【セルビア戦|戦評】グッときた国内組ふたりのアピール。川崎の鬼木監督も語っていた谷口のプレーぶり

【セルビア戦|戦評】グッときた国内組ふたりのアピール。川崎の鬼木監督も語っていた谷口のプレーぶり

セルビアを下し、安堵の表情を浮かべる谷口(写真左)。チームは1-0で勝利した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



[キリンチャレンジカップ2021]日本 1-0 セルビア/6月11日/ノエビアスタジアム神戸

 チームを率いる“ピクシー”ことストイコビッチ監督が語っていたように、セルビア代表は今遠征に主力を連れてこられたわけではない。招集できたのは若手中心で、真の実力とは差がある構成であった(アレクサンダル・ミトロビッチ<フルアム>、ドゥシャン・タディッチ<アヤックス>、セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ<ラツィオ>、ドゥシャン・ヴラホヴィッチ<フィオレンティーナ>らが不在)。

 ただ、それは日本にも言えたことで、エースの大迫勇也を怪我で、吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航をオーバーエイジ候補としてU-24代表に回したことで、キーマンを欠く陣容となっていた。その影響か、セルビア戦の前半はなかなか攻撃のスピードが上がらず。それでも後半にCKから狙い通りの形――ニアサイドでCB谷口彰悟が頭ですらして、ファーサイドの伊東純也が決める。このリードを守り、しっかり勝ち切った点は評価されて然るべきだろう。

 そしてなにより個人的に、グッと来たのは谷口彰悟とオナイウ阿道の奮闘ぶりだった。

 海外組と国内組。昔からのテーマであるが、今シリーズの取材現場では、改めてその違いに関する話題が語られるシーンが多かったように感じる。

 善し悪しの問題ではないが、「サッカーのトッププレーヤーが集う欧州でプレーをしている選手たちに学べることがある。でも、俺らだって負けたくない。上回れる持ち味を示したい」。国内組の想いはそういったところだろう。要は互いの特長を示して切磋琢磨し、激しい競争が、ひいてはチーム力につながることが理想である。

 もっとも国内組7人が先発した6月7日のタジキスタン戦は4-1で勝利したものの、主力陣の不在を嘆く風潮が強かったように感じる。




 
 そこで迎えたセルビア戦である。

「とにかく今日はすべて出し切ろうと思っていました」

 谷口は試合後に決意を口にしていた。今年7月に30歳になるCBは、ストイックに自らを高め続け、昨季からは王者・川崎のキャプテンを担ったが、なかなか代表にお呼びはかからなかった。今回が3年半ぶりの復帰であり、森保ジャパンには初招集である。

 それでも大きなチャンスだと理解していた男は、6月3日のU-24代表戦を含め、持ち味を大いに発揮する。4-3-3導入により相手との1対1の割り合いが広がった川崎で培った対人守備の強さを発揮し、自慢のフィード力も如何なく披露。シンプルに、それでもビシッと味方につなげる、配球力はさすがだった。そしてさらに光ったのはコーチングだ。

 優しい性格の谷口であるが、川崎では中村憲剛、小林悠らから、チームを叱咤激励する“厳しい声”の必要性も説かれ続け、時には的確に、時には檄を飛ばしてチームを引っ張る姿がセルビア戦でも見られたのだ。

 あれはU-24代表戦後のこと。川崎の鬼木達監督に、送り出した選手たちの代表の舞台でのプレーぶりの印象を尋ねたことがあった。すると指揮官は目を細める。

「ショウゴのプレーはひとつとっても、無難にやろうということがなく、しっかり自分のプレーを見せなくてはいけないという、プライドのようなものが見えました。なにか爪痕を残そうという意識を感じられましたよね」

 今季の開幕前、後輩の三笘薫との対談企画において、三笘へA代表入りの想いを訊いた際に、谷口はこう自らの想いも語っていた。

「僕もまだまだ代表に入れるように頑張りますよ。高いパフォーマンスを維持できれば、大舞台に立てるチャンスはありますし、このチームには日の丸を付けられる選手が集まっている。志高く、皆で磨き合いながらやっていきたいです」

 その目標を実現させ、今度は掴んだチャンスを逃さないために、吉田、冨安健洋のレギュラーCBふたりが不在のなかで、全力のプレーを示した谷口。それをできたのはこれまでの経験、そしてどんな状況でも諦めずに前を向き続けて培ってきた精神力の強さがあってこそだろう。

 そんな背景を考えながらセルビア戦のプレーを見ていると、やはりグッとくるものがあったのだ。

「俺だって負けてないぞ!! これだけできるんだ」

 そう想いを表現しているかのようなパフォーマンスは、好プレーを続けても、なかなか代表に呼ばれなかった、これまでの月日、蓄えたものがあったからこそ、実現できたようにも感じられ、そこには国内組の意地のようなものもあったのかもしれない。

 一方で驚きを含めつつ、評価を高めたのが、後半頭から登場したオナイウ阿道である。今シリーズは大迫の負傷を受けて、追加招集。セルビア戦がA代表デビューとなった。

 それでも冷静に持ち前の足もとの技術を生かしたポストプレーで周囲と連係しながら、自らもチャンスに絡んでいく。微妙な判定でオフサイドとなったものの、カウンターから右の伊東純也のグラウンダーのクロスをファーサイドで詰めてネットも揺らした。

 現在、16試合に出場して、Jリーグでは日本人トップの10ゴール(1位は12ゴールのレアンドロ・ダミアン)。そのFWとしての意地を、セルビア戦で見せたのだろう。
 
 前述したようにセルビアもベストメンバーではなく、よりレベルの高いチームと対戦した時に、このふたりが本来の実力を示せるかは分からない。“大迫不在”の明確な解決策を見つけられたわけでもない。

 それでもプライドを見せたふたりのプレーは非常にポジティブで、今後につながりそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集)
 

関連記事(外部サイト)