谷口彰悟の序列が一気に上昇か? 国内組の底上げは収穫も、最終予選へ不安材料も残した森保ジャパン

谷口彰悟の序列が一気に上昇か? 国内組の底上げは収穫も、最終予選へ不安材料も残した森保ジャパン

セルビア戦の日本代表スターティングメンバー。写真提供:JFA



 2018年9月の森保一監督就任後、初の欧州勢との対戦となった11日のセルビア戦(神戸)。「自分がやってきたことが試される場。体格差の部分でもレベルの高い試合になる」と守田英正(サンタ・クララ)も言うように、国際経験の少ない面々がどこまで戦えるのか、チームの現在地はどのレベルにあるのかを測る重要なチャンスだった。

 指揮官も3日のU-24日本代表戦(札幌)から2人を入れ替え、古橋亨梧(神戸)を1トップに抜擢。2列目を右から伊東純也(ヘンク)、鎌田大地(フランクフルト)、南野拓実(サウサンプトン)という通常の並びに戻して挑んだ。

 アレクサンダル・ミトロビッチ(フラム)やルカ・ヨビッチ(フランクフルト)ら主力を欠くセルビアは5バックを採用。非常に守備的なスタイルで試合に入ってきた。日本は最終ラインでボールを回し、支配率を高めたが、肝心のタテパスが入らず、攻撃の形を見出せない。鎌田が「少しリスクを下げすぎて、後ろとか横にパスしすぎた」と反省の弁を口にしたように、消極性が目につく。守田・橋本拳人(ロストフ)の両ボランチがリズムを作れず、中盤の数的優位を十分に生かせなかったこともあるが、いい距離感で空いたスペースを有効活用しながらリズミカルな戦いという理想とは程遠い展開。シュート2本というのは、さすがにいただけなかった。

 そこで、森保監督は後半頭から川辺駿(広島)とオナイウ阿道(横浜)を投入。彼らが非常にいいスパイスとなってゲームが動き出す。伊東の開始3分の決勝弾につながったCKは川辺が室屋成(ハノーファー)に素早く展開したところから得たもの。鎌田のクロスから、谷口彰悟(川崎)がニアで的確に落とし、ファーポスト付近で伊東がボレーで合わせた。
 
「相手がデカいんで、ニアでフリックして、ファーで俺と直通(植田=ニーム)が詰める形を狙っていた。それがうまくハマりました」と伊東もしてやったりの表情を浮かべたが、この一撃はチームに安堵感をもたらした。その後も川辺とオナイウはチームにうまく適応。相手の運動量や強度が下がったのも災いし、特に最前線のオナイウは巧みにボールを収めながら起点を作っていた。

「オナイウはすごく身体を張ってくれて、ポストプレーもしましたし、ああいう試合でポストプレーでタメを作ってくれるかどうかは後ろの選手にとってはすごく助かる」と長友も新戦力効果を実感。A代表初キャップとは思えない存在感を示すことに成功した。

 今回は大迫勇也(ブレーメン)が負傷離脱し、前々からの課題である「脱・大迫」の攻撃の形を模索することがひとつの重要なテーマだったが、オナイウはこれまでテストされた浅野拓磨、古橋よりも有効な駒になり得る可能性を示したと言っていい。
 

 もうひとつの収穫は、ベテランDFの谷口だ。前述の通り、伊東の値千金のゴールをお膳立てしたうえ、最終ラインを確実に統率。屈強かつ大柄なセルビア相手に引けをとらない読みと対人守備を見せたのだ。

「今日は全てを出し切ろうと思ってやりました。相手のシステム(5バック)とこっちのプレスの生き方を多少考えてやらないとハマらなかったし、ディフェンスラインは強気にコンパクトにして、後ろの4枚がスライドして前の選手を引かせずにボールを奪うことにトライした。手応えを感じました」と間もなく30歳の大台を迎えるセンターバック(CB)は自信を覗かせた。そのあたりは王者・川崎フロンターレで積み上げてきた経験値と安定感が大きいのだろう。

 今回の6月シリーズが始まる前は、「欧州組と2018年ロシア・ワールドカップ(W杯)組の下の序列」と目されていた谷口だが、植田や昌子源(G大阪)より上の扱いになるかもしれない。9月から始まる2022年カタールW杯最終予選では、コロナの影響で欧州組を呼べないケースも考えられる。それだけに国内組に新リーダー候補が浮上したのは明るい材料。攻撃のビルドアップやパス出しの部分含めてこの先も自分自身を研ぎ澄ませていってもらいたい。
 
 川辺、オナイウ、谷口らが最終予選生き残りに好アピールを見せたことは、前半大苦戦を強いられたセルビア戦の確かな収穫だ。しかしながら、森保監督がここまで積み上げてきたチームの骨格がガラリと変わりそうな頭抜けた存在が出てきたかといえば、そうとも言えないのが実情だ。

 守備陣に関しては、権田修一(清水)、酒井宏樹(浦和)、冨安健洋(ボローニャ)、吉田麻也(サンプドリア)、長友佑都(マルセイユ)の顔ぶれは鉄板だし、ボランチにしても遠藤航(シュツットガルト)抜きには語れない。2列目もセルビア戦に先発した伊東・鎌田・南野トリオが現在のところはファーストチョイスであり、最前線もまだまだ大迫の存在が必要不可欠だ。
 

 序列が明確に定まっていないのは、遠藤航のパートナーくらいかもしれない。今回の守田は正直、物足りなさを感じさせたし、橋本も強度は世界に通じるものの、パス出しのミスが多すぎたり、雑さが目立った。川辺もアグレッシブさやスケール感の部分で未知数なところがある。そういった長所短所を踏まえると、U-24世代の田中碧(川崎)らの融合を待つという選択になるかもしれない。
 
 ボランチ以外のポジションも、そのくらい混とんとした状況になるのが望ましい。ひとりが抜けたらチーム力が大幅にダウンするようでは、最終予選は戦えないからだ。だからこそ、A代表の面々は6月シリーズラストのキルギス戦(15日吹田)でのさらなる猛アピールを見せることが重要になる。

 セルビア戦でポジティブな印象を残した谷口、川辺、オナイウは評価を確固たるものにしなければならないろうし、今ひとつの出来に終わった古橋や橋本らは奮起が求められる。途中出場組の浅野や原口元気(ウニオン・ベルリン)ももっと目に見える仕事をしなければ、U-24世代に取って代わられる可能性もないとは言えない。そんな危機感を持って、彼らには最終予選前ラストチャンスでできることを全てやり切ってほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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