【なでしこサッカー新時代】第2回 鮫島彩 (後編)|新チームに加入したベテランの決意「いろんなことへ、自分なりに挑戦してみたい」

【なでしこサッカー新時代】第2回 鮫島彩 (後編)|新チームに加入したベテランの決意「いろんなことへ、自分なりに挑戦してみたい」

大宮アルディージャVENTUSでプレーする鮫島選手。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 2021年、日本の女子サッカーは新たな時代に突入する。

 2020東京オリンピックは約2か月後に迫り、この秋には女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』が誕生する。なでしこたちは来るべき時に備えて、コロナ禍という難しい状況のなか、ひたすら前を向き、準備を進めている。

 節目を迎えるこの時だからこそ、これからWEリーガーとなる選手たちの声に耳を傾けてみたい。彼女たちが語る、なでしこサッカーの未来とはいかなるものか。

 第2回には、鮫島彩選手が登場。INAC神戸から、新参入する大宮アルディージャVENTUSに籍を移し、今やチームを率いる立場となったベテランとなった。

 海外の女子リーグも経験した33歳に、秋に開幕するWEリーグへの想いを聞いた。
  ――この秋に開幕するWEリーグについてお伺いします。プロリーグ発足の話を聞いて、最初に抱いた感想を教えてください。

 日本の女子サッカーが大きな一歩を踏み出したなと感じました。どうなるのかは、私たち次第。このきっかけを、しっかりと根付いたものにしていかなければと思います。

――プロといえば、鮫島選手は、アメリカのボストンブレイカーズ、フランスのモンペリエでも、プレーされています。同じプロの環境でも、海外と日本では違うものですか? 

 フランスでは、日本と同じようにサッカーをしながら働いている選手がいました。リヨンなどのチームは違いますが、モンペリエは、選手を取り巻く環境も状況も、日本のなでしこリーグにいる時と、そんなに変わらなかった印象です。

 ただ、アメリカでは、びっくりしました。ボストンでは自分の練習着も全てスタッフが洗濯してくれました。ほかにも、日本から来た私からすれば、恐縮してしまうような事ばかりでしたね。もう10年近く前のことですが、「これがプロのスタンダードなんだ」と思い知ったというか。

――日本ではなく、海外でプレーしたことで「良かった」と感じられたことはありますか。

 日本でいう、小・中学生くらいのサッカー少女たちが試合をたくさん見に来てくれていたんです。正確に数えたわけではないですが、パッと見てわかるほど、日本のなでしこリーグより、たくさんの子供たちがスタンドにいました。その当時(2010年代)、日本でスタジアムの最前列を女の子たちが埋め尽くしてくれたという記憶はないので「あ、この光景、いいな」と、強烈に印象に残ってます。
 

――今はコロナ禍でなかなか難しい面がありますが、WEリーグの運営サイドでも、サッカーをやっている女の子たちに、スタジアムに来てもらうための施策を考えているようですね。

 日本でスタジアムに足を運びにくい理由のひとつに、試合時間と子供たちの練習時間が被りがちなこともあるのかな。私自身もそうでしたから。だからこそ、いろんなアプローチを考えていかないといけないなと思いますね。

――ただ誘致するだけではない?

 例えば、「試合に来てください」とお願いするだけではなく、普段から地元の小学生のチームと関わりを持ったり、活動場所がなくなっている中学生たちに日頃からアプローチをしたり。そういう繋がりができれば、それをきっかけにスタジアムへ足を運んでくれる機会も増えるのかなとか…。きっかけづくりというのは、各クラブがもっと積極的にやっていてもいいんじゃないかなと考えています。

――サッカー少女たちへのより深いアプローチということですね。

 私が幼い頃も、ベレーザ(現在の日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がサッカースクールを開いてくれたり、試合を見に行ったりするだけで、大きな刺激を受けました。私たちにもその力があると信じているので、その機会を作りたい。そのためには、プレーや日頃の立ち居振る舞いも、子供たちが実際に見て、憧れてもらえるようにならないといけません。

――鮫島選手はWEリーグ開幕の今年、新しく創設された、「大宮アルディージャVENTUS」への移籍を決断しましたね。そのきっかけも教えててください。

 きっかけは、ひとつではないです。ただ、「新しくできるチームに入って、いろんなことへ自分なりに挑戦してみたい」という気持ちがありました。ピッチ内もそうですし、集客活動も、新しいチームだからこそ、選手たちが積極的に取り組める機会が多そうだと期待しています。

――新チームの顔ぶれも心強いですね。

 有吉(佐織)、阪口(夢穂)、上辻(佑実)、そしてしの(大野忍コーチ)さんもそうですけど、今まで一緒に戦ってきた仲間の存在は大きいし、心強いです。

――鮫島選手の移籍をきっかけに、今オフの話題は、大宮が中心になっていたように感じました。

 本当ですか?(笑) WEリーグ創設をきっかけに、各チームで多くの選手が移籍したので、少しでもリーグを盛り上げる要素になっているならうれしい。ただ、これからもっと話題になることを目指します!
 

――先ほど名前のあがった選手や、INAC神戸から一緒に移籍してきた仲田歩夢選手、スタンボー華選手など、中継役になることができる鮫島選手が中心になって、チームが一つにまとまりそうだと期待しています。実際は、どんなチームになりそうですか。

 正直、まだ見えていません。昔から一緒にやってきた選手もいれば、初めての選手たちもいる。まずはとことんコミュニケーションを取る必要があるし簡単なことではないと痛感しています。でも、充実していてとても楽しいです!

――PSMでの戦いが、今後の指標になりそうですね。

 とにかく伸びしろだらけのチームなんです。開幕までに、チームとしての完成度をどれだけ高められるか……。日々ベストを尽くして、少しでもいい結果に結びつけられるように努力し、準備を進めていきたいですね。

――ちなみに、先ほどお名前が出た大野忍さんのコーチ姿というのは、いかがですか。

 今でも人数が足りない時、ゲームに混ざってくれるんですけども…もう、本当にうまい! 「現役復帰して!」とお願いしたくなるくらいに(笑)。

 しのさんは現役時代からフィールドが俯瞰で見えていたんじゃないかな。人に教えるのがすごくうまくて、指導がとても分かりやすいんです。ものすごく頭の回転が速く、サッカーIQが高いので、選手たちは個々にアドバイスをもらっています。私自身も、しのさんの言葉で、新しい発見がありますね。

――鮫島選手も、いずれ現役を引退した後、指導者へ?

 どちらかというと、やってみたいのは、裏方、フロントですね。プロモーションだったり、集客だったり、ファンの方と接する部分に携わっていけたら。

――鮫島選手は、本当にファンとの絆を大切にしていると分かりました。最後に、WEリーグ初年度への抱負をお願いします。

 WEリーグの理念に、女性活躍という目標もあるので、同年代の女性だったり、サッカーをやっている女性だったり、新しい層にもアプローチして、ファンを増やしていけたらいいなと思います。もちろん、今までのファンの方たちにも引き続き応援してもらえるようなリーグになっていくといいなと思います。

 選手としては、ピッチ内でのプレーが一番ですが、ピッチ外の活動にも積極的に取り組んでいきたいです。

 WEリーグも私たちのチームも、新しい一歩を踏み出したばかり。ファン、サポーターの皆さんに応援したいと思ってもらえるチーム作りを目指し、全力を注いでいきます。


取材・文●西森彰

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