「ガンバは本物のアタッカーを手に入れた」デビュー間近のG大阪ウェリントン・シウバってどんな選手? なぜアーセナルで“出場ゼロ”だったのか【ブラジル発】

「ガンバは本物のアタッカーを手に入れた」デビュー間近のG大阪ウェリントン・シウバってどんな選手? なぜアーセナルで“出場ゼロ”だったのか【ブラジル発】

アーセナルにも在籍したウェリントン。Jの舞台でどんなプレーを見せてくれるのか。 (C) Getty Images



 アジア・チャンピオンズリーグで優勝し、クラブワールドカップで3位になったこともあるガンバ大阪は、ブラジルでも有名なJクラブのひとつだ。私も良いイメージを持っている。何より買っているのは、選手を選ぶ目の確かさだ。

 そのガンバが、また素晴らしい補強をした。ブラジルでも違いを見せていた“本物のアタッカー”、ウェリントン・シウバを手に入れたのだ。この28歳の獲得は、今季のJリーグで、もっと良い補強のひとつだと思う。そのデビューがいよいよ近づいているようだ。

 フルミネンセでキャリアをスタートさせたウェリントンは、16歳という若さでトップチームに登録された。そのプレーはすぐに欧州のビッグクラブの注目を集める。レアル・マドリー、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドなども獲得に動いたが、争奪戦を制したのはアーセナルだった。2011年に彼を400万ユーロ(約5億円)で手中に収めたのだ。

 だが、ここで問題が発生した。プレミアリーグでプレーするための労働ビザを、ウェリントンは持っていなかったのだ。当時のイングランドではその国の代表チームで20試合以上をプレーした者だけに、労働ビザが自動的に与えられた。しかし、彼はU-17代表しか経験がなく、この条件には該当しない。ビザの発給を待つ間、経験を積むことも兼ねて、スペインのレバンテにレンタルされた。

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 しかし、そのまま4シーズン近くをスペインの小さなクラブを転々として過ごすことになる。なぜなら、ようやくビザが下りたのが2015年だったからだ。ウェリントンはイングランドに戻って来たが、すでにプレミアリーグはシーズン半ばで、アーセナルは彼をチームの構想に入れることができなかった。

 そこで今度は、イングランド2部のボルトンにレンタルした。しかしウェリントンはこの時セレソン入りを目指しており、ボルトンではそれが難しいと判断、2016年に古巣のフルミネンセに戻ってきた。結局、ヨーロッパでは芽が出ない形の帰国だったが、もしビザに不備がなく最初からガナーズでプレーしていたなら、彼のキャリアはまるで違うものになっていたかもしれない。
 不本意な形で戻ってきたブラジルで、彼は再起した。フルミネンセではロナウジーニョと組んでプレーすることも多かった。2017年には目にした者は誰もが忘れないような素晴らしいゴールを決めている。シュート自体も素晴らしかったが、何よりも目引いたのはその前の10メートルのドリブルだ。1.59秒という驚異的なスピードで駆け抜けたのだ。

 スペイン、イングランド、ブラジルで経験を積むうちに彼のテクニックは磨かれた。最大の武器はスピード、そして何よりも両足を自在に使えることだ。左右両サイドのアタッカーを務めることができ、CFとしてもプレーできる。つまり、攻撃のオールマイティーカードなのだ。フィジカルも強く、年齢的にもまだまだハイレベルなプレーを続けることができるだろう。ガンバは本当に良い選手に目を付けた。
 
 しかも、お買い得だった。フルミネンセは深刻な財政難に喘いでおり、選手への給料の支払いも滞りがちだ。内部の人間から聞いた話によると、ウェリントンへの給与も遅れ、活躍によって支払われるボーナスや肖像権の使用料も一切受け取っていなかったようだ。

 フルミネンセはこの“借り”をチャラにするため、日本に行きたい彼のために移籍金を大きく下げた。そのため、ガンバは“格安”で獲得できたのだ。

 ウェリントンの現在の評価額は、アーセナルが支払った400万ユーロの35%にも満たないと言われている。だからといって、優秀でないということではない。これまで彼を指導したことのある監督は口をそろえて、そのユーティリティ性の高さを称えている。インテルナシオナウ(2018年に1シーズンだけレンタルでプレー)のヘルマン監督に至っては、彼を「金のリザーブ」と呼んでいた。

 もしウェリントンが日本のサッカーにいち早く馴染むことができれば、きっとガンバのために多くのゴールを決めてくれることだろう。彼は、自らの実力を知らしめる最後のチャンスと燃えて、日本にやって来たはずだ。やる気に満ち、ユーティリティの高い選手を持つことのできた宮本恒靖監督は幸運である。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
 

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