【識者が選ぶリーグ・アンのベスト11】王者陥落のパリSGからは3人のみ。ネイマールを選外にしたのは…

【識者が選ぶリーグ・アンのベスト11】王者陥落のパリSGからは3人のみ。ネイマールを選外にしたのは…

結城氏が選んだリーグ・アンのベスト11。赤字がMVP。



 今シーズンのリーグ・アンのベストイレブンをめぐっては、いつになく議論が巻き起こっている。権威ある選手組合UNFP(全国プロフットボーラー連合)が発表した恒例のイレブンに、10年ぶりのリーグ制覇を果たしたリールから2人しか選出されなかったからだ。
 
 これは、優勝が決まった最終節を待たずに投票を行なわざるを得なかったためだろう。票を入れた選手たちの多くが、最後はパリSGの優勝で終わるとみていた可能性は小さくない。歴史的デッドヒートとなったシーズン故の、致し方ない“アクシデント”だった。

 とくにGKマイク・メニャンがUNFPの11人から外れたのは物議を醸し、リールのクリストフ・ガルティエ監督が「投票者は(ケイラー・)ナバスのチャンピオンズ・リーグ(CL)での活躍に影響されたのだろう」とコメントしたほどだ。

 たしかに、パリSGのナバスが、リーグ・アンではCLほど鬼気迫るプレーを見せられなかったの対し、メニャンはクリーンシート21回を誇った。ただ、後者はチームのコレクティブな堅守に助けられた面もあり、甲乙つけがたいが、8敗しても崩れなかったパリの守護神に軍配を上げたい。

【動画】リールを優勝に導いた主砲ブラクの衝撃ミドル弾はこちら
 CBはまずマルキーニョスの選出に異論はないだろう。世界屈指の守備力に加え、セットプレーからのヘッドはチームの武器になり、そのゴールで流れを変えた場面が何度もあった。非の打ちどころない主将は、相棒のプレスネル・キンペンベの成長を促した点も評価したい。

 もうひとりは、リールの主将ジョゼ・フォンテ。長身を利した気迫のヘッドでエアバトルの69パーセントを制し、経験に裏打ちされた統率力で、DFラインだけでなくチーム全体もまとめ上げた。

 パリSGの弱点になったSB部門では、RCランスの右SBジョナタン・クラウスがサプライズをもたらした。凄まじい運動量を活かして攻守両面で奮闘、プレースキックまでこなして、周囲を唸らせた。惜しくも欧州カップ戦出場を逃したとはいえ、昇格組の大躍進に大きく寄与した。
 
 左SBではリールのレイニウドがDFとしてリーグ3位となる32のタックルに成功するなど堅守の一翼を担い、攻撃面でも威力を発揮し、優勝に大貢献を果たした。

 UNFPイレブンの常連だったマルコ・ヴェッラッティがコロナ感染や故障で休みがちになるなど、今シーズンは中盤でもパリSG勢の存在感が希薄だった。対照的に「今シーズン最大のサプライズ」となったのが、リヨンのルーカス・パケタだ。イタリアで燻ぶっていただけに誰も期待していなかったのだが、万能型ルレーヤー(守備→攻撃のリレー役)として、ボールを受けるやパス、キープ、持ち上がりと効果的に機能。9ゴール・6アシストとゴールに絡む働きも見事だった。

「今シーズンの発見」になったのが、モナコの21歳、オーレリアン・チュアメニ。相棒ユースフ・フォファナとともに、ファビーニョ(現リバプール)とティエニェ・バカヨコ(現ナポリ)のコンビを彷彿させる強烈なインパクトを与えた。攻守に溌剌とプレーしたチュアメニは、UNFPのリーグ最優秀新人賞に輝き、「フォファナに捧げたい」と相方に感謝した。
 
 MFでは、リールのバンジャマン・アンドレも忘れるわけにはいかない。22歳の相棒ブバカリ・スマレの隣で34試合に出場し、リーグ断トツの276回のボール奪取を披露。文字通り「縁の下の力持ち」となったこの30歳なしでは、リーグ制覇ななし得なかった。
 前線で文句なしだったのは、パリSGのキリアン・エムバペとリヨンのメンフィス・デパイだ。

 ファイナルまで勝ち上がった昨季のCLの疲れを引きずったまま、今シーズンに突入したエムバぺは、コロナ感染や怪我で心身が疲労し、前半戦はスランプに陥った。だが冬のブレーク後は完全に復調。ゴールを量産するだけでなくラストパスも供給し、終盤戦はリーダーの風格さえ漂わせ、不甲斐ないチームをひとりで牽引した。MVPは、他を圧倒する27ゴールに加え、7アシストをマーク(スコアポイント34)し、チーム総得点のほぼ3分の1に絡んだこの男しかいないだろう。

 デパイもマンチェスター・ユナイテッド時代が嘘のように成熟。主将の責任を負い、エムバペに次ぐ20ゴールに、トップの12アシストをマークして、「どこかイブラヒモビッチに似ている」とさえ言われるようになった。「ソリストなプレースタイル」はいまも批判されているが、最終節の最後までアシストをしまくった。
 
 ネイマールの選外には、異論もあるだろう。タレント力そのものには疑いの余地はないが、問題はそれを発揮したかどうか。今シーズンは、18試合しか出場しておらず、うち先発は15試合。9ゴール・6アシストに留まったうえ、イエロー5、レッド2と相変わらずカードは多く、フラストレーションをチーム全体に拡散する試合が多かった。

 対照的だったのが、リールの主砲ブラク・ユルマズだ。メニャン、フォンテ、アンドレとともにセンターラインで屋台骨にとなったトルコ代表FWは、チーム力で走り抜いたリールの象徴、個に頼るパリSGのアンチテーゼだった。
 
 最後に絶対王者に追い抜かれる恐怖がチーム全体に襲いかかったとき、「心配するな! 俺たちがチャンピオンになる! 闘犬じゃないか!」と叫んだストライカーは、その言葉どおりプレッシャーのかかる最終節にPKで得点。チーム総得点数の4分の1に絡む16ゴール・5アシストをマークし、戴冠を引き寄せた。
                       
文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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