5連敗のあとに2連勝。V字回復を見せているFC東京、復調の要因を探る

5連敗のあとに2連勝。V字回復を見せているFC東京、復調の要因を探る

復調のキーマンは萩。多彩なパスでチームの攻撃を操舵した。写真:徳原隆元



 コロナ禍の現在、選手たちを勇気づけるためにサポーターが奏でられる唯一の調べ。それがスタジアムに響き渡る拍手だ。

 試合後、FC東京サポーターからの称賛の拍手に応えるため、ディエゴ・オリヴェイラはスタンドに向かって大きく手を振った。その表情は試合で力を出し切った充実感と心地よい疲労感に包まれていた。

 5月22日のJ1第15節、堅守速攻とポゼッションサッカーという戦略的ビジョンが異なるチームの対戦となったFC東京対ガンバ大阪戦。背番号9を背負うFC東京のストライカーは、開始わずか46秒に電光石火のゴールを挙げ、チームを勝利へと導く立役者となった。

 結局、90分間を通して記録されたゴールは、このキックオフ早々の1点だけに終わり、最小の差によって勝敗は決定した。だが、内容は僅差のスコアとは違い、攻守に渡ってG大阪を圧倒したFC東京の完勝と言えるゲームとなった。

 FC東京はこれで直近の2試合に連勝。リーグ5連敗と低空飛行が続いていた状態から好転し、チームとして立ち直りつつある。

 チーム上昇のキーパーソンは萩洋次郎である。FC東京の先発メンバーのポジションに目を通すと、FWはD・オリヴェイラ、MFには5人の選手が名を連ねていた。ゴール裏の撮影ポジションからファインダーを通して見れば、中央にD・オリヴェイラ、左サイドにアダイウトンを配した2トップに萩の1シャドー。その萩をサポートするように右サイドに田川亨介という布陣に映る。萩を攻撃の核とした陣形は機能していた。

 攻撃陣を牽引した萩の特長はなんといっても多彩なパスを駆使した展開力にある。その特長は若き頃から際立つものだった。
 
 2004年にマレーシアで開催されたアジアユース選手権。チームには増嶋竜也、兵藤慎剛、カレン・ロバート、平山相太など後にJリーグでも活躍する選手が選出されていた。その中でも強烈なロングパスで攻守の形勢や局面を一気に変えていたのが萩だった。

 当時の記憶が鮮明に蘇る。G大阪戦でも、長短、ハイ、ローと様々なパスを繰り出し攻撃の起点として活躍。素早い判断から放たれる敵の急所を突くパスは、攻撃にリズムをもたらした。

 振り返れば4月11日に行なわれたホームでの対川崎フロンターレ戦が、先述した5連敗の始まりだった。

 FC東京は劣勢の展開を想定し、攻撃のチャンスは少ないとの判断からか、FWにはD・オリヴェイラとカウンターで威力を発揮するドリブラーの永井謙佑を配して試合に臨んだ。だが結果は2-4で完敗。劣勢でも自分たちの持ち味を出せれば勝負としての充実感はあっただろうが、ピッチ全面で川崎に翻弄され、スコア以上に力の差を見せつけられた敗戦となった。

【PHOTO】スタンドに響く拍手。FC東京に勇気を与えたサポーターたち
 

 川崎戦での黒星から5連敗を喫すると、長谷川健太監督は状況打開のためのモーションを起こす。連敗中の5試合で出場時間がわずか26分に留まっていた萩に白羽の矢を立て、彼を中心とした新たな編成で勝負に出たのだった。

 その結果、チームは連勝を飾ることになる。なによりパサーとして能力の高い萩をトップ下で起用したことにより、自分たちが思い描くスタイルをピッチで表現できると確信したFC東京の選手たちは、自信を取り戻したように見えた。

 また、G大阪戦でFC東京が優れていた点は、攻撃を形成する前線の選手のスピードにあった。その差を表わすひとつの例が、両ブラジル人がマーカーを背負った状態でボールを受けた時のプレーだ。

 FC東京の助っ人たちはゴールを背にし、しかもマークが付いた状態でボールを受けると、無理なプレーをせずシンプルに出し手に返した。そしてその次のプレーが実に早かった。身体を反転させ前線へと走り込み、スルーパスに備えるのだ。ボールを戻された選手も前線へ飛び出す味方の動きを熟知し、多くの場面においてダイレクトでパスを供給しゴールへと迫るプレーをアシストした。

 さらに田川を合わせた4人の攻撃陣は後方からロングパスを受けると、パスセンスに優れた萩を軸に手数をかけないパス交換で敵の守備網の突破を目指した。あるいは縦への動きを強く意識した迫力あるドリブルでゴールへと迫った。この攻撃スピードの差がG大阪との決定的な違いであり、勝敗の帰趨を左右することになる。
 
 ダブルボランチの青木拓矢と安部柊斗をはじめとしたFC東京の守備陣も、ボールを持ったG大阪の選手を素早くマークし攻撃の糸口を掴ませなかった。守備への高い意識は前線のパワーファイターのブラジル人デュオも例外ではなく、献身的な動きで相手に自由に仕事をさせなかった。ホームチームは攻守ともにタフでダイナミックなプレーを披露し、90分間を支配したのだった。

 全選手が闘志を前面に出して戦い、激しい守備と攻撃に転じれば切れ味の鋭いカウンターを繰り出す。FC東京は従来のパワフルなスタイルが復活し上昇気流に乗りつつある。

 長所を消され、動きを封じられることによって、肉体的に疲れることさえできずに、不完全燃焼に終わった、あの日の川崎戦。その敗戦から打って変わって、試合後、サポーターに向かって笑顔を見せるD・オリヴェイラには充実した疲労感が見て取れた。彼が見せた表情は今のFC東京のチーム状態を端的に表わしていた。

取材・文・写真●徳原隆元

【J1第15節PHOTO】|D・オリヴェイラの電撃ゴールでFC東京が勝利
 

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