「もっと楽しむことを考えてもいいんじゃないか」浦和・小泉佳穂に届いた柏木陽介からのメッセージ

「もっと楽しむことを考えてもいいんじゃないか」浦和・小泉佳穂に届いた柏木陽介からのメッセージ

序盤戦から起用が続いた小泉だったが、なかなか結果を得られず苦しんだ。そんな時に柏木から送られた言葉とは…。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



「勝たせる能力がJ1レベルではない」
「個人としてですか? ん〜あらゆる面で足りない」
「足りないところばかり。まだまだ」

 今月16日に開かれたオンライン会見で浦和レッズMF小泉佳穂は愛好する将棋の長考のように腕を組み、首を傾げ、言葉を選び、刻むように語った。

 小泉は今季ブレイクした選手のひとり。J2FC琉球から完全移籍し、難解なロドリゲス戦術のもと、ボランチ・トップ下でリーグここまで17試合全試合に出場。うち16試合に先発(6月18日現在)と、主力となった。

 司令塔としての存在感、期待感、今後の伸びしろは誰もが認めるところ。対戦チームが要注意選手に挙げるほどになった。

 急成長する小泉にリカルド・ロドリゲス監督は「彼は“サッカーを生きる”と言える選手。向上心もあり、常に全力を出している」と評価している。

 にもかかわらず、理想の高さの裏返しか、小泉は自身のプレーにまったく納得いっていない。

 いま思えば、小泉の抜擢は当初のプランから外れていたともいえる。シーズン前の見立てでは柏木陽介を起用したのち、戦術にフィットする時期を見計らい小泉を起用すると考えられた。しかし柏木がキャンプ中の規律違反のため、全体練習の参加を許されず、結果、3月にJ3FC岐阜に移籍。司令塔不在のなか、その役割を急遽、小泉は担わざるを得なくなった。

 その時小泉の胸中にあったものはチャンスが巡った喜びか。背負う覚悟か。それとも戸惑いか。
 
「正直、言わせてもらうと……」ゆっくり話し始めた。
「そもそもレッズの関係者もサポーターの方も陽介さんの控えとも、戦力としても考えていなかったと思う。逆に期待されていない分、やりやすかった。ハードルが低かった分、やりやすかった」

 さらに「キャンプで試合に出られるかもしれないなと思い始めていて……。最初のうちというか今も自信はないけど、やれるかどうか分からないけど、できることをやるしかないと割り切って臨んだ」

 こうして始まった今シーズンだったが、リーグ開幕のFC東京戦で1-1のドロー発進となったものの、続く2節・鳥栖戦(0-2)、4節・横浜戦(0-3)、6節・川崎戦(0-5)と2月、3月の8試合の戦績は1勝4敗3分けとうまくはいかなかった。
 
 そんな川崎戦後のある日、小泉にメッセージが届いた。送り主は柏木陽介だった。文面にはこう記されていたという。

「もっとやらなければならないとか、チームのためとかになりすぎず、『自分の得意なプレーを出すこと。もっと楽しむことを考えてもいいんじゃないか』そんなメッセージをもらった」(小泉)

 思えば柏木がそうだった。自分がチームを勝たせる。そう意気込むあまり、敗戦を必要以上に背負いこみ、自身の不甲斐なさに落ち込む姿をしばしば見た。
 試合後のミックスゾーンで「得意なプレーを出す」「もっと楽しむ」と自分に言い聞かせるように繰り返した。
 
 またこのメッセージは、小泉と自分をどこか重ねていた柏木から、大敗にうちひしがれるであろう小泉へのアドバイス。それとともに、チームを離れてしまった申し訳なさと、これからの浦和を託す、そうした強い思いがあったはずだ。

 これがすべてを変えたわけではないが、その後の活躍を考えれば、小泉には大きなキッカケとなったのは間違いない。

「課題に対してひとつずつクリアすることでしか、上にもあがれず、強くもなれない」

 一歩ずつ、踏みしめるように小泉佳穂は「浦和の太陽」に近づく。

取材・文●佐藤亮太(レッズプレス!!)

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