個々のアピールが見られたタジキ戦。1失点も、水際で落ち着きを維持した後ろの頑張りは好印象

個々のアピールが見られたタジキ戦。1失点も、水際で落ち着きを維持した後ろの頑張りは好印象

攻撃の迫力や守備の強度が今ひとつだったが、代表初得点の川辺(21番)など個々のアピールも見られた試合でもあった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



 3月のモンゴル戦、5月のミャンマー戦と記録的な大差で勝利したことで、観る側の感覚も少しおかしくなってしまったかもしれないが、タジキスタンは攻守の強度が大勝した2か国よりはるかに高く、組織としても個人としても簡単な相手ではなかった。

「前半から相手のプレッシャーも他の試合と比べたら良かったですし、少し難しい試合だった」

 ベンチから観ることとなった伊東純也もそう振り返る。それにしても吉田麻也、冨安健洋、酒井宏樹、遠藤航などA代表の主力がU-24代表に移り、さらに森保一監督の宣言通り、U-24との試合から大幅に入れ替わったなかで、連係面は仕方がないにしても攻撃の迫力や守備の強度など、多くの部分でベストメンバーに比べて物足りなさがあったことも事実だ。

 右サイドハーフで、鋭いプレーで1得点・1アシストを記録した古橋亨梧や、右サイドバックで先発し、橋本拳人による3点目をクロスでアシストしただけでなく、1点目と2点目の起点になった山根視来、ボランチで前半こそ慎重なプレーが目に付いたものの、徐々に存在感を見せて相手のミスから自身の代表初ゴールなる4点目を記録した川辺駿など、個々のアピールが見られた試合でもあった。

 浅野拓磨の1トップということで、大迫勇也とは違う裏を狙う形で縦パスを引き出そうとした。古橋による先制点は山根からの縦パスを浅野が裏で受けて、左足で狙ったシュートがGKヤティモフに弾かれ、リバウンドを流し込む形だった。ただ、全体として縦に攻め急ぐ度合いが強くなり、ボールを失うタイミングが早くなったことで相手の攻撃を受けて、守備のエリアが深くなる要因になっていた。
 
 それに加えて浅野、古橋、南野拓実、原口元気による前4枚のプレスにボランチやサイドバックがうまく連動できず、デュエルでも潰しきれないことで、前目に起点を作られたところから中谷進之介と昌子源の2センターバックとサイドバックの山根と左の佐々木翔、ボランチの二枚も下がって跳ね返すシーンが続いた。

 先制点からわずか3分後の失点は、先制点を決めた古橋の不用意なボールロストがきっかけにはなったが、一度跳ね返したセカンドの対応が甘くなり、余裕を持ったクロスを、ボランチから攻撃参加したパンシャンベに合わされてしまった。

 最後にファーで競り負ける形になった山根の対応も1つ問題だが、その前に日本が主導権を握っていない段階に相手の隙を突く形で先制してから、落ち着いてポゼッションするなりゲームコントロールできていれば、1-0で進行しながら追加点を狙う流れに持っていけただろう。

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 それでもシュート自体はこの1本しか打たれておらず、タジキスタンのチャンスメイクの精度不足に助けられた部分があるにせよ、水際での落ち着きを維持できたのは後ろの頑張りによるところが大きい。

 GK権田修一に加えて、代表での初先発となった中谷と2年ぶりの代表となる昌子のセンターバック二枚が、慌てることなくジャリロフとマルボエフへのボールを跳ね返したこと、さらに橋本のカバーリングも随所に効いていた。

 それでも、高い位置で攻撃する時間を長くして、相手ボールになってもプレスをかけて即時奪回するのが理想ではある。そこに関しては前半を通してうまくできていなかったが、嫌な流れになりかけていた40分に、古橋の飛び出しが勝ち越しゴールを呼び込んだ。中谷から大外でボールを受けた山根が左足で縦パスを古橋に通し、ダイレクトのマイナスクロスに南野が飛び込んでスライディングで押し込んだ。

「前半チャンスはそんなに多くなかったんですけど、そのなかで、ああいうクロスでニアに飛び込むとか、こぼれ球とか、そういう鼻が効く、ボックス内でのプレーでゴールにつながるんじゃないかという感じがしていた」

 そう振り返る南野。ワールドカップ予選における本田圭佑に並ぶ7試合連続ゴールは後半の良い流れにつながるゴールでもあった。後半もタジキスタンはデュエルの強さを生かしたタイトな守備と、後ろからの組み立てにドリブルを織り交ぜて来たが、前半に比べると橋本と川辺の守備位置が高く、南野に代わって投入された鎌田大地のタメ、右サイドに入った坂元達裕のクロスが攻撃に厚みをもたらした。
 
 南野と鎌田が“Wトップ下”のようになる普段と異なり、ストライカーの古橋とドリブラーの坂元が左右にポジションを取る状況で、川辺が前目に出て鎌田をサポートする形を取るようになったことも、攻撃の循環が良くなった理由の1つだろう。またディフェンス間でのボール回しも前半より良くなっていた。

「初めて組むペアや選手が多かったですし、最初はうまくいかなくても試合の90分を通してどんどん良くなっていくことは試合でも感じてましたし、試合前から想定はしていた」

 昌子がそう振り返るように、やはり戦術的な理解だけでなく、受け手と出し手の呼吸やリズム1つでもロジカルに解決できる部分と、選手の皮膚感覚を合わせることでしか良くならない部分がある。後ろのつなぎが安定してくれば、アタッカーも安心して高い位置で仕掛けることができる。守備の連動もそうだ。

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 そうしたなかで生まれた3点目は、左サイドバックの佐々木翔を起点に古橋、川辺、さらに鎌田が絡んでバイタルエリアで仕掛けに行くところで、相手のディフェンスに当たってこぼれたボールを橋本がフォローして、山根の折り返しを受けてゴール左に決めた。この時、浅野はセンターバック二枚を引きつけて手前にスペースを生んでいたが、ボランチ二枚と両サイドバックが絡んでのゴールは非常に意味がある。

 ボランチの一角が橋本から守田英正に代わってすぐの70分、タジキスタンの自陣でのボール回しのミスをうまく誘う形で、川辺が代表初ゴールを挙げる形で4-1として勝負が決した。そこから浅野に代わった谷口彰悟がボランチに入り、古橋が1トップに、川辺が左サイドに移る変則的なオプションをテストするなど、終盤はタジキスタンの強度も落ちたことでオープンな展開になった。

 そのなかで、坂元のクロスに右後方から追い越した山根が合わせに行くなど、それぞれの選手は持ち味を出し合うようなシーンも見られたが、昌子と中谷のコンビは安定しており、途中から入って来たアタッカーにもバイタルエリアで自由を許さなかった。昌子はもともとロシア・ワールドカップで吉田とともにディフェンスを支えた選手だが、ここで吉田、冨安、植田直通、板倉滉と欧州組が揃うセンターバック陣に割って入る資質は示したと言える。
 
 ただ、その昌子も「そこで1失点するか、そのままゼロでしのぐかっていうだけで違う」と振り返るように、やはり2次予選で初めて失点してしまった事実があり、U-24に回った選手を含む主力を脅かすほどのパフォーマンスを特にスタメン組が示せなかった。ただしセルビア戦、2次予選の最終節であるキルギス戦が残っている。

 おそらく多くの選手が2試合で一度はスタメンで起用されることになるが、これが終われば9月の最終予選となる。代表チームとしての結果はもちろん、できるだけ本来のベストメンバーとの差を詰めて、良い意味で激しい競争状態を作りながら最終予選に入っていけるようになれば理想的だ。

取材・文●河治良幸

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