【FC東京】代表定着への鍵は“二刀流”。小川諒也は大分戦で進化を示せるか

【FC東京】代表定着への鍵は“二刀流”。小川諒也は大分戦で進化を示せるか

大分戦ではどんな活躍を披露するのか。小川の判断、プレーの選択に注目したい。写真:田中研治



 2021年6月27日に味の素スタジアムで行なわれる大分戦(J1リーグ第20節)は、小川諒也の進化した姿を目撃できる試合になるかもしれない。

 3月に続き5、6月の代表活動にも参加した24歳の左サイドバックは、自身のサッカー人生においてひとつ大きな局面に差し掛かっている。クラブとはまた違う刺激を代表活動で得られれば新たなモチベーションにつながり、その刺激はまた選手としても人間としても成長を促す原動力ともなり得るだけに、飛躍へのきっかけを掴めたかという点での大きな局面だ。

 今回の代表活動を終えた当の小川もこう話している。

「より高いレベルでプレーできるので、ものすごくスピード感があります。海外組と一緒にやれるのも良い経験で、彼らからはいろんな話も聞けた。そういう環境で日々トレーニングできたのは良い刺激になりました」

 スピード感を求められたのが状況判断の部分だ。

「今回出場させてもらった4試合(相手はU-24代表、タジキスタン、セルビア、キルギス)以上に、練習での紅白戦のほうが激しかったです。プレー精度はもちろん、素早い判断が求められました。トラップしてから考えているようではダメで、そこの意識はだいぶ変わってきました」

 起用された4試合でも、相手のリズムに合わせるのではなく、「スピード感」を重視。結果的に小さなミスは散見されたものの、日本が5-1と勝利したキルギス戦(カタール・ワールドカップ・アジア2次予選)では左サイドのクロスからオナイウ阿道のゴールをアシストするなど、アピールできた部分はあった印象だ。

「自分自身、目に見える結果にこだわっていたので、1アシストとはいえ得点に絡めたのは嬉しかったです」
 
 ただ、フル出場したキルギス戦では状況判断やパスコースの甘さも目立ち、そこを反省している自分もいる。カタール・ワールドカップのアジア最終予選で対戦国のレベルが格段に上がる点も踏まえると、「僕のところにボールが入る前から“次のアクション”を考えないといけない」。

 日本代表に招集される前と後で、意識の変化はある。それが進化を遂げるうえで重要なファクターになり得るが、プロである以上、求められるのは結果。小川はFC東京と日本代表で目に見える結果を残さないと、いわゆる一流にはなれない。ただ、ここで触れておきたいのは日本代表とFC東京が違うスタイルで戦っている点。そうした状況下で代表でもクラブでもハイパフォーマンスを維持するのはなかなかなミッションに映る。

「代表では自分が走ったところにタイミングよくボールが出てくるとか、オーバーラップを仕掛けた際に上手く使ってくれるとか、主に受け手としての役割を担っています。クロスを上げる時もゴール前に人数が揃っているので合わせやすいですね。キルギス戦でアシストしたシーンも、ニアとセンターにひとりずつ走り込んでくれていて、ファーにオナイウ(阿道)選手がいましたから。そうなればクロスを入れやすいです。

 一方でFC東京では1トップのディエゴ(・オリヴェイラ)がサイドに流れると、クロスをピンポイントで合わせないといけない場面が多いです。役割的にも受け手というより出し手になる傾向が強いですよね。僕のところからディエゴに出したり、ゲームを作る側の仕事をしている印象です」
 
 どちらが良い悪いではなく、その両方への対応が今の小川には求められるわけだ。エゴイストではおそらく務まらないサイドバックというポジションの性質上、なにより重要なのはチームの組織をどうスムーズに機能させるか。出し手の時は最高のパスコースを探す、受け手の時は相手の急所となるポジショニングを意識する、いずれにしても状況判断の早さがキーファクターになる。
 

 その意味で、代表活動後の小川が楽しみだ。

「リーグ戦は中位に甘んじ、天皇杯は敗戦。ルヴァンカップは勝ち残っていますが、クラブがまだ本調子ではないなかで自分に何ができるか。森重(真人)選手ら代表を経験してきたプレーヤーとともにチームを盛り上げないといけません。代表活動での経験をクラブに還元して、ピッチでは自分が違いを作っていかないと。ここから盛り返したいという気持ちは強いです」

