【五輪後の日本代表スタメン&序列予測】興味が尽きない“Wトップ下”。人材不足の左SBの候補者は?

【五輪後の日本代表スタメン&序列予測】興味が尽きない“Wトップ下”。人材不足の左SBの候補者は?

河治氏が予測する東京五輪後の森保ジャパン



 今年9月にはカタール・ワールドカップ・アジア最終予選が始まる。東京五輪を終えたU-24世代との本格的な融合が進むなかで、A代表に組み込むべき人材は誰か。そしてスタメンの顔ぶれ、各ポジションの序列はどのようになるか。

 五輪後の最終予選を見据え、森保ジャパンの新陣容について、河治良幸氏に予想してもらった。

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 3バックのオプションもあるが、布陣は現状メインの4-2-3-1を採用した。基本的なレギュラーは最終予選の初めの段階では大きく変わらないと考えられる。理由は、日本サッカ―協会と森保一監督が「1チーム2カテゴリー」というコンセプトでやってきて、東京五輪世代のA代表への組み込みがおおよそ済んでいるから。

 まず序列を突き崩すとしたら、ミャンマー戦に招集されているU-24の選手たちだろう。CBとボランチを兼任する板倉滉は筆頭株だが、オーバーエイジで東京五輪に参加する吉田麻也が健在で、同じU-24の冨安健洋も盤石であるため、コンディションの上下がない限り、9月の時点で突き崩すまでは難しいか。

 1トップから見ていくと、大迫勇也の地位は揺るがない。ブレーメンでは2列目をやったり、なかなか代表のような持ち味を発揮できていないが、完勝した3月の韓国戦で改めて存在価値を証明した。ただ揺るがないなかで攻撃の中心として、さらに良い環境でプレーできるかどうかは、最終予選ひいてはカタール・ワールドカップの本番にも関わる。
 
 2番手は今回の代表で招集から外れた鈴木武蔵。理由は明確で、ベルギーでのシーズン後半戦は怪我に悩まされて実力を発揮できておらず、森保監督もそこを考えて招集を見送ったはず。タフな環境の中で怪我に強くなっていくことも大事だが、1トップとして札幌時代には無かった強さを身に付けているのも事実で、大迫との序列を覆す一番手だろう。

 ただ、上記のリストからは外しているが、本来はベルギーリーグで日本人FWとしては出色の結果を出している鈴木優磨がおり、得点だけでなく日本人では大迫の次にポストプレーがうまい選手でもある。彼が欧州で価値を上げるほど、いやがおうにもファンから注目されるだろう。

 浅野拓磨に関してはサイドのマルチであることも含めて有力候補だが、現在は所属クラブが無い状況で、来シーズンのプレー環境が序列にも影響してくる。逆転の可能性があるとすれば前田大然だろう。ラージグループの筆頭にいると考えている。東京五輪でさらに存在価値を高めて欲しい一人だ。

 ただし、FWに関しては結果が占める割合が強く、U-24に選ばれている4人(前田、上田綺世、林大地、田川亨介)に限らず評価を一変させるチャンスがあるポジションだ。今回の合宿から外れたことで東京五輪が難しくなった選手たちも、最終予選での大逆転に向けて国内外でアピールしてもらいたい。
 

 2列目はどうやってもリストから溢れてしまうほど候補がいるなかで、南野拓実と鎌田大地の“Wトップ下”的な関係が面白く、森保ジャパンの看板になっていく可能性がある。これは久保建英がトップ下の場合も同じで、2列目の左右どちらかをトップ下タイプの選手、もう一人を純然たるサイドアタッカーやストライカーにすることで、近い距離感のコンビネーションとサイドの突破という2つの武器を同時に持てる。

 その意味では鎌田と南野が組む場合、右側は必然的に伊東純也が一番手になる。その伊東もアウトサイドから仕掛ける以外のプレーも身につけているが、堂安律もブンデスリーガでインサイドとアウトサイドの両ポジションを経験することでプレーの引き出しが増えており、現時点では伊東とハイレベルにポジションを争っていけるはず。ただし、二人とも来シーズンの環境がどうなるかで成長度合いが変わってくる可能性が高い。

 U-24のアルゼンチン戦では久保と食野亮太郎が鎌田と南野とはまた少し関係が違うものの、やはり頻繁にポジションチェンジを繰り返す一方で、左サイドから相馬勇紀が縦に突き崩すという関係だった。いずれにしても4-2-3-1の場合はSBとの関係も含めて、2列目の非対称な立ち位置で相手を混乱させるという狙いは表われてきている。

 右の3番手候補はU-24の三好康児か久保だが、二人とも本質的にはインサイドとのマルチなので、本職として坂元達裕を推したい。U-24世代ではないが、6月シリーズのA代表に招集されており、4試合で一気にアピールする可能性がある。左はもともと原口元気が筆頭株だが、韓国戦でうまくはまった非対称な“Wトップ下”を継続するなら、南野が左の一番手になる。ただし右が左利きの堂安や坂元の場合、左を原口にしたほうがバランスは良い。
 
