混乱も招いた“兼任”の道… 森保監督の采配に不安は?いよいよ五輪本番へ試金石となる2連戦

混乱も招いた“兼任”の道… 森保監督の采配に不安は?いよいよ五輪本番へ試金石となる2連戦

ロシアW杯後から兼任監督として指揮を執ってきた森保監督。果たして五輪で成果は出るのか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 22日の東京五輪初戦・南アフリカ戦(東京)まで10日。5日から事前合宿を行なってきたU-24日本代表の調整は最終段階に突入しつつある。残された強化の場は12日のU-24ホンジュラス戦(大阪)と17日のU-24スペイン戦(神戸)の2試合だけ。ここで吉田麻也(サンプドリア)らオーバーエージ(OA)3人とU-24世代の融合を加速させると同時に、調整が遅れている上田綺世(鹿島)らFW陣をどうするか、控え組メンバーをどう組み込むか、4バックと3バックの使い分けや戦術バリエーションの確認など、数多くのテーマに取り組んでおく必要があるだろう。

 こうした中、ひとつ気がかりなのが、森保一監督自身のチームマネージメントだ。2021年に入ってからは3・6月の代表活動が完全に重複。森保監督と横内昭展コーチの2人の指導者が全くの別行動を取る形でここまで来ているからだ。
 
 ご存じの通り、同指揮官が東京五輪への強化をスタートさせたのは、2017年12月のM-120カップ(タイ)。その後、2018年ロシア・ワールドカップ(W杯)直前にA代表のコーチに抜擢され、大会後にはA代表監督に就任。ひとりで2チームを見るようになってから混乱が始まった。日程が重複している時は基本的に横内コーチが監督代行を務める形で2019年末までやってきたのだが、指揮命令系統が中途半端になりがちだった。

 象徴的なケースと言えるのが、2019年11月シリーズ。この時はA代表が2022年カタールW杯アジア2次予選・キルギス戦(ビシュケク)と親善試合のベネズエラ戦(大阪)を戦い、U-22代表(当時)がU-22コロンビア代表と広島でテストマッチを行なうスケジュールになっていた。森保監督はビシュケクから大阪に入り、広島へ行ってコロンビア戦前日と当日の指揮を執り、その試合後には大阪へ移動して夜のA代表のトレーニングに参加するという考えられない行程を取った。その努力が好結果となればまだよかったが、キルギス戦は格下に苦戦し2-0で勝利するのが精一杯。コロンビア戦は0-2で完敗し、ベネズエラ戦に至っては大量4失点の惨敗。森保監督の解任論が一気に浮上したほどだ。

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 こうした失敗例を踏まえ、日本サッカー協会の技術委員長の職を関塚隆氏(解説者)から引き継いだ反町康治現委員長が2020年夏に「1チーム・2カテゴリー」を明示。日程重複時は森保監督がA代表、横内コーチが五輪代表を指揮する方向性が明確に定まった。

 ただ、2020年に関しては、コロナ禍で国内での試合が組めず、10・11月にA代表と五輪世代を融合させた欧州組で国際親善試合の4試合を戦っただけ。12月末には五輪代表の国内組候補合宿も実施されたが、森保・横内両氏が揃っていたから指導体制の問題はなかった。

 しかし前述の通り、2021年の半年間はお互いが同じピッチの上で意思疎通を図る機会が非常に少なかったと言っていい。

「A代表と五輪の活動が重なった時はお互い監督としてA代表、五輪の代表チームの監督として活動してきましたが、1チームで活動できる時のお互いの関係性は広島時代から全く変わりません。プレーヤーズファースト、チームファーストを共有しながら東京五輪に臨みたい。具体的などういう形というのはないが、いつもいい関係でチームのための仕事ができている。イメージを共有し、意見をぶつけながらいいものを作っていきたい」と森保監督は横内コーチとの絶対的な信頼を改めて口にした。それは横内コーチ側も同様だろう。代表活動期間以外には情報を密にやり取りし、強固な体制を作っているはずだ。
 
 とはいえ、実際に森保監督に直々に見てもらえていない選手側は微妙な違和感を覚える可能性もある。吉田らOAの3選手や、冨安健洋(ボローニャ)、堂安律(PSV)、久保建英(ヘタフェ)らA代表経験者は森保監督との信頼関係が出来上がっているだろうが、森保監督の下でプレー経験の少ないメンバーもいる。今年3月から招集された林大地(鳥栖)などは最たる例だろう。

「まだ自分から話はしてないですし、特別に何かをしようというわけではないですけど、すごく気さくに話しかけてくれているし、練習中もアドバイスを下さっている」と林自身は森保監督との関係構築が順調に進んでいると捉えている様子。だが、過去に何度も五輪世代の活動で時間を共有してきた上田や前田大然(横浜)に比べると、戦術理解や意思疎通の部分がどうしても薄くなる。
 

 加えて言うと、五輪のような想像を絶するプレッシャーののしかかる大舞台で、指揮官が「こいつを使う」と決断を下すには、パフォーマンスやポジションでの役割などピッチ上の仕事の部分はもちろん、「全てを託せる」という人間的な信頼がなければ難しい。この半年間、U-24代表の試合から離れていた森保監督が予期せぬ苦境に陥った時、選手の人心掌握が確実にできるのか。彼らの心をガッチリと掴んで、意図した通りのプレーを引き出すせるのか……。そこは非常に興味深い点だろう。

 これまでの五輪代表の活動を振り返っても、2019年6月のトゥーロン国際トーナメント準優勝、2019年10月のブラジル戦での3-2の勝利など、横内コーチが代行監督を務めた時に比較的好結果が出ているという皮肉な事実もある。森保監督も2018年8月のアジア大会(インドネシア)準優勝など成果を残していないわけではないが、2019年コパ・アメリカ(ブラジル)1次リーグ敗退、2019年E-1選手権(釜山)での日韓戦敗戦、2020年1月のU-23アジア選手権(タイ)での1次リーグ敗退など不本意な形で終わった大会がどうしても目についてしまう。
 
 こうした苦い過去を糧に東京五輪本大会で金メダルを取ってくれれば、ここまでのモヤモヤ感を払拭できるのと同時に、9月以降のカタールW杯最終予選でのA代表のマネージメントにも大いに弾みをつけられる。東京五輪は「1チーム・2カテゴリー」の成否が問われる場であるのと同時に、森保体制の中間評価がなされる大きな場。そこをしっかりと認識しながら、指揮官にはまずホンジュラス戦で効果的な采配を見せ、チームの目覚ましい前進を印象付けてほしいものだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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