キャスパー・ユンカー、ノルウェー時代のプレー&人物像に迫る! 現地記者に訊いたピッチ内外での“最大の武器”とは?

キャスパー・ユンカー、ノルウェー時代のプレー&人物像に迫る! 現地記者に訊いたピッチ内外での“最大の武器”とは?

ユンカーは今季途中から浦和に加入し、リーグ戦出場5試合で5得点。そんな大物助っ人のノルウェー時代のプレーと人物像に迫る。(C)SOCCER DIGEST



 キャスパー・ユンカー。間違いなく今シーズンのJリーグを盛り上げている選手のひとりだ。ノルウェー1部リーグ得点王という経歴を引っ提げて浦和レッズに加入した27歳のデンマーク人FWは、これまでリーグ戦出場5試合で5得点をマーク。プレーもさることながら、その端正な顔立ちもあって、あっという間に日本のサッカーファンを虜にした。

 ユンカーについて、すでに複数のメディアや個人SNSによってさまざまな情報が紹介されている。ここでは、ボーデ・グリムト時代のユンカーをよく知る人物に連絡を取り、ユンカーのプレーや人物像に改めて迫ってみたい。

 今回、話を伺ったのは、ノルウェーでスポーツジャーナリストとして活動するフレディ・トレセン氏だ。トレセン氏は、ユンカーが昨季まで所属したボーデ・グリムトの本拠地ボーデの地元紙である「Avisa Nordland」に1996年から勤務し、ボーデ・グリムトのトレーニングや試合を現地で日々チェックするのを主な仕事としている。

 2015年にはクラブの応援番組「Studio Glimt」を開始。ボーデ・グリムトの試合が終わってから2時間後に生放送されるこのストリーミングプログラムは、サポーターの間で人気を博している。ユンカーがボーデ・グリムトに在籍していたときは、本人と頻繁にやり取りをしていたそうだ。
 
 トレセン氏にはまず、ユンカーのプレースタイルについて聞いた。

「一言で表すと、とても賢いセンターフォワード。プレーのあらゆる局面で発揮されるインテリジェンスこそ、彼の最大の長所だと思います。また、左足は正確そのもので、対戦相手にとっては脅威となるでしょう。ストライカーと言えども、得点機を逃すことはあります。ですがユンカーの場合、決定的なチャンスが来れば信じられないような確率でゴールを決めることができるのです。あまり知られていませんが、足の速さも彼の魅力のひとつですね」

 この評価から「決定力」「スピード」「知性」というキーワードを使ってユンカーの特長を改めて紐解いてみたい。

 まず「決定力」。ユンカーはこれまでリーグ戦で5得点をマークしているが、放ったシュート数は10。2本のシュートを打てば1本決めるという計算になる。25試合で27得点をマークしたボーデ・グリムト時代の1試合平均のシュート数は3.1、ゴール数は1.1で75分ごとに1得点を記録した。この数字だけ見ても、いかに決定力が優れているかが分かる。
 

 次に「スピード」について。ユンカーの主戦場はセンターフォワードではあるが、ボーデ・グリムト時代を含めたこれまでのキャリアでは、サイドハーフとウイングのポジションも経験したことがある。サイドアタッカーとしてのユンカーについて、トレセン氏はこう話す。

「(昨年10月に行われた)本拠地でのミョンダーレン戦で、右ウイングのフィリップ・ツィンカーナーゲル(現・ワトフォード)の負傷離脱により、ユンカーが代わりにこのポジションに入りました。その試合はボーデ・グリムトが2-0で勝利を収めたのですが、2得点を叩き出したのがユンカーでした(うち1得点はPK)。彼にとって最適なポジションは間違いなくセンターフォワードですが、必要とあれば両サイドでプレーすることも可能なのです」

 ユンカーは浦和加入時の会見で、得意なプレーやゴールパターンについて次のように語っていた。

「自分の強みはスピードとペナルティエリア内でのポジショニングだと思います。また、左足でのシュートは得意だと思っています。そして自分でゴールを取るだけではなく、ほかの選手へのアシストもできますので、ゴールを取りながら、アシストをしながらチームに貢献したいと思っています」
 
