【なでしこサッカー新時代】第2回 鮫島彩 (前編)|「なでしこが勝てるなら何でもやる!という気持ちなんです」

【なでしこサッカー新時代】第2回 鮫島彩 (前編)|「なでしこが勝てるなら何でもやる!という気持ちなんです」

鮫島選手は4月下旬に行なわれた合宿にも参加。(C)SOCCER DIGEST



 2021年、日本の女子サッカーは新たな時代に突入する。

 2020東京オリンピックは約2か月後に迫り、この秋には女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』が誕生する。なでしこたちは来るべき時に備えて、コロナ禍という難しい状況のなか、ひたすら前を向き、準備を進めている。

 節目を迎えるこの時だからこそ、これからWEリーガーとなる選手たちの声に耳を傾けてみたい。彼女たちが語る、なでしこサッカーの未来とはいかなるものか。

 第2回には、鮫島彩選手が登場。INAC神戸から、新参入する大宮アルディージャVENTUSに籍を移した33歳は、2011年の女子ワールドカップでは左サイドバックの主力として優勝を経験し、現在もなお、なでしこジャパンの中心選手として活躍している。

 今やチームを率いる立場となったベテランに、オリンピック、そしてWEリーグに対する想いを聞くと、言葉からは熱い思いが迸った。
 
――まず、先⽇のパラグアイ、パナマとの2連戦には、どちらも7−0と圧勝。シーズン明けであり、チームとしては1年ぶりの試合でしたね。⼿応えはいかがですか?

 収穫はありました。私⾃⾝もそうですが、今シーズンで初めての90分間出場という選⼿
もいましたし、(東京五輪の本番と同じ)会場で試合ができたということもそうです。今回は、攻撃に重きを置いてというか、レパートリーを増やすといった点で、できた部分もあれば、まだまだ詰めていきたいなという部分もたくさん⾒つかりました。

――チームの勢いも感じました。

 ただ、試合は⾃分たちがボールを持った時間帯が⻑い試合でした。これが五輪の本番では、相⼿の強度は格段に上がるので、その時に⾃分たちがどう対応できるのかが重要です。選⼿全員が「五輪本番は、全然違う」という認識をどれだけ持っていられるか…本番に向けて、そこを意識していかなければいけないと思います。

――左SB のイメージが強い鮫島選⼿ですが、(常盤⽊学園)⾼校時代からサイドハーフでプレーし、3年前のアジア⼤会前後はセンターバックでもプレーされています。なでしこジャパンでの、ポジションへのこだわりは?

 高倉(麻子)監督からは「SB とCB を頭に⼊れておいて」と⾔われています。どちらでプレーするにせよ、⾃分の強みはスピード。SBなら攻撃的なオーバーラップ、CBなら裏のスペースのカバーリング。そのあたりは、きちんと⾃分の仕事をしっかりやりたいです。

――五輪に臨むにあたり、⼀昨年の⼥⼦W杯・フランス⼤会を戦ってみての課題はどう捉えているんでしょうか?

 2019年の⼥⼦W 杯以前からですが、(左SB がマッチアップする)右サイドのアタッカーは、どの国もスピードタイプが多くて、対応は永遠の課題です。ただ、2011年(⼥⼦W杯ドイツ⼤会)、2012 年(ロンドン五輪)、2015 年(⼥⼦W 杯カナダ⼤会)あたりと⽐べると、世界の⼥⼦サッカー選⼿のフィジカルは間違いなく上がっていると感じます。
 

――フィジカル、というと?

 単純に、「よーい、ドン!」で⾛ったら、すごく差がついてしまうほど速いです。

 ⾃分もスピードに対抗するためのトレーニングをしているけれど、それでは⾜りない。だからこそ、個々の努⼒に加えて、「どれだけチームとして組織⼒を⾼めていけるのか」という部分を、チーム全体として取り組んでいます。

――そういえば、⼥⼦W 杯のオランダ戦では、マッチアップした俊⾜ウイングのファン・デ・サンデンを、⻑⾕川唯選⼿との連携で抑え込み、途中交代に追い込んでいましたね。

 個⼈的にはデ・サンデン選⼿が、今、世界でいちばん速いと思っています。あの時は、(⻑⾕川)唯もうまくスペースを消してくれていましたが、実は、あの選⼿とマッチアップして、前半の途中で⾁離れを起こしていたくらい(苦笑)。しかも、後半に交代して⼊ってきた選⼿(リネト・ベーレンスタイン)も同じぐらい速かったです。

 結局、そこを起点に失点のきっかけ(中央に流れたベーレンスタインのシュートがDF熊⾕紗希に当たりPK に)が出来てしまった。失点をしない対応というのは、90 分を通じて
集中しなければならないので、難しい部分だなと改めて感じました。

――ちなみに先⽇、東京五輪の組み合わせ抽選会が終わりました。グループステージでは、カナダ、イギリス、チリと対戦することになりました。現時点でのイメージを聞かせてください 。

