EUROも示唆…五輪はベストメンバーだけで絶対に勝ち抜けない大会。メダル獲得に必要なビジョンとは?

EUROも示唆…五輪はベストメンバーだけで絶対に勝ち抜けない大会。メダル獲得に必要なビジョンとは?

日本の屋台骨を支える冨安、遠藤、吉田。彼らが常にベストコンディションで出場できるとは限らない。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



 頂点を競うには1か月間に7試合を消化しなければならないEURO(欧州選手権)は、実力の接近したチームが集結し消耗戦となった。計720分間プレーしたイタリアは、守護神ジャンルイジ・ドンナルンマの719分間を筆頭に25人がピッチに立ち、うちトータルで1試合分の90分間以上プレーした選手が21人に達した。また最初から「死の組」で激闘が続いたフランス、ドイツ、ポルトガルは、揃ってラウンド16で大会を去っている。

 ただしEUROには移動の負荷もあったが、準決勝以降は涼しいロンドンが舞台だった。それに対し真夏開催の東京五輪は、高温多湿の劣悪条件下で中2日での5連戦、決勝に進めばそこだけ中3日で6連戦となる。絶対にベストメンバーだけで戦い抜けるスケジュールではなく、むしろ明暗を分けるのは不測の事態に対しての準備と柔軟な采配だ。そしてホンジュラス戦は、まさにその予兆とも言える試合となった。
 
 前半の日本は、ホンジュラスにシュートもクロスもペナルティエリア内への侵入も許していない。攻撃が成功裏に終わらなくても、相手のビルドアップやクリアを高い位置で回収し波状攻撃を繰り返したから、ホンジュラスに勝機はまったく見えて来なかった。日本は2ゴールを奪った上に決定機を4度は築いており、もし本大会のグループリーグなら3点目を挙げた時点で主力を休ませる早めの交代策が求められるところだった。

 ところが後半開始からホンジュラスが動いたことで、試合の流れは一変した。一気に5人を代えたホンジュラスは、後半開始5分、初めて右からクロスを上げ、交代出場のリバスがエリア内フリーでボールを受けた。結局その後1点を返してからさらに勢いづき、暫くゲームは1点差のまま推移した。改めて悪条件下でのフレッシュなパワーの威力を思い知らされた一戦となった。

 もちろん日本には、ACLに出場した三笘薫、旗手玲央、瀬古歩夢がベンチ入りできず、上田綺世が故障中など苦しい台所事情があった。しかしホンジュラス戦は、本大会前に様々な実験ができる最後の機会と言っても良かった。森保一監督は「勝って勇気を与えたい」と決まり文句を繰り返して来たが、極論を言えばホンジュラス戦は勝敗以上にチームの幅(可能性)を確認することが肝要だった。

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 本番直前のスペイン戦は、おそらく最後の試金石として通常以上にスタメンで戦う時間が長くなる。だからこそホンジュラス戦では、本大会ではバックアップに回りそうな板倉滉、橋岡大樹、町田浩樹らに、もっと十分なプレー時間を与え、出来ればそのまま橋岡を右、相馬勇紀を左ウイングバックに配した3バックへの適応ぶりなども試しておきたいところだった。

 日本が金メダルを獲得するには、6戦目に最高の力を引き出す必要がある。だが6試合も戦えば、当然代えの効かない主力がピッチに立てなくなる可能性も十分にある。逆に大会を制するのは、それでも代役が堂々と不安を払拭するようなプレーをするチームだ。確かに欧州を制覇したイタリアもCB(ボヌッチ、キエッリーニ)とアンカー(ジョルジーニョ)は、原則固定に近かった。しかし日本も同じように、吉田麻也、冨安健洋、遠藤航が揃って故障もカード累積もない保証はどこにもない。まして酒井宏樹の指定席になっているサイドバックは最も負荷の高いポジションで、ひとりで6試合を走り抜くのは不可能だし、そんなことをしていたら試合を重ねるごとにコンディションが低下して、メダルを争う頃には疲弊し切ってしまう。
 
 今回の日本が史上最強のメンバーを集められたことは間違いない。24歳以下の選手たちだけでも過去最高の経験値があるのに、そこに理想のオーバーエイジが加わった。しかし目標に到達するために不可欠なのは、いかに登録22人をフル活用するかという総力戦のビジョンだ。特に5人交代制だからこそ、迅速な決断が重要なテーマになる。

文●加部 究(スポーツライター)
 

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