【識者が選ぶEUROのベスト11】ファイナリストから8人を選出!悩んだポジションが…

【識者が選ぶEUROのベスト11】ファイナリストから8人を選出!悩んだポジションが…

内藤氏が選んだEUROのベスト11。MVPにはドンナルンマを選出。



 コロナ禍のため観客の人数は国ごとに変わり、会場も一部変更するなど、いくつものトラブルに見舞われたEURO2020。それでも出場24か国が素晴らしいパフォーマンスを披露した。ここでは、とりわけ優れたパフォーマンスを見せた11人を紹介していきたい。

 まずGKは、大会MVPも受賞したイタリア代表のジャンルイジ・ドンナルンマで文句なし。7試合でわずか4失点に抑えた22歳は、年齢を感じさせない冷静な立ち振る舞いで、抜群のセービングを見せ、カウンターの起点となるスローイングも秀逸だった。

 さらに準決勝に続いて、決戦でもPK戦で活躍。イングランドの3番手であるマーカス・ラッシュフォードのギリギリまでGKの動きを見極めようとする蹴り方に一切動じず、逆に相手にプレッシャーを与えてシュートを外させることに成功するなど、PKストップだけでなく、駆け引きの巧さも見せた。イングランドのGKジョーダン・ピックフォードも、そのPK戦で2本をストップしたほか、5度のクリーンシートを達成するなど、大会通じて高いパフォーマンスを披露したが、ドンナルンマには及ばなかった。

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 最終ラインは、特にCBでハイクオリティなプレーを見せた選手が多かったため、システムは3バックにした。

 まず選択したのが、イングランド代表のハリー・マグワイアだ。EURO開幕直前に負傷し、ギブスを装着する姿がカメラに映されることもあったが、グループステージ3戦目のチェコ戦でスタメンに復帰。持ち前のパワーでボールを奪い取り、抜群の読みでインターセプトを何度も記録した。さらにリーダーシップを発揮して、最終ラインを統率。イングランドの堅守を語る上で、彼の存在は欠かせない。

 主将としてイタリアを優勝に導いたジョルジョ・キエッリーニも外せない。相方のレオナルド・ボヌッチのほうが出場時間は長く、守備の安定感では勝っていたかもしれない。ただ、対戦相手の目線で考えると、基準点になるハリー・ケインやロメウ・ルカクなど、化け物級のストライカーたちを抑えて相手の火力を半減させるなど、嫌なDFだったのは間違いなくキエッリーニだ。また時折見せるベテランならではの老獪なプロフェショナルファウルもお見事と言わざるを得ない。常に勝つためのアクションを実行し続けた。

 3バックの最後に選んだのは、デンマーク代表のシモン・ケアだ。本来、優勝したこと、そして単純なピッチ上のパフォーマンスを考えると、ボヌッチを外す選択はありえないことは理解している。ただし本大会で様々な意味で窮地を救ったという意味では、このキャプテンを選ばずにはいられなかった。

 クリスティアン・エリクセンがフィンランド戦で心肺停止となり、スタジアム中、いや世界中がショックを受けるなか、誰よりも早く冷静さを取り戻し、エリクセンの呼吸の気道を確保。チームメイトや、エリクセンのパートナーに心遣い、励まし続けるなど、世界で最も優れたリーダーのうちの一人であることを示した。

 そのフィンランド戦こそ途中で交代したが、その後は一致団結したチームの最終ラインに君臨。安定したディフェンスを披露し、ベスト4躍進に貢献した。あらためてその全ての振る舞いに対して惜しみない拍手を送りたい。
 
 両WBは、イングランドの決勝進出を支えた両SB、カイル・ウォーカーと、ルーク・ショーを選択した。

 まず右のウォーカーに関しては、異論はないのではないだろうか。ワールドクラスのパワーとスピードを完備するマンチェスター・シティのSBは、名立たるドリブラーたちに自由を与えず、対人戦では対面する選手を封殺。加えて圧倒的なカバー範囲の広さを生かして、CBの背後のスペースをケアした。そのおかげで、イングランドは自信を持ってハイプレス&ハイラインのチャレンジができたのだ。

 その存在感が最も際立ったのは、ドイツ戦のワンシーンだろう。ラヒーム・スターリングのパスミスがきかっけで、ベテランFWトーマス・ミュラーに裏抜けを許した場面だ。イングランドの失点は決定的かと思われたが、ウォーカーが驚異のスプリント能力でミュラーとの距離を一瞬で詰め寄ったのだ。

 最終的に追いつきはしなかったが少なからずプレッシャーは与えていたようで、ボールを十分に運び切ることなく放ったミュラーのシュートは枠外に外れていった。シュート技術が売りの名手が決定的な場面で外したのは、ウォーカーの背後からの圧力を感じたからだろう。
 
