【中断明けの青写真|金沢】再浮上へ柳下監督は原点回帰を決断。迷いのないボールアタックでプレスが甦るか

【中断明けの青写真|金沢】再浮上へ柳下監督は原