【関塚隆の目】強敵メキシコをテンポで上回った序盤の戦いは素晴らしい。一方でふたつの課題も…【東京五輪】

【関塚隆の目】強敵メキシコをテンポで上回った序盤の戦いは素晴らしい。一方でふたつの課題も…【東京五輪】

序盤はテンポでメキシコを上回る。久保の先制ゴールは流れるような崩しから生まれた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



 メキシコ戦は濃い内容だったし、日本がメダルを狙えるチームだと改めて証明できた試合だった。

 とりわけ立ち上がりは非常に良いパフォーマンスだった。開始早々にいきなりピンチを迎えたとはいえ、攻守においてテンポで上回り、相手の守備組織が整う前に、幾度となく仕掛けてゴールにつなげた。

 先制点のシーンは素晴らしかった。酒井のスルーパスに反応した堂安がディフェンダーの裏に走り込んで中央にグラウンダーのクロスを供給。この時、林が相手のディフェンスラインを下げておいて、そのディフェンスラインとアンカーの間に走り込んできた久保が決めた。流れるようなゴールだった。

 2点目はVARでPKを得た形。クロスをあげた相馬の足に相手のタックルが入っていたという判定だったが、ここで触れておきたいのは今回のジャッジの基準についてだ。

 スペイン対エジプトの試合でも、同じようにセバージョスがキックした直後に足首にタックルを受けて負傷してしまった。非常に危険なプレーだと見なされ、グループリーグ1戦目がひと通り終わった今後は、ああいったアフターでのファウルはよりシビアに取られることになりそうだ。

 守る側からすれば足の出し方が変わってくる。ボールに向かうのではなく、相手の足にコンタクトしないようパスコースに出すようにする必要があるのだ。今回は良い方向に働いたが、今後は日本も気をつけていかなければいけないだろう。
 
 さて話をメキシコ戦に戻すと、こうして早い時間で2点を奪えたからこそ、相手を見ながら余裕をもってプレーすることができた。距離感よく守備陣形を構築し、前向きにボールを奪おうという意思を感じさせた。

 もっともメキシコはやはり強かった。徐々に日本の戦い方に慣れてきて、攻め方を変えてきた。途中から右のライネスと左のベガがサイドに張るようになったのは、できるだけ日本の守備陣形を広げようとしたためだ。

 サイドでのトライアングルによる素早い打開、逆サイドに振ってから1対1の状況を作ろうとするスピーディな仕掛け、巧みなFKは、メキシコ特有で、迫力があった。

 しかしそういうなかで日本は遠藤や吉田を中心に上手くスライドし、またサイドハーフの堂安と相馬もプレスバックを怠らずにこなして相手に自由を与えなかった。デュエルの部分でも負けていなかった。
 

 また光っていたのが1トップの林だ。ポストプレーだけでなく、守備にも献身的だった。彼が明確なファーストディフェンダーとして働いたからこそ、後ろがボールの出どころを予測できてコンパクトな陣形を保つことができたのだ。後半になっても運動量を落とさず身体を張っていた林の貢献は、チームに欠かせなかったと言える。

 一方でチームとしての課題も出た。

 ひとつはリードしたあとのゲーム運びだ。徐々に相手にリズムを掴まれると、どこにボールを運ぶべきかがあまりハッキリしていなかった。

 押し込まれていた時間では、田中から堂安へと縦パスを通して崩した68分のような攻撃が有効策になる。実際に、あのプレーで相手に退場者を出させ、致命傷を負わせた。相手にとっては一番嫌なプレーであり、試合の潮目が変わったひとつのポイントでもあった。

 もうひとつ気になったのが、ディフェンディングサードでの不用意なファウルだ。結局85分にFKを与えて失点を喫したが、ひとつのファウルが命取りになるものだ。また警告が重なり出場停止になる選手も出てくる恐れがある。そうしたリスクマネジメントも気をつけていかなければいけない。
 
 もうひとつ気になったのが、ディフェンディングサードでの不用意なファウルだ。結局85分にFKを与えて失点を喫したが、ひとつのファウルが命取りになるものだ。また警告が重なり出場停止になる選手も出てくる恐れがある。そうしたリスクマネジメントも気をつけていかなければいけない。

 もっとも強敵のメキシコを破ったのは大きな自信につながったはずだ。思い返せば私が率いたロンドン大会では準決勝でメキシコに敗れた。先制しながらも2点を返され、なんとか反撃を狙ったが、前に出たところで逆に3点目を献上してしまった。それに昨年のA代表のオーストラリア遠征でも0-2で敗れている。森保監督、吉田、酒井にとっても嫌な思い出を払拭した勝利になったのではないだろうか。

 次戦の相手はフランス。連勝してグループ首位に立ったとはいえ、油断大敵だ。相手は日本に2点差以上で勝てばグループ突破の可能性が残っているから、前掛かりにくるだろう。

 喜ぶのは今日だけにして、明日からはまた勝ち上がる準備を続けてほしい。準決勝までの5試合は中2日という日程で、気持ちを休める日がないのは大変だとは思うが、まずはしっかり身体的なケアが重要だ。

 みんなが同じ画を描いてプレーをすればメキシコのような強敵を上回れる。さらに五輪は短期決戦ではあるが、大会を通して個人としてもチームとしても成長していけるものだ。メキシコ戦の勝利を、また次につなげてほしい。

■プロフィール
関塚 隆(せきづか・たかし)/1960年10月26日生まれ、千葉県出身。現役時代は八千代高から早稲田大へ進学し、本田技研で活躍。91年に現役を引退し指導者に転身。母校の早大ア式蹴球部監督を経て、鹿島、清水のコーチを歴任し、2004年に川崎の監督に就任。10年からはU-23日本代表監督として指揮を執り、ロンドン五輪を経験。44年ぶりのベスト4へ導く。大会後、磐田、千葉で指揮を執り、18年に再び日本サッカー協会に入り、技術委員長やナショナルチームダイレクターを歴任した。

構成●サッカーダイジェスト編集部

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