 左に関しては悩まされた。イタリア代表のレオナルド・スピナッツォーラは初戦から素晴らしい攻め上がりで左サイドの攻撃を活性化。デンマーク代表のヨアキム・メーレも本職は右ながら、左サイドで出場して決定的なクロスを何度も供給しただけでなく、自ら2ゴールを奪い、印象的なパフォーマンスを披露した。

 ただ、個人的にはショーの方が上回っていたと思う。守備では対人戦、カバーリングともに質の高いプレーを披露し、攻撃でも能力の高さを発揮。2ボランチが守備的でビルドアップで詰まるシーンが多いなか、正確な縦パスや持ち上がりで何度も状況を打開した。また精度の高いクロスで3アシストを記録しただけでなく、決勝では開始2分にパーフェクトなボレーで先制点も記録している。攻守ともに質が高い完成されたSBであることを全世界にアピールした。
 
 セントラルMF2枚の選考も難しかった。フランス代表のポール・ポグバとエンゴロ・カンテは前評判通りのパフォーマンスを披露したし、スイス代表のグラニト・ジャカのリーダーシップには心を揺さぶられたファンも多かったはずだ。あるいはスペイン代表ペドリの冷静かつ高度な技術と状況判断能力を見ると、18歳という年齢を疑いたくもなった。

 ただ、選んだのは、ジョルジーニョとカルバン・フィリップスだ。低い位置からリズムを作ることで、イタリアの攻撃サッカーを支えた前者は、トップレベルのサッカーIQを生かした予測で数々のインターセプトを披露。チェルシーに加入した当初は、球際の弱さを指摘されることも少なくなかったが、激しい守備も見せつけ、ワールドクラスであることを証明した。イングランドは、決勝でキーマンとなった相手選手を自国で成長させてしまったとも考えられる。なんとも皮肉な結果である。
 
 後者の選出には、賛否両論あるかもしれない。彼の最大の魅力はなんといっても運動量と球際の強さだ。最前線から最終ラインまであらゆるエリアに顔を出して敵のキーとなる選手を潰し続けた。

 そのハードワークぶりは、イタリアのレジェンド、ジェンナーロ・ガットゥーゾを彷彿とさせた。特に、序盤からハイペースで120分間走り続けた決勝にパフォーマンスは圧巻だった。スペイン代表のセルヒオ・ブスケツと悩んだが、最終的にはこの25歳をチョイスした。

 3トップは、まずイタリア代表のロレンツォ・インシーニェだ。163センチの小柄なアタッカーはサイドに開いてドリブルを仕掛けるだけでなく、中央のエリアでパスワークに絡み決定的なパスを供給するなど、高いパフォーマンスを披露。前述のスピナッツォーラとの左サイドでのコンビは今大会屈指の破壊力を見せた。瞬間最大風速でいうと、フェデリコ・キエーザのスピードも捨てがたかったが、大会全体を通じて活躍したのはインシーニェのほうだったか。

 もう一人のウイングはデンマーク代表のミケル・ダムスゴーだ。21歳のドリブラーは今大会で最も評価を上げた選手のうちの一人ではないだろうか。デンマークの前線には中央でのプレーを得意とする選手が多いなか、数少ないワイドで輝ける選手として、その俊敏性を生かして何度もドリブル突破を見せた。

 なによりイングランド戦の直接FKで見せた強烈なドライブシュートは世界を震撼させた。そのシュートの威力とボールの落ち方は予測不能で、今大会絶好調だったピックフォードが、大きく落ちる軌道を読みきれず反応が遅れてしまったほどだ。今大会2ゴールをマークしたサンプトリアの新鋭は、今夏の移籍市場でも注目選手になるのは間違いない。
 
 最後にCFは、EURO初となる得点王を受賞したクリスチアーノ・ロナウドを選択した。チームはベスト16でベルギーに屈して早期敗退したが、この大黒柱は好調を維持していた。むしろ問題だったのは、他にもワールドクラスのタレントがいるにもかかわらず、C・ロナウドにチャンスを供給する形を作れなかった戦術面のほうだった。

 こうした状況で4戦5発でトップスコアラーに輝いたのは、さすがとしか言いようがない。ハリー・ケインも選びたいところだったが、チームとしてより問題があったにもかかわらず、得点を量産したC・ロナウドをセレクトした。


 
 この11人からひとりMVPを選ぶなら、素直に大会公式と同じドンナルンマにしたい。本当に穴らしい穴がなく、22歳にしてワールドクラスの守護神であることを証明した。新天地のパリ・サンジェルマンでも活躍は間違いないだろう。

文●内藤秀明(プレミアパブ)

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