「いっそのこと日本代表はフロンターレを軸にしてみたら」。原副理事長が語る“強すぎる川崎の存在意義”

「いっそのこと日本代表はフロンターレを軸にしてみたら」。原副理事長が語る“強すぎる川崎の存在意義”

勝負どころで貴重なゴールを決める小林。鹿島戦の決勝弾は感涙ものだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 今季のリーグ戦で開幕から21戦無敗のJ1新記録を打ち立てた川崎フロンターレ。現時点でライバルらしいライバルが見当たらず、タイトルレースの興味がやや薄れてきた半面、“強すぎる川崎”への注目度は明らかに高まっている。彼らがJリーグで絶対王者になりつつある現状を、原副理事長はどう捉えているのだろうか。

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 今季の川崎フロンターレは本当に強い。リーグ開幕から21戦無敗で、2位の名古屋グランパスと勝点18差(6月13日現在)。ここにきてライバルらしいライバルが見当たらないのは寂しいですが、一方で“川崎=絶対王者”というステータスが確立されつつある現状はポジティブに捉えています。

 というのも、数年前まで、Jリーグは「どこが優勝するか分からない」と言われていましたよね。それが「面白い」と評される一方で、「どんぐりの背比べ」と批判的な見方をされるケースもありました。世界的に注目されているリーグ戦には必ずビッグクラブがいます。そう考えると、川崎がいわゆるビッグクラブになってくれればJリーグ人気も高まる可能性があるわけで、その意味で川崎に注目しています。

 楽しみなのは6月開催予定のAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)。このアジアの舞台でどれくらいやってくれるか。そういうワクワク感が今の川崎にはあります。「国内で勝ててもACLでは勝てない」という悪評をクラブもそろそろ払拭したいはずで、相当気合いを入れて大会に臨むのではないでしょうか。いずれにしても、ここで力を示せば“川崎強し”の印象はより濃くなるわけですから、彼らにとって重要なコンペティションであることは間違いありません。
 
 正直、今季の川崎がJリーグでここまでの強さを見せつけるとは予想外でした。「昨季限りで引退した中村憲剛選手の穴埋めは?」「大島僚太選手を怪我で欠いて大丈夫?」と個人的に心配していましたが、どれも杞憂に終わっています。むしろ、ここまでは危なげない印象のほうが強いです。好調の要因をひとつ挙げるなら、選手層。3月の代表戦で森保ジャパンのメンバーに選ばれた脇坂泰斗選手ですら、川崎ではポジションを約束されていない。戦力だけなら、J1リーグで頭ふたつ分ぐらい抜けています。

 チーム内の激しい競争もポジティブに映ります。ただ試合に出ているだけではダメ、結果を残さないと次はないという緊張感が、選手一人ひとりから伝わってきます。今季は途中出場が多い小林悠選手の表情を見てもそうですよね。「俺が決めてやるんだ」って、顔に書いてありますから(笑)。

 小林選手は今季ここまでリーグ戦で9ゴール。限られた出場時間で、巡ってきたチャンスを高い確率でモノにする決定力はさすがですよね。同じFWでは、昨季までいまひとつフィットしていなかったレアンドロ・ダミアン選手が覚醒して大暴れしています。遠野大弥選手も良い仕事をしているし、旗手怜央選手も複数のポジションを難なくこなすなど、チームの中でしっかりと機能している印象です。このタイミングでクラブワールドカップがあって、そこに川崎が出場していれば……と、そんな期待感を抱かせてくれるほどチームとして洗練されています。

 もっとも、チームは生物ですから、何かをきっかけに調子を落とす恐れはあります。6月に代表戦を戦う選手がいて、そのあとにはACLがある。ここで疲労を蓄積するようだと、リーグ後半戦は苦戦を強いられるかもしれません。しかも、夏に海外移籍する選手がいれば……。今季のJ2リーグでは、開幕から13戦無敗だったアルビレックス新潟が14節に初黒星を喫すると(相手はFC町田ゼルビア。結果は1−2)、続く試合も京都サンガF.C.に敗戦と失速した例もあります。ですので、何が起きても不思議はないのです。

 夏場以降も川崎が上手くいくかは、鬼木達監督の手腕次第でしょう。あらゆる事態を想定して、チームのポテンシャルを引き出せるか。ある意味、真価が問われますね。後半戦は大島選手も戦列に復帰するはずなので、どんなメンバーで挑むのか楽しみな部分もあります。
 

 かつて「プロスポーツは根付かない」とも言われた川崎の地で、今、フロンターレが輝いています。地元密着を早い段階から意識し、『シャレン!』(社会連携活動)にも積極的。アカデミーではすでに若い選手が上手く育っていますし、クラブとして良い流れに乗っています。J2時代から積み上げてきたものが花開いたという感じで、「川崎でプレーしたい」という選手が今後は増えるのではないでしょうか。それこそ、今季のリーグ戦で連覇を成し遂げ、ACLなどカップ戦でもタイトルを獲得すれば、ビッグクラブへの地歩を固めそうです。

 いっそのこと日本代表は川崎のメンバーを軸に構成してみたらと、そんな想いもあります。かつてスペイン代表がバルセロナ勢、ドイツ代表がバイエルン勢で主力を固めたやり方はひとつの理想で、それを日本代表でやってみても面白そうですよね。今の川崎はそれほど魅力的で、勢いもあるクラブなのです。
 

 そんな川崎が負ければ、それだけでビッグニュースになるわけで、他のクラブには頑張ってもらいたいです。私が監督なら、ガチガチのマンツーマン戦術で戦います。そこまで守備が強いわけではないので、前からプレスをかけてアグレッシブにプレーできれば勝機を見出せるはずです。腰が引けたような戦い方は絶対にダメ。中途半端に守ろうとしたらやられてしまいますから、ガンガン行ってもらいたいです。

 「川崎に勝つ」という分かりやすい目標ができれば、お客さんも試合に観に来るはずです。ホーム、アウェーにかかわらず、川崎戦の注目度が高まればプラチナチケットになってもおかしくない。川崎だけ特別視するのはどうかという意見があるのは承知していますが、スタジアムを常に満員にできるようなクラブが誕生するのはJリーグの未来を考えるうえでも良いことだと思います。

<プロフィール>
原 博実(はら・ひろみ)/1958年10月19日生まれ、栃木県出身。現役時代はFWで早稲田大、三菱重工などで活躍。日本代表歴は75試合・37得点。現役引退後、浦和、FC東京の監督を経て日本サッカー協会で技術委員長なども務めた。16年3月にJリーグの副理事長に就任し、現在に至る。

取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

※本稿は、サッカーダイジェスト6月24日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を加筆したもの。

【PHOTO】笑顔と力強い手拍子で後押しした川崎フロンターレサポーター!
 

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