120分で“引き分け”は妥当な結果。厳しく評価すべきは攻撃面。NZの布陣変更にも面食らったか【東京五輪】

120分で“引き分け”は妥当な結果。厳しく評価すべきは攻撃面。NZの布陣変更にも面食らったか【東京五輪】

4強進出は喜ばしいこと。だがPK戦にもつれ込んだ事実は真摯に受け止める必要がある。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



[東京五輪 準々決勝]U-24日本 0(4PK2)0 U-24ニュージーランド/7月31日/茨城カシマスタジアム

 日本がメダル獲得に大きく前進する準決勝進出を果たしたことは喜ばしい。しかし、戦前から侮れない相手であることが分かっていたものの、延長戦を含めた120分間で決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ事実は真摯に受け止める必要があるだろう。

 攻撃の中心を担う久保建英がGK谷晃生に救われたことを認めるように、厳しく評価する必要があるのは攻撃面だ。ダニー・ヘイ監督率いるニュージーランドが、5バックを組んでくることは森保一監督も想定内だったはずだが、これまでの3-4-3(自陣の守備は5-4-1)から、5-3-2(3-5-2)にシフトしてきたことは、明確に予想できていなかったかもしれない。

 しかも、ホンジュラス戦で負傷したオーバーエイジのウィンストン・リードが、頼もしいリベロとして戻ってきたニュージーランド。5バックと言っても、日本の初戦の相手・南アフリカのようにゴール前を固めてくるのではなく、攻守の切り替え時には3バックで日本にプレッシャーをかけながら、ボールの位置に近いラインコントロールで、日本が余裕を持ってボールを持てない状況に追い込んできた。そのうえで厳しいマークにあったのが久保と堂安律だ。

 ニュージーランドはクレエートン・ルイス、ジョー・ベル、マシュー・ガーベットという3ハーフで、ベルが中央でアンカーになる形と、ガーベットが前に出てルイスとベルのダブルボランチなど、日本の動きに応じて可変性のある中盤で、日本のストロングポイントを消しにきた。日本はこれまで以上に久保と堂安がポジションチェンジするなどして、チャンスの起点になるスペースを奪いに行くが、的確に消された。
 
 前線で幅広いポストプレーをこなしてきた1トップの林大地も、3人のセンターバックを相手になかなかボールを収めさせてもらえないなかで、頼みの綱は良い形でボールを奪い、そのまま攻め切るショートカウンターだった。

 しかし、ニュージーランドは自陣の数的優位を生かして幅広くボールをつなぎながら、左右のウイングバックを起点に2トップのクリス・ウッドとベン・ウェインに当ててくる。つまり“デュエル王”遠藤航と鋭い読みからのインターセプトを得意とする田中碧のボランチコンビに、なかなか強みを出させなかった。

【五輪代表PHOTO】GK谷晃生がスーパーセーブ!PK戦に勝利し歓喜に沸くU-24日本代表の笑顔を厳選!
 

 中盤でボールの奪いどころを見出せず、攻撃のスタートが低くなってしまう日本は、自分たちからボールを動かして攻め手を探すしかない。だが久保と堂安がなかなかフリーポジションを取れない状況で、鍵を握る存在になったのがもう一人の2列目である相馬勇紀と左サイドバックの旗手怜央、そして出場停止の酒井宏樹に代わり右サイドバックを担う橋岡大樹だ。

 特に橋岡のところは、所属クラブのシント=トロイデンの同僚でもある左ウイングバックのリベラート・カカチェが、堂安あるいはポジションチェンジしていた久保をチェックするため空きやすい。

 そこを橋岡も見逃さずに攻め上がり、大外からクロス、時にはインサイドに流れて縦パスを入れようとしたが、なかなか合わず。個人で仕掛ける相馬は右ストッパーのジアニ・ステンスネスとボランチのルイスに対応されて、得意のドリブルから決定的なチャンスを作るまでに至らなかった。そして旗手も同サイドでマッチアップしたカラン・エリオットがなかなか粘り強く、両選手が相殺されるような構図になった。

