“戦力外”でもバルサに残ったプッチとレンタルに出たアレニャの明暗。「チーム選びを間違えると…」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

“戦力外”でもバルサに残ったプッチとレンタルに出たアレニャの明暗。「チーム選びを間違えると…」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

移籍を勧められながらもバルサに残留したプッチ(左)と出場機会を求めてヘタフェにレンタル移籍をしたアレニャ(右)。(C) Getty Images



<どんなチームでも活躍できる実力を備える>

 それは、サッカー選手がプロとして生きていくための理想と言えるだろう。適応力。それは欠かせないものだ。チームが求める要求を満たすことで、限界を破ったり、プレーの幅を広げたり、もできる。できることをすればいい、というものでもない。着地点を探しつつ、適応し、集団に貢献し、プレーヤーとして成長する、という作業だ。

 しかしながら、チームは選ぶべきかもしれない。

 なぜなら、自分の特色とチームが掲げるプレーモデルがあまりにかけ離れていると、激しいノッキングを起こす。不具合が大きすぎると、努力だけではどうにもならない。合わせすぎると、自分の良さを失うし、自分を貫こうとすると、チームの中で浮くことになる。

<自分が身につけてきたプレーを最大限に生かす>

 それがプロとして最善だ。

 もっとも、妥協しなければならない場合があるだろう。十分に予想できることだが、「どうしても出場機会が欲しい」と考えると、あえて厳しい状況でも飛び込んでしまうことはある。切羽詰まって、そうせざるを得ないかもしれない。あるいは、思った以上の条件に釣られ、挑むこともあるか。

 しかしチーム選びで間違えると、停滞どころか、後退する羽目になる。

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 FCバルセロナのMFリキ・プッチは、その現実を弁えているのだろう。

 今シーズン、プッチは新監督に就任したロナウド・クーマンから「戦力外」を通告され、移籍を勧められたという。守備の再建を目指す中、タフな選手が好まれたが、彼は小柄で高いパスセンスを特徴としていた。そこで、レンタル移籍は有力な選択肢だった。事実、今年1月には同じような状況のカルレス・アレニャが、ヘタフェへ移籍した。

 しかし、プッチはバルサでのプレーにこだわった。ボールポゼッションを基調とし、高い位置でボールを回し、コンビネーションで崩す。そのために集められた選手が多く、ボールプレー技術に長けたプッチは、そこで自分のプレーを一番生かせると信じたのだ。

 ほとんどプレー機会を与えられなかったが、今年1月のスーパーカップ、自らPKキッカーを志願したことで、流れは変わった。終了間際の出場で、PKを蹴らされたら、負けた場合の戦犯になる。その危険を顧みず、敢然とPKを成功し、チームに勝利をもたらした。その功績が指揮官に認められ、以来、プレー時間は少しずつだが増えている。
 一方、アレニャは移籍当初こそ、出場機会を与えられ、救世主のように迎えられたが、チームが不調に陥ると戦犯のようにベンチに下げられてしまった。もともと、ヘタフェは守備に重きを置いた、反則覚悟のフィジカルサッカーで、ボールプレーは二の次。そうしたチームスタイルの中、どうにか先発を取り戻したものの、十分に力を見せるまで至っていない。

 選択がどうなるか。その答えはまだまだ分からない。二転三転するだろう。

 しかし選手は居場所を求めて、いくつもの分岐点を生きているということだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
 

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