヘ・カンポスと同じ10月15日。自身がFW出身ということもあってか、カンポスのような攻撃的GKに志向していく。

「カンポスのように、背が小さくてもできることを武器にしたいと。機を見て守備範囲を飛び出すとか、ビルドアップとか、パントキックでカウンターの起点になるとか。それらができれば通用するかと」

 昨シーズンの5節、エリース東京FC戦の3点目。ボールの失い方が悪く、カウンターとなるスルーパスをDF背後に通された。その時、咄嗟に飛び出し、前線に残る右SBの加藤颯人に強烈かつ正確なキックをダイレクトで通した。これがカウンター返しとなり試合を決めるゴールにつながった。

「生涯最高のインサイドキックでした」
 と本人も会心のプレー。守るだけでなく常に「GKは攻撃のはじめの一歩」と意識している男の真骨頂がここで出た。

 真面目でシャイ。周囲からはそう見られがちだ。だがその実、人一倍負けず嫌い。表には出さないが、心のうちはアグレッシブでポジティブな姿勢に満ちているのだ。
 

「何かネガティブなことがあっても、とにかく次、次、次。切り替えればいいじゃん」

 常にそう心がけているが、決して独りよがりにはならないのが注目すべき点だ。
「基本的にチームに迷惑をかけたくないのはあります。個人スポーツならまだしも、みんなでやっていくスポーツなので、バランスや我慢も必要だと。前に出ていくのも感情を出すのも苦手なので、平和に終わらせようとしますね」

 アグレッシブでポジティブな一方で、一歩引いて全体を俯瞰する冷静な眼も持っている。この両面を状況によって最適に使い分けるのは簡単なことではない。新キャプテンがこのような資質を持ち合わせているのはなぜか――。

 じつは、これまでのサッカー選手人生の中で1年の空白がある。

 転機は2010年だった。当時JFLのジェフユナイテッド市原・千葉リザーブズに在籍していたがチームを離れる決心をした。

「もともと大学を卒業する時に“25歳になったらその先のことを一度考えよう”と決めていたんです。そして実際25歳になった時、“これ以上上のレベルを目指すのは難しい”と決めつけてしまったんです」

 選手の立場を離れた後はGKコーチ。しかし、サッカーと関わり続けていく間に、一度下した決断に未練があったことに気付く。

「やっぱり選手に戻りたいと。その時、大企業の社会人の強豪チームから声をかけていただいて、そこで仕事をしながらサッカーを続けることにしたんです」

 もう一度プレーヤーに戻れる。葛藤の末、自分に素直になれた喜びもつかの間、2011年の東日本大震災で入団予定だったチームは活動停止に。選手へは2012年から復帰した。

「その時の監督にも協力いただいて、ほかのチームを紹介してもらいました」

 選手に戻ろうとして、でもプレーできなかった2011年から、気づけば10年の月日が流れ、南葛SCのキャプテンになった。現在はハウスクリーニングの職人をしながらサッカーを続けている。その日の割り当てが終わり次第、練習に向かうことができるが、朝は5時から始動と早い。睡眠時間はギリギリだ。他の多くの社会人サッカープレーヤー同様、決して楽ではない条件下で、それでも仕事とサッカーを両立させてきた。

 おそらく今、2010年に一度サッカーから離れる決断をした頃とは違う思い入れが、サッカーに対してあるはずだ。

 2013年から所属した大成シティフットボールクラブ坂戸は、規律と団結、礼儀を徹底するチームだった。
「ピシッとした感じの、南葛SCとはまた違うサッカーをする中で、自分がプレーする上でもいろいろな方が関わっていることに感謝することを改めて教えられました」

 こういった、これまでの1年1年の積み重ねによって、サッカーができる喜び、チームで分かち合う苦楽をより深いところで理解した。だから自分を活かしつつもチームを大事にできる、模範的ともいえるプレースタイルができあがったと思えてならない。ここまでの経緯を知れば、新キャプテンとして人間性を評価されたことにも納得だ。

 ちなみに『キャプテン翼』に登場するGKで好きなのは、カンポスを彷彿とさせるメキシコのリカルド・エスパダスではなく、イタリアのジノ・ヘルナンデス。

「葵新伍がイタリアに渡った当初、頑張っている姿を陰ながらに応援するヘルナンデスの心のやさしさが好きで。僕も頑張っている選手をなんとかしてあげたいという思いがあるので、彼のようになりたいと思うんです」

 普通、必殺技やプレースタイルに憧れるところ、キャラクターの心やさしさに共感する。このあたりからも彼の人柄が伝わってくる。
 

 2021年シーズンも昨シーズン同様、新型コロナウイルス感染拡大の影響下でのリーグ戦となる。昨年より観客入場の規制は緩やかになったものの、通常の身近に温かさを感じるサポーターの応援をフルに受けられるのはまだ先の話になりそうだ。しかし、チームは応援の熱を感じ取っていることを、新キャプテンが代弁してくれた。

「まずはいつも多大なる声援を送ってくださるサポーター、そして支援してくださるパートナー企業の方々に感謝です。僕たち全員が、サッカーができる環境に感謝しなければいけません。そのうえで、今シーズンの最大目標である関東リーグ1部昇格を成し遂げる。その先のことを考えても毎年昇格するくらいの勢いが大事になってきます。そして南葛SCのサッカーとして、見ていてワクワクするようなものも表現していきたいです。サポーターのみなさんの応援は、SNSなどでの反応で伝わってきています。選手が発信したことに対する返信も見ていますし。コメントをくださると、とても響くんです。純粋に頑張らないとなって。僕もこれまで以上に、もっと発信しないといけませんが(笑)」

 関東2部リーグは10チームがホーム&アウェーの2回戦総当たりで行なわれる。昨年の変則的なシーズンの影響で下位4チームが降格となる厳しいレギュレーションだ。万全の準備を行なってきたとはいえ、長丁場のシーズンが常に思い通りになる保証はない。だが、もし苦しい状況になっても、ポジティブなキャプテンと、進化を志すチームで乗り越えていけるか。南葛SCの新たな挑戦は、すでに始まっている。(このシリーズ了)

取材・文●伊藤 亮(フリーライター)

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 南葛SCをスポンサードするKLab社が、今季もコラボレーションキャンペーンを開催。南葛SCの公式戦の試合結果に応じて、同社が運営するスマートフォン向け対戦型サッカーシミュレーションゲーム『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム 〜』のゲーム内アイテムをプレイヤーにプレゼントする。

 プレゼント内容は、南葛SCが勝利すれば「夢球×5」、勝利以外であれば、「コイン×28,300」となっている。さらに、勝利の際は「夢球×5」に加え、南葛SCが入れた得点分の夢球も配布される。南葛SCを応援して、アイテムをゲットしよう。
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