“リアル”南葛SCが挑む「サッカーと仕事」第3回??布施周士が証言するポジティブな相乗効果

“リアル”南葛SCが挑む「サッカーと仕事」第3回??布施周士が証言するポジティブな相乗効果

南葛SCの布施はボランチとして活躍。バリュエンスホールディングスの社員としても勤務に励んでいる。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)



 南葛SCの岩本義弘GMは「サッカー選手としての能力が高いということは、社会人として仕事をする上の能力も高い」と言う。

 パートナー企業・バリュエンスホールディングス株式会社の嵜本晋輔社長は「本人たちは気付いていないだけで間違いなく成長できるポテンシャルがある」と言う。

 これらの言葉を実践しようとしているのが南葛SCの布施周士だ。新たな試みを推進するクラブと企業で働いた結果、新たに見えてきたものやもたらされた影響は、たしかにあった。

 当事者だからこそ語れる「サッカーと仕事」の難しさと楽しさ。待っていたのはつい忘れてしまいがちな「原点回帰」だった。

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 南葛SCを通して紹介してもらい、昨年の9月に現在はパートナー企業となったバリュエンスホールディングス株式会社に就職したのがボランチでレギュラーを張る布施周士だ。

 2020年に南葛SCへ移籍する前はJFLの奈良クラブに所属。縁も所縁もなかった東京・葛飾でプレーヤーを続けるにあたって、働き口を探す必要があった。

「最初は建設会社で働きだしたのですが、現場が遠かったこともあり朝4時半起床で5時には家を出ていました。そして仕事後チームの練習に出て帰宅するのが21時や22時。そして翌朝また4時半に起床の繰り返し。早起きは得意ですし、充実感や達成感も感じられたのですが、徐々にサッカーへ力を注げなくなって。それで辞めさせていただきました」

 現在は、ブランド品や骨董・美術品のリユース事業を展開するバリュエンスホールディングス株式会社のなかで、ブランド買取を行なう「なんぼや」の北千住マルイ店でコンシェルジュ(鑑定士)を務める。

「北千住の店舗が10時に開店するので9時半には出勤。自宅からは電車で10分ほどの距離です。4時半起床だった頃と朝の感覚が全然違うので本当に助かっています。そして17時ぴったりに仕事を上がって練習に向かわせてもらっています。周囲の先輩方にもご理解をいただき、少し仕事が残っても代わりにやっていただけたり、何を聞いても一から教えてくださいますし、その上週末のサッカーの試合に向けて応援の言葉をいただいたり。本当にありがたいです」

 コンシェルジュには、持ち込まれた商品を鑑定する眼力が求められる。これまでの生活と無縁だったブランド名は、最初読み方すら分からなかった。それでも先輩たちから懇切丁寧に教えてもらい、徐々に知識と経験を増やしている最中だという。
 

 奈良クラブでプレーしていた時は保育士の手伝いをしていた。そして南葛SCに来てから建設会社と現在の会社とで社会人経験を得た。これまでの経験からいかに仕事がサッカーに影響を及ぼすかを体験している。

「1日24時間のなかで考えると、サッカーより仕事をしている時間の方が長いですよね。それだけウエイトを占める仕事で気持ちをいかに充実させるかで、サッカーにも影響してくると思います。やはり時間は大きいです。以前まではギリギリに到着してすぐに練習していましたが、今は多少余裕を持って練習場に来られるようになりました。そのことで練習に向けて身体をほぐしたり筋肉に刺激を与えられたりできるようになりました。練習後も、前はしんどくてすぐに帰っていたのが、今はジムに行くこともできるようになって、コンディションを整えることもできるようになりました」

 必要な睡眠を確保できるようになったのも大きいが、仕事の状況に関わらず定時に上がれることも身体にとって非常に大きい。だが、それには周囲の理解とサポートが不可欠になる。

「社会人として働きだしたばかりの自分を、ほかの正社員の方と比べることなんかできません。まだ本当に知らないことばかりですが、そんな僕がフォローしてもらうには、相当理解してもらえないとできないことです。加えて応援してもらえるのはすごく嬉しいことですし、仕事を手伝っていただいているぶん、チームで結果を出して恩返しができたらいいなと。それで喜んでもらえるかは分からないですけど」

 いまだ旧態依然とした企業風土が残る会社も多い。だが、バリュエンスホールディングス株式会社では嵜本晋輔社長自らが先頭に立ち、社の理念である「らしく、生きる」実現のために月に2日間理念浸透研修を行なっている。こういった試みが、アスリート社員と既存社員の融合を促進させているようだ。

 仕事上での周囲の支えがサッカーをやる上でのモチベーションにもつながってくる。やはり、社会人プレーヤーにとって、仕事とサッカーは密接にリンクしている。それを肌で感じ取っているから、仕事へのモチベーションも上がる。