 「そろそろ(小川)諒也がFC東京を引っ張ってもらわないと」という森重の期待にも応えたいと小川は思っている。

「代表でバリバリやっていた頃の森重選手は確かにFC東京を牽引していました。そういう存在に近づかないといけませんが、まだまだ森重選手に頼っている部分があります。そういう状況を打破するために自分がもっとリーダーシップを持ってやらないといけません」

 日本代表に選ばれるようになって、「試合に出ているだけではダメ」という感覚も芽生えてきている。プロ1、2年目の頃は味方にサポートしてもらったが、今は違って支える立場。若手がFC東京で気持ち良くプレーできるような環境を作るのも、小川の仕事になる。

 周りを引っ張るにはなによりプレーで威厳を示さないといけない。代表選手ならなおさらだろう。小川本人も「代表選出されたことでメディアやファン・サポーターの見る目が厳しくなるのは分かっています」と話している。ただ、今季の前半戦を振り返ると、彼が「日本代表」の肩書きに相応しい活躍をしていたかと言えば……。力強く「イエス」とは頷けない。サッカー選手としての素質は抜群なはずなのに、それをまだ十分に発揮できていない印象なのだ。
 
 例えば0-3で敗れた横浜とのホームゲーム。52分、小川は対峙したエウベルにあっさり抜かれて、結果的にチームは3ゴール目を奪われている。

「横浜戦での自分の出来は『これで日本代表なの?』と批判されても当然のレベルでした。エウベル選手との1対1の場面では最初の判断で迷ってしまいました。一発目で潰しにいくのか、引いて構えるかで。割り切れず、結果的に中途半端な対応になってしまったので反省しています」

 やはり進化へのポイントは“状況判断”になる。

「Jリーグのテンポに合わせるのではなく、日本代表での早いテンポを自分の身体に沁み込ませないといけません。高いレベルを求めてやっていかないとダメですね。だからFC東京の練習ではチームメイトにも高い要求をしていきたいです。普段の練習から厳しくできていれば試合で焦ることも、迷うこともなくなるはずなので」

 ならば、やはり小川に求められるのはリーダーシップである。

「自分で代表でのテンポを示せれば、周りもそこを目指すようになります。だから、どんどん発信していきたいです。その結果、FC東京がレベルアップできたら嬉しいです」
 

 「出し手」と「受け手」という二刀流をこなしながら状況判断を磨き、FC東京ではリーダーシップも発揮する──。こうしたミッションをこなすのは、小川に言わせれば「代表選手の宿命」となる。

「代表チームでは代表チームの、FC東京ではFC東京のサッカーで持ち味を出さないといけません。そこで活躍できれば先の道は開けないので、とりあえずクラブの試合で結果を残さないと」

 東京五輪前、最後のホームゲームが6月27日の大分戦だ。そのあと、怒涛のアウェー7連戦が控えていることを考えれば、大分に勝って弾みをつけたい。

「アウェーまでファン・サポーターが来るのはまだまだ難しい状況ですからね。ホームではしっかりと勝ちたいです。大分戦当日も味スタでたくさんの元気や勇気をもらえるだろうし、その点でファン・サポーターとホームスタジアムで一緒に戦えるのは心強いです。FC東京が躍動して勝利する姿を見せたいです」
 
 コロナ禍の影響でリモートマッチ(無観客試合)を経験し、改めてファン・サポーターの有難さを知った小川が、「いつもFC東京を支え、応援してくれるみなさんのためにも」と大分戦での勝利を誓う。日本代表に定着するためにも、ここからが本当の勝負になる。

 D・オリヴェイラやアダイウトンら外国籍選手に頼らない攻撃をFC東京が展開するには、小川のチャンスメイク、セットプレーでの貢献も不可欠になるだろう。それは本人が誰よりも理解している。

「自分がチームの中心にならないとダメですね。苦しい時に頼られる存在になりたいと常々思っています」

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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