ビジャの想いが詰まった選手育成プロジェクト。スペインでプロを目指す2選手の熱き挑戦

ビジャの想いが詰まった選手育成プロジェクト。スペインでプロを目指す2選手の熱き挑戦

スペインで奮闘する関大陽(写真下段左)、西村昴(写真下段右)。ビジャからのアドバイスにモチベーションも上がっている。(C)SOCCER DIGEST、DV7グループ提供



 J1の神戸でも活躍し、2020年元日の天皇杯決勝を最後に現役を引退した元スペイン代表FWのダビド・ビジャのサポートを受け、スペインで奮闘している日本人選手がいることをご存知だろうか。

 プロジェクトの名は“Road to Spain”。ビジャが率いるDV7グループが、日本人選手の世界での活躍を後押しするプロジェクトであり、国内トライアウトによる審査で選抜された人材が、スペインに渡ってクラブとの正式契約を目指す。

 同プロジェクトの開催は2020年に続き2回目(一期生のふたりはスペイン4部のジャネーラと契約)。今回のセレクションには約60人が参加し、上智大サッカー部のDF関大陽(21歳)、C大阪U-18のDF西村昴(18歳)が狭き門を突破した。

 ふたりは7月21日からスペイン4部クラブのアルシラの練習に参加。契約成立を目指してトレーニングに励んでいる。

 未知の挑戦に向けては不安もあったようだ。「進路を考えているなかで、海外挑戦を視野に入れて調べていたら今回のプロジェクトを見つけ、チャレンジしてみました」と語る関も、「兄が見つけてくれて、受けようと思いました」と話す西村も、当初は半信半疑だったという。

 それでも「若き日の自分のように、たとえ初めは無名の選手だったとしても、ステップアップを重ねて、ラ・リーガのトップクラブの一員となる選手が、いつか日本から出てくるに違いない。そのためのプロジェクトをスタートしたい」とのビジャの想いにも惹かれ、それぞれスペインでプロになるためのチャレンジを決めた。

 現地で共同生活をしている4歳差のふたりは兄弟のような間柄。ともにメインポジションはCBで、“お兄ちゃん的存在”の関は対人守備やスピードを生かしたカバーリングが特長で、“弟分”の西村も対人守備を持ち味に、セレクションではビジャらにビルドアップ能力も認められたという。

「Zoomで話していただいて、画面越しに接することができただけでも貴重な時間でした。文面でもアドバイスや評価をいただいたのですが、自信になりましたし、より一層頑張っていこうと思いました」(関)と、ビジャからのエールもふたりの大きな活力になっているようだ。
 
 関は高校時代を湘南U-18で過ごしたが、「試合に出られていなかったので、高校2年時にはトップ昇格は無理だと悟って、大学進学を考え始めました」と学業との両立も視野に上智大へ入学。大学では当初、プロの夢は封印していた。ただ「周り、ひとつ上の先輩らが就職活動を始めて、自分の将来設計を考えた」時に胸の内の熱い気持ちに気付いたという。

「俺はやっぱりサッカーがしたい」

 その強い想いを叶えるためにプロジェクトに参加。

 一方、中学時代からC大阪のアカデミーで育った西村は、昨季、高校2年生ながら二種登録選手してJ3のC大阪U-23(U-23チームは昨季が活動最終年だった)で18試合に出場。貴重な経験を積んだが、海外志向も強く、今年3月のコーチ陣との面談では「欧州でプレーしてみたい」との想いを伝えていた。

 育ったクラブへの感謝を抱きつつ、背中を押してもらい、スペインでのプロ契約を目指しているのだ。
 ふたりの直近の目標は8月上旬から始まるアルシラでのテストマッチでのアピールとなる。ここで活躍できれば、9月5日のリーグ開幕に向けて正式契約にもグッと近づけるはずだ。 

 関は「外国人選手として、絶対的な存在感を出さなくちゃいけないと思っています。そこはディフェンスリーダーとして必要なことですし、コイツがいないと守備が回らないなという活躍を早いうちから見せたいです」と意気込み、西村は「最高のパフォーマンスを出すには、やはりサッカーを楽しむことが一番必要だと思います。だからこそサッカーを楽しむことを意識したいです」と語る。

 言語の壁は日々、スペイン語を学びながら、英語も混ぜて周囲とコミュニケーション。日本とは異なる強度の高いフィジカル勝負、スペインでは多いというサイドを活用しながら守備を広げさせて中央を崩しにくる攻撃への対応にも順応しようと努めている。

 異国での挑戦は始まったばかり。それでもふたりの志は高い。

「家族を含め、ここまで自分に関わって下さっているすべての方々、今、こうやってチャンスをいただけたDV7グループの方々、そして通訳の方であったり、すべての方がいないと、僕はチャンスを得られませんでした。自分がここで活躍して、関わってくださった方々が、自分のことを自慢できるように頑張っていきたいと思います」(関)

「すべての方々に、何年か後に西村昴を応援していて良かったと思える選手になりたいです。自分の目標はワールドカップ優勝、そして将来レアル・マドリーへ入り、チャンピオンズ・リーグ優勝を成し遂げることです。そのためにも頑張っていきたいです」

 ふたりの志は、周りから見れば、もしかしたら大きすぎる夢なのかもしれない。それでもスペインで真剣に自らの可能性と向き合っている、彼らの挑戦は非常に尊いものだと感じる。
 今回のプロジェクトでは、スポンサーを募りながらDV7グループが、選手に対し、航空券、現地居住費用、通訳費用などをサポート(プレシーズンテスト参加期間中<契約獲得前>)。DV7グループがスペインに持つ広範なネットワークを活用して選手に理想的な環境を整えてもいるという。

 関は改めて「僕が言うのはおこがましいですが、スタッフの方を含め、DV7グループの方々の手厚いサポートがあることは非常に大きいです。セレクションで実績、経歴のない自分を選んでくれたのは、すごくありがたいですし、今後も様々な選手たちにチャンスがくるプロジェクトなのかなと思っています」と感謝を口にする。

 西村も「今回、スペインに行くにあたって、不安はなにひとつなく、すべての環境を整えてもらうことができ、すごく感謝したいです」と想いは同じだ。

「日本人選手たちの技術力、献身性、走力の全体的な高さは、間違いなく高い。これは私が日本で過ごし、選手としてプレーしたことで発見しました。私たちが選んだ選手の未来を信じて、考えうるベストな環境を提供することで、一人でも多くの日本人選手のスペインでの飛躍を実現したいと願っています」

 Jリーグ、そして日本人選手に触れ、大きな可能性を感じたビジャの想いから始まったこのプロジェクト。今後数年でどういった成果が出るのか注目だ。


【選手プロフィール】
関大陽
■所属:上智大学体育会サッカー部
■略歴:FC下田→MareFC伊豆→湘南ベルマーレU-18(平塚学園高校)
■ポジション:センターバック、サイドバック
■2000-04-19(21歳)
■182cm/80kg
■上智大学理工学部3年生

西村 昴
■所属:セレッソ大阪U-18
■略歴:FCエストレージャ-C大阪U-15-C大阪U-18
■ポジション:センターバック
■2003-06-13(18歳)
■177cm/79kg
■高校3年生

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 

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