「コンシェルジュは営業に当たるのですが、成約率といった様々な数字が毎日送られてくるんです。その目標値に達しているかいないか。数字が良ければ気持ちよく職場を出られる。するとフレッシュな気持ちでサッカーができる。そういう意味では仕事をやりきっていくか、いかないかも大きいです。先輩にフォローをお願いしないで職場を出られれば、やはり気持ちよくサッカーに打ち込めます。本当にいい選手は、仕事のことで気持ちをブラさらないかもしれません。でも実際、今言ったようなことがサッカーにも影響してくるんです」

 仕事で感じる気持ちの上下動でプレーの質が変わってくる。仕事面での周囲の理解やフォロー、そして自分の立ち居振る舞いがサッカーでの精神面に大きく作用してくるということだ。

「きっちり仕事をして気持ちよくサッカーをする。気持ちよくサッカーができればよりきっちり仕事をしようと思う。このサイクルを繰り返していけば仕事もサッカーもポジティブになっていきます」
 

 プロのサッカー選手になることを夢見てサッカーをしてきた。関西大学では試合にも出続け、複数のJクラブの練習にも参加した。だが声はかからず、なかば心が折れかけた状態でJFLの奈良クラブに入った。

「やっぱりサッカーをしている以上プロを目指す。すると、プロとしてサッカーで稼ぐことが一番カッコいいとなる。そこでほかの仕事をしながら、となるとどこか逃げたような、ネガティブなイメージがありました。実際JFLの時など他の仕事をしたくないと感じていた時期もありました」

 JFLで必要とされなければサッカーを辞めようと決めていた。そして入団から3年後、本人曰く「クビになった」。サッカーを辞めるつもりで就職活動を始め、内定ももらった。しかし、関西大学時代の恩師である島岡健太が南葛SCの監督に就任することになり、
「最後の1年という気持ちで俺の元でサッカーをやってみろ」
 と誘われた。そして上京して就職した会社が、内定を辞退したバリュエンスホールディングス株式会社(内定当時は前身の株式会社SOU)。南葛SCに入るために内定を辞退した会社に再び雇用されるという不思議な縁のもと、今もサッカーを続けている。

 かつてはサッカー以外の仕事をすることに正直、抵抗感を抱いていた。だが、価値観はひとつではない。もしあの時サッカーを辞めていたら得られなかったであろう“気付き”を仕事によってもたらされると、新たな地平が開けたりするから不思議だ。

「ブランド物を鑑定するときに、まず商品と状態を見るんですが、『人を見ろ』と教えられています。つまり、お客様のことを見るんです。どんな思いで持ってきたのか、商品にどんな思い入れがあるのか、をしっかり聞いて、お客様もハッピーな気持ちで帰れるように接客することを心がけています」

 実際に鑑定作業をするまで知らなかったやり方だ。こういった新たな体験が、社会人のキャリアを蓄積させるとともに、サッカーにも通じてくるということを体験している。

「お客様と話す時は、自分の言葉はまず脇に置き、言っていることをしっかり聞く。そして相手の意思を尊重してから自分の意見を言う。その際の言葉遣いも、丁寧語や尊敬語を使い分けて、お客様の様子に合わせて対応を変える。結局は人と人のつながりです。これってサッカーにも通じることで。人によって声のかけ方や対応を変える、という点で仕事から学んでいます」

 逆にサッカーをしていたからこそ仕事に活かせている点もある。
「たまに怒られたりする時にシュンと落ち込む時間は無駄だとは、サッカーをやっている時から思っていて。なので仕事で怒られたとしても、すぐに行動に移すことを心がけています」

 仕事がサッカーに、サッカーが仕事にそれぞれ活かされ、人としてもプレーヤーとしても成長を果たす。布施周士の話を聞いていると、南葛SCの岩本GMやバリュエンスホールディングス株式会社の嵜本社長が期待する点に気付きつつある気がするのだ。

「本当はみんなサッカー一本で生活したい希望はあると思うんです。だから仕事をしていて辛い気持ちになることもあるでしょう。でも、現状としてそれが叶わないのであれば受け止めるしかなくて、今を頑張るしかない。南葛SCをJリーグに上げたいし、そのためにはサッカーと仕事でポジティブなサイクルを作っていくことが今できるベスト。結局のところ、サッカーが好きなんです。僕だって一度辞めようとしてやっぱり辞められなかった。今になって再確認してます」

 思い描いたサッカー人生とは違う道のりを行っているのかもしれない。だが布施周士は社会人としてもサッカー選手としても成長している。そしてサッカーを続けている。
(このシリーズ了)

取材・文●伊藤 亮

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