 ストライカータイプの古橋亨梧を二列目に使う場合はゴールに迫力を出したい時で、仮に前田がA代表に組み込まれる場合もそうした意味合いも強い。一方で今回リストに入れられなかったが、ミャンマー戦のメンバーにも選ばれているU-24の遠藤渓太はアウトサイドのプレーを得意としており、彼がA代表に定着してくると、また2列目の中央、右のチョイスにも影響しうる。

 遠藤の他にも左サイドは三笘薫や相馬、SBのマルチで旗手怜央など楽しみなタレントに事欠かないポジションだが、もともと原口が健在なところに“Wトップ下”の起用法がメインになる場合にどう序列を突き崩していくかは東京五輪の本番も含めて興味深い。
 

 ボランチは二列目と違って攻撃も守備もハイスタンダードにこなせる選手が主流になっており、Jリーグではどちらかというと守備的なイメージが強かった橋本拳人や攻守のバランスワーク、ビルドアップに優れていた守田英正がポルトガルで縦にボールを運ぶ姿勢と強いシュート意識を身に付けており、“デュエル王”遠藤航にいたっては5大リーグのブンデスリーガでも指折りのボランチに成長している。

 そうしたスタンダードが無いと、タイプどうこう以前に入り込む余地がなくなって来ているポジションだ。その基準に照らし合わせてもU-24の田中碧はA代表のポジション争いに遠からず割って入るポテンシャルがあり、試合後のコメントを聞いても上昇志向が感じられる。東京五輪を経てどれだけ成長するかがA代表の序列にも影響するが、現在A代表に入っていないU-24代表組では最もA代表に近い選手だろう。

 さらに板倉や中山雄太もマルチで候補になるポジションだが、U-24代表から外れたメンバーの中で田中駿汰は引き続き注目したいタレントだ。3月のアルゼンチン戦は残念ながら怪我で離脱し、今回の選考にも大きく影響したと考えられるが、森保監督の期待は変わらないだろう。

 川崎戦では3バックで三笘の仕掛けをほぼ完璧に封じて見せたように、守備能力のポテンシャルも高いが、何と言っても視野の広さと精度の高い縦パスが武器で、原則今回の合宿メンバーから東京五輪のメンバーが選ばれると見られているが、アピール次第では逆転での滑り込みもあり得る。
 
 もう一人、ロシアのプレシーズンで不運な怪我に泣き、今回の代表からも外れたが齊藤未月も今後の成長しだいで割り込んでくるポテンシャルはある。そうしたU-24世代の台頭が目立つポジションであるものの、森保監督のコンセプトを熟知する柴崎岳やJリーグでも稲垣祥や6月のA代表メンバーである川辺駿など、良い意味で層が厚くなっているポジションだ。遠藤という軸はいるものの、最終予選の間も競争状態が続くと考えられる。

 右SBはJリーグ復帰が噂される酒井宏樹が筆頭であることに変わりはないが、山根視来の充実ぶりが凄まじく、室屋成との序列も現時点では逆転している感がある。ただし、酒井がオーバーエイジとしてU-24の活動に参加する間に4試合あるので、6月の活動におけるホットゾーンと言える。左は逆に人材が薄く、引き続き長友佑都が第一人者だが、もっと脅かす選手が出て来てほしい。
 

 現状ボランチとのマルチでU-24の中山が左SBの2番手と考えられるが、本職の安西幸輝もポルトガルで継続して試合に出ており、大枠の構想から外れていることはないはず。さらに守備能力が高く森保監督の信頼が厚い佐々木翔、U-24に選ばれている旗手、3バック左もこなせる古賀太陽と続くが、突き抜ける存在がおらず、さらに下の年代からの台頭も期待される。

 23人枠だと本職が左右合わせて3人になるケースも多く、場合によっては右から酒井や室屋が回ってくる可能性も。中野伸哉がA代表で台頭してきたら競争の活性化、さらにパリ五輪に向けても面白い。

 CBは上記の通り吉田と冨安がファーストチョイスで、そこに板倉、さらに植田直通がどこまで迫れるかという構図だが、中谷進之介も3月に続く選出であり、攻守両面で可能性のあるタレントだ。また今回はA代表から外れた畠中槙之輔、サイドとのマルチで橋岡大樹がおり、久しぶりの代表復帰を果たした谷口彰悟と昌子源も合宿で評価を上げてくる可能性がある。
 
 ただし、U-24代表のメンバーである町田浩樹だけでなく、ポテンシャルの高い選手が多いポジションなので、3、4番手のところはマルチロールも含めて引き続き競争は続くはず。ただ、良い意味で吉田と冨安に迫れる選手の台頭が求められることは強調しておきたい。対世界のデュエルという部分では菊池流帆も面白いがアンダー代表経験が無く、国内組で挑むE-1あたりがチャンスになるか。

 GKはシュミット・ダニエルがベルギーでパフォーマンスを上げており、権田修一との序列を変えられるか注目されるが、代表でクリーンシートが続く権田の評価は引き続き高いと考えられる。健在の川島永嗣とともに、6月の代表戦でどういうパフォーマンスを見せるか注目される。その一方でU-24世代も大迫敬介を筆頭に突き上げが待たれるポジションであり、急成長を見せる18歳の鈴木彩艶を含めて期待だ。

取材・文●河治良幸

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