 正直に⾔って「すごく厳しいグループに⼊ったな」という印象です。

 もちろん、どの他のグループも同じぐらいに厳しい。五輪はW杯に⽐べて、参加チームが12チームと少ないので、最初から決勝トーナメントを戦うようなイメージです。GS初戦からタフなゲームが続く、総⼒戦になるでしょうから。

――カナダとは、2014 年のアウェー2 連戦がありました。鮫島選⼿は、先発出場の1試合⽬は無失点に貢献。途中交代の2戦⽬も、アディショナルタイムに決勝ゴールを挙げました。また、イギリスとして出場するイングランド、スコットランドとは2年前の⼥⼦W 杯で対戦していますね。

 実感として言うと、元々強豪国であったにもかかわらず、ここ数年でさらに⼒をつけた印象を受けるのがカナダとイギリスです。

 カナダは、W杯後も対戦しているんですよね。私は出場していないんですけれども、2年前の親善試合(IAIスタジアム⽇本平で〇4−0)と、2018 年にもアルガルベカップ(●0−2)で対戦しました。もともと技術が⾼く、戦術組織⼒があるチームに、⾝体能⼒の優れた選⼿が加わった。⼀筋縄ではいかない、本当の意味でタフなゲームになると思います。

――イングランドとは、なでしこジャパンはよく対戦しますね。

 昔から、よく当たりますよね(笑)。2015 年(W 杯準決勝〇2−1)は、勝ちましたけれども、苦戦する相⼿という印象です。⽇本代表が最も嫌がるシンプルで縦に速い、戦い⽅をしてくる。最近は細かいパスの質も⾮常に⾼く、すごくハイレベルで強いです。しかも(英国4協会合同チームの)イギリスは、イングランドとはまた別のチームになるので、そのあたりの分析が、さらに難しいのかなと。

――地元の⽇本で開催されるという部分は、躍進のカギとして期待できるのではないかなと思いますが…。

 ただ、私たちにとっても、⽇本の夏は厳しい条件です。普段、どれだけ試合を重ねていても、夏場の試合は⿃肌が⽴ってくるほど。ご存知のように「外にはなるべく出ないで」という暑さなので…慣れているから有利とはいえない部分もあります。

 だからといって、それを理由にサッカーの質が下がるということには、絶対にしたくないので、暑さもふまえてどう戦わなければいけないのかを考えたいです。
 

――では、オリンピックは、⼥⼦W杯の時とどう戦い方が変わってくるのかという部分を、具体的に教えてください。

 ⾃分たちがなるべく、ボールを持つ時間を⻑くしたいです。以前よりも、練習中からパススピードだったり、それぞれの⽴ち位置だったりというのを意識して取り組んでいると感じています。

 守備の部分では、チームとしてどう守るのかという⽅針がより具体的に固まったので、それを実戦でどれだけ徹底できるかだと思います。

――3⽉末には、⿅児島で⻑期間の合宿も行なわれましたね。

 ⻑期間、守備の課題に取り組むことができました。男⼦⼤学⽣のチームと対戦することで、五輪の対戦国を想定した際の課題が⾒つかり、対策を⽴てることが出来た。その積み重ねに⼿応えはあります。

――鮫島選⼿は、2011年のドイツ⼥⼦W杯で優勝を経験。優勝メンバーとして、当時のチームにあって今のチームにないもの、逆に今のチームにあって当時のチームにないものがあれば、教えてください。
 
 難しい質問ですね。私⾃⾝は、⽐べる必要がないと思っていますし、対戦相⼿も変わっているので……。

 ただ、⼥⼦W杯の決勝戦や、ロンドン五輪では、守備の時間が本当に⻑かった。相⼿の
シュートがバーやポストに当たる場⾯も多かったし、結果的に「終わってみたら勝っていた」という、運もあった。みなさんからも「運が良かったね」と⾔われることが多かったんです。

――勝ち進めたのは、運に助けられた?

 でも、その運というのは、引き寄せていた部分があると思うんです。ゴール前で皆が⾝体を張って、ひとりが捨て⾝のスライディングでいって、それをかわされたら、すぐ次の選⼿がカバーリングに⼊る。その姿勢が、本当に数センチ、数ミリでも、相⼿のシュートがちょっとずれるようなことに繋がっていたんじゃないかなと。

 そういう運を引き寄せるために、身体を張る、戦うという部分では、優勝した時のメンバーは凄いものがありましたね。

――では、今のなでしこの強みは?

 とにかく技術の⾼さがあります!!

 加えて、戦術理解度も⾼いです。だからこそ、チームとしてもっといろんな部分を⾼めていければ、必ず結果が出せるメンバーだと信じています。

――ここ数年間の鮫島選⼿は、チームをけん引する使命感が、⼀段と強くなってきているように感じます。

 年齢的にも、ただ後ろをついていくだけではいけない⽴場なので、若い頃に⽐べて考えるようになりました。もうとにかく、「なでしこが勝てるのならば、何でもやる!」という気持ちなんです。

 これから、メンバー選考やチームを固めるという段階に⼊ってくると思います。⾃分がどんな⽴場になろうとも、チームが良い結果を出すために、”今”⾃分にできることをとことんやろうという気持ちで臨んでいます。

(後編に続く)

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