 一方で、日本もセンターバックに吉田麻也と冨安健洋が構えているだけあり、ニュージーランドの絶対エースであるウッドもグループステージの時ほどボールを前線で収められない。高い位置からのボール奪取で能力を発揮できない遠藤と田中も、後ろめでセカンドやルーズボールを拾う役割は機能しており、ニュージーランドが得意とするセカンドアタックを許さなかった。

 お互いが攻撃の良さを出せない流れでも、日本にとって決定的なシーンはあった。
 
 1つはショートコーナーから堂安、久保とつないで意表を突くパスに林が飛び出し、右からのショートクロスがディフェンスとGKの間を抜け、ファーサイドで遠藤が合わせたものだが、外してしまった。そして33分のシーン。遠藤の縦パスから相馬が前を向き、ペナルティエリア手前から久保にパス。右からの折り返しを最後は堂安が走り込んで右足でシュートを放つが、惜しくも横にそれた。確かに良い流れではなかったが、だからこそ仕留めたいシーンではあった。

 後半にニュージーランドは、早い時間に負傷交代したリードに代わり、チーム随一のチャンスメーカーであるカラム・マコワットを投入。4-4-2にして攻めの姿勢を見せた。5-3-2のシステムにようやく慣れだしていた日本にとって、相手側からの思い切った変更には面食らった部分もあったかもしれない。

【五輪代表PHOTO】U-24日本0(4PK2)0U-24ニュージーランド|谷が勝利を引き寄せるPKストップ!ロンドン大会以来となるベスト4ヘ!
 

 ニュージーランドが前からのプレッシャーを強める分、全体が間延びして縦に運べるスペースは得られたが、逆に日本も選手間に距離ができてしまい、前線の林や左の相馬がサポートの弱い状態で、個人の勝負を挑むシーンが目立つようになった。

 逆にニュージーランドは2トップを起点に左のマコワット、右サイドハーフに移動したガーベットが危険な存在になってきた流れで、森保監督は左サイドバックに守備的な中山雄太を入れて、旗手を前に出すプランで対応する。前線には林に代えて、怪我から復調してきた上田綺世を投入した。

 鹿島所属の上田にとってはホームのカシマスタジアムということもあり、俄然期待が高まったが、82分、この日最大のチャンスとなった堂安の絶好クロスからのダイレクトシュートをGKマイケル・バウドに阻まれた。

 逆にニュージーランド側の攻撃は冨安のあわやオウンゴールというシーンもあったが、GK谷とセンターバックの二人、さらに橋岡と途中出場の中山が粘り強く対応していた。延長戦にはウッドに合わせたクロスのこぼれ球をペナルティエリア内でエリジャ・ジャストに拾われ、ジャストがピッチに滑って助けられたシーンもあったが、全体的には両チームが決定的な攻め手を欠いたままPK戦となった。

 ニュージーランドが日本の良さを消しつつもそれで終わらず、ほぼイーブンな流れだった。その中でチャンス自体は日本がやや上回ったという試合展開だったが、最低でも決め切るべきシーンは二度あった。それでも120分で“引き分け”というのは、公平に見たら妥当な結果だ。
 
 準決勝の相手はスペインなので、同じ流れになることはないだろう。失点のリスクは間違いなく高まる代わりに、カウンターなどの突きどころもより生じてくるはず。

 メダル獲得を考えれば、PK戦だろうと勝ち進めばOKなわけだが、五輪に限らず日本代表として1つ宿題をニュージーランドから与えられたような試合だった。そしてニュージーランドは、選手たちがA代表の主力になる頃に、日本代表との対戦を見たいと思わせてくれる好チームだった。

文●河治良幸

【五輪PHOTO】ボーイフレンドはアルフォンソ・デイビス!美と強さを兼ね備えたカナダ女子FWジョーディン・ハイテマ!
 

関連記事(外部サイト)