 ユンカーがペナルティエリア内で仕事をするタイプの選手であることは間違いないが、浦和のチーム事情によっては、快速を生かしたサイドからの駆け上がりで味方の得点をお膳立てする姿もこの先見られるかもしれない。

 最後は「知性」。これこそがユンカーの最大の武器だろう。相手の死角を突いて一瞬でディフェンスを外す動きなどから分かるように、頭脳で勝負するストライカーだ。そんな彼の特長は、プレーのみならずピッチ外でも表れている。

 先月28日、浦和のリカルド・ロドリゲス監督が他メディアによる取材で「彼(ユンカー)は特定の選手だけでなく、いろんな選手と良い関係性が作れている。日本語に関しては、自分より話せる」とコメントしてファンを驚かせた。そしてユンカー自身、5月中旬に行なわれたデンマークメディア「bold.dk」のインタビューで、入国後にJヴィレッジで隔離生活を送っていたときから日本語の勉強を開始していたことを明らかにしている。

 ユンカーは日本語を学んでいる理由について、「日本の選手には英語を話せる人がいないんだ。だけど自分としては日本の文化を尊重したい。ここで成功するためには何でもするということを示したいんだ。そういうことは大事だと思う」とコメントしている。
 

 そういえば、アビスパ福岡で主力として活躍するスウェーデン人のDFエミル・サロモンソンが、スウェーデン雑誌「Offside」の取材で異文化適応について語った際、サッカー選手が成功するうえで大切なポイントのひとつとして「環境に適応して社会のルールを理解すること」を挙げていた。

 ビジネスや教育などでは、国際舞台で活躍できる能力として「QC」(”Cultural Intelligence Quotient”の略)と呼ばれる概念が以前から注目されている。「文化の知能指数」「文化的知性」などと呼ばれ、異なる文化に効果的に対応できる能力を指す。ユンカーはこの「QC」が高いのかもしれない。

 ピッチ外のユンカーについて、トレセン氏はこんなエピソードを話してくれた。

「昨シーズン、ボーデ・グリムトの将来有望な若手選手が下部リーグのクラブにレンタル移籍することになりました。その選手によると、クラブを去る前日にある人物から電話がかかってきたそうです。電話の主はユンカーで、夕食に招待したいという誘いでした。ユンカーは一緒に食事をしながら、新天地に向かうにあたってのアドバイスをその若手に授けたのです。彼は自分の判断でそうしました。若い選手が新しい環境に飛び込むにあたり、自分のような年上の選手は自らの経験を共有する責任があるのだとユンカーは考えたそうです」
 
 またトレセン氏はユンカーのキャラクターについて、「自分がこうと決めたことは貫き通すタイプ。目標を成し遂げるためならどんな努力も惜しみません。直情的な決断をするところがありますね。そういう点は長所でもあり、短所でもあると思います」と話す。

 ユンカーが浦和に移籍するにあたり、紆余曲折があったのは多くの人が知るところだ。そんな彼に対して、ボーデ・グリムトのサポーターの中には良くない感情を抱いている人もいるという。推測の域を出ないが、ユンカーのそんな我の強さが移籍騒動に関係していたのかもしれない。だがそれでも、サッカーの世界ではそういうことは付き物だとトレセン氏は話す。

「(ボーデ・グリムトの)サポーターの多くはユンカーのことを愛していますよ。27得点・10アシストを記録してクラブの歴史的かつ熱烈なシーズンに貢献してくれたのですから。もちろん、ユンカーがボーデ・グリムトを去ったそのやり方には反発もありました。憎む人もいるでしょう。ですがそういうのもサッカーの一部であり、彼が生きているのはそういう世界なのです。ユンカーはボーデの人にとっていまだに大きな存在です。そして今では日本でビッグになっていますね。それがサッカーなのです」

取材・文●鈴木肇

【PHOTO】Jデビューからリーグ戦3試合連続ゴール!浦和の新ストライカー「キャスパー・ユンカー」!

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