英国人記者が見た、スコットランドの予想外の敗北。ファンの“激情”は因縁のイングランド戦で最高潮に【現地発】

英国人記者が見た、スコットランドの予想外の敗北。ファンの“激情”は因縁のイングランド戦で最高潮に【現地発】

シックの2発に沈んだスコットランド。主将のロバートソン(手前)も肩を落とした。(C)Getty Images



 6月11日に開幕したEURO2020で、13日には23年ぶりにビッグトーナメントに復帰したスコットランドが、ハムデン・パークでチェコと対戦した。

 彼らが最後に出場したビッグコンペティションは、1998年にフランスで開催されたワールドカップだ(日本がW杯初出場を叶えた大会)。初戦の相手はサッカー大国のブラジル。当たり前のようにスコットランドは敗北(1-2)したが、選手たちはタータンチェックのキルトを着用して入場し、対峙したセレソンは「信じられない」という表情を浮かべていた。

 今回のEUROで、スコットランドはホームであるハムデン・パークで2試合を行なう。1万2000人のファンがスタジアムに集うことは、大きなアドバンテージになる。

 久しぶりの国際舞台ということで、チームの雰囲気も良かった。リバプールでプレーする主将のアンドリュー・ロバートソンは、チーム関係者全員に「Irn Bru(スコットランドの有名なソフトドリンク)」、ショートブレッド、「Tennent’s Lagar(スコットランドのビール)」の詰め合わせをプレゼント。さらに、アーセナルのキーラン・ティアニーはこのセットに、1個300ポンド(約3万9000円)の、バング&オルフセンのヘッドフォンを加えたという。

 選手やスタッフは大喜びし、代表チームは結束力を高めていた。ちなみに、ジョニーウォーカーのブルーラベルのボトルも入っていたと報じられているが、選手たちは祝杯のためにとっておくことで一致したようだ。
 
 戦力としても十分に揃っていた。ロバートソン、ティアニーに加えて、ジョン・マギン(アストン・ビラ)、スコット・マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)など、プレミアリーグで活躍している選手も多い。少なくとも、初戦では勝利を手にするだろうと楽観的な雰囲気も漂っていた。

 だが、試合には0-2で敗れた。パトリック・シックの素晴らしいゴールを目の当たりにしたファンは頭を抱え、天を仰いだ。ため息があふれ、一部のファンは暴動とまではいかなくとも、街中で大声で叫ぶ姿などが、ニュースで何度も報じられた。

 この試合のチケットを取れなかった何千人、何万人ものファンは、ビアガーデンやパブで試合を観戦し、グラスゴーのパブリックビューイングにも約6000人が殺到した。たった1万2000人しか入場できなかったハムデンで、国歌である『Flower Of Scotland』が耳をつんざくような大合唱であったことからも、ファンがどれだけの熱意で試合に臨んでいたのかは、想像に難くない。
 

 この結果、第一戦を終えて、スコットランドはグループステージで最下位となった。残り2試合はイングランドとクロアチアだ。早くも決勝トーナメント進出は苦しい状況に陥っている。

 チェコ戦後、スティーブ・クラーク代表監督は「内容は劣っていなかった。両者の間にそれほど大きな差はなかったと思う」と肩を落とし、フットボール界の“いたずらな運命”を嘆いた。

 次に対峙するのは、同じ英国のイングランドだ。歴史的に因縁のカードであり、2017年にロシア・ワールドカップの欧州予選で対戦した際には、ファンの間で流血騒ぎに発展した。お互いを罵り合い、パブで椅子が跳ぶ光景は、熱意の表われとはいえ、褒められたものではない。

 この状況下でも、敵地ウェンブリー・スタジアムでは6000人のファンが観戦するとみられている。だが、実はその倍の1万2000人、いや2万人が移動するという見解が発表され、現地ではトラブルが懸念されている。「チケットを持たないファンはウェンブリーに近づかないように」と警告は出たが、パブリックビューイングの場が提供されていないため、スタジアム周辺に集う可能性は少なくない。
 
 実際に、キックオフに間に合う時間帯のグラスゴーからロンドンを行き来する電車15本は、月曜日までのすべてが完売し、エジンバラからの列車もほぼすべてが満席状態だ。彼らは金曜日にロンドンで、スコットランド代表への大きなエールを送ろうとしている。もう止める方法はない。試合だけではなく、こちらも“大荒れ”の予感がする。

 ちなみに、チェコ戦に出場しなかったティアニーは、イングランド戦には間に合う可能性が高いようだ。私が最も期待しているのは、20歳になったばかりのMFビリー・ギルモア。チェルシーに所属する俊英で、見ていてスカッとするプレーをするので、もし出場すれば、ぜひ日本のファンにも注目してもらいたい。

 DFハリー・マグワイアが復帰する見込みのイングランドと対峙するスコットランドが、素晴らしいプレーを見せてくれることを期待したい。もちろん、ファン同士の諍いはなければそれに越したことはない。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

 

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