理にかなっていたオナイウと川辺の投入。中盤と前線の役割が明確になり、2列目が前向きに仕掛けられた

理にかなっていたオナイウと川辺の投入。中盤と前線の役割が明確になり、2列目が前向きに仕掛けられた

オナイウ(右)は前線で粘り強くボールを収め、川辺(左)は中盤の底で縦パスの配球役に。後半から投入された2人が効果的な働きを示した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



「できるだけ長い時間プレーしてほしいということで考えていて、前半を振り返った時に後半のスタートからプレーしてもらうことにして、2人に出場してもらいました」

 セルビア戦後、森保一監督がそう振り返るのは、後半頭から川辺駿とオナイウ阿道の2人を投入した理由についてだ。親善試合ではあるが、公式戦を想定したかのような選手交代だった。

 ドラガン・ストイコビッチ監督が率いるセルビアは4バックを用いたジャマイカ戦と異なり、3バックを採用。守備の時は5-4-1のブロックで固めてきた。

 ストイコビッチ監督は「縦に深いボールを出させないようにということを選手には言いました」と語る。ステファン・ミトロビッチを中心にバイタルエリアを締めてくるセルビアに対して、日本はボランチの橋本拳人と守田英正がボールは持つものの、有効な縦パスを鎌田大地や南野拓実に入れられず、トップの古橋亨梧への長いレンジのパスは合わないか収まらず相手ボールになった。

 セルビアはマイボールにするなり、ボランチのネマニャ・マクシモビッチや右ウイングバックで起用されたネマニャ・グデリから1トップのミラン・マカリッチなどにボールを入れてくる。日本が大きな危険に陥らなかったのは、植田直通と谷口彰悟のセンターバックコンビがほぼ問題なく撥ね返していたからだが、途中からボールを失うリスクを避けるようなボール回しが続き、後ろに重たくなるなかで橋本のところにプレッシャーをかけられてボールを失い、右サイドバックの室屋成が絞ってファウルで難を逃れるシーンもあった。

「自分たちが前から良いプレスをかけて、そこから獲った瞬間にボールを前につけないと。前につけるだけでビッグチャンスにできたシーンがあったので、ああいうところでポッと落ち着いちゃうとスピーディな攻撃ができなくなる」

 そう語るのはトップ下の鎌田大地だ。2列目の南野との距離感に関しては「良い関係が作れていた」というが、なかなか縦のボールが入らないなかで鎌田が下りてボールを持ち、そこから右サイドの伊東純也や室屋の仕掛けに持ち込むシーンから惜しいチャンスが生まれたものの、2人のボランチと鎌田、南野のところで数的有利が作れる状況をあまり生かせないまま前半を終えたことが、森保監督が早く動く理由になった。
 
 結果的に古橋と橋本が前半いっぱいで退く形となったが、古橋は裏抜けを狙いながらスペースでボールを受ける特長が出にくい相手で、そもそも鎌田と南野が前目でボールを持てない時点で良さが出なかった。

 橋本は日本がブロックの手前でボールを握る展開のなか、相手の守備を動かして間、間を突くことに長けたタイプではない。欧州の強豪が相手でも、攻守の切り替わりが多く発生して縦のアップダウンが増えたほうが良さは出しやすいだろう。
 

 ともかく縦パスを増やして高い位置に起点を作りたい森保監督の意図と、オナイウ、川辺の投入は理にかなったものであり、オナイウは前線で粘り強くボールを収めることで鎌田や南野に前を向かせる役割、川辺は中盤の底から縦パスの配球役になるとともに、ボランチの相棒である守田をより前目で鎌田に絡ませることで、南野を1トップのオナイウに近い位置でチャンスに絡ませる役割で効果的な働きを見せた。

 後半の立ち上がりにいきなり川辺のパスから右サイドの室屋が仕掛けてCKを獲得したことで、待望の先制点が生まれた。鎌田のキックをニアで谷口がそらして、ファーに伊東が飛び込む形でゴールを奪った。

 ストイコビッチ監督は「後半の立ち上がりに我々が失点してしまったことによって、ゲームの流れが変わりました。日本はよりいっそう主導権を発揮して、ゲームそのものをコントロールすることができるようになった」と振り返るが、日本側としては中盤と前線の役割が明確になったことで、2列目が前向きに攻撃を仕掛けられたことがより大きいだろう。

 前からのプレスもハマりやすく、セルビアが前半よりリスクを負ってパスをつなぎにくるところを逆手にとってカウンターを繰り出す場面も出せた。結果オフサイドの判定になったが、伊東とオナイウが2人で飛び出して、オナイウがゴールネットを揺らしたシーンは象徴的だった。

 さらに前半は自陣でボールを捌くしかなかった守田が高い位置で飛び出す伊東にラストパスを送るなど、インサイドハーフのようなポジショニングで存在感を見せたのは、後半の効果の表われだ。
 
 今回、攻撃面では前半の進め方に課題が見られたが、守備面は後ろの立ち位置を変えてくる相手に対するディフェンスが概ねハマっていたし、たとえばアジアカップ決勝のカタール戦のような混乱は見られなかった。昨年10月のコートジボワール戦でも似たスタイルは経験済みだが、立ち位置の変化や横ズレなどを多く使ってくる相手に対して、後手に回らない守備がチームとして身に付いてきているのは心強い。

 いずれにしても最終予選はセルビアほど屈強ではないが、守備をタイトに固めてカウンターを狙ってくる相手との戦いが多くなるかもしれない。セルビアも主力の大半が来日できなかったが、9月からのワールドカップ欧州予選に向けた底上げを目的とした今回の遠征だという。日本もU-24代表組や今後を見据えて途中離脱した大迫勇也がいないなかで、谷口や川辺、オナイウなど国内組でオプションになりうる選手たちがアピールしたことも含めて、非常に有意義な試合となった。

取材・文●河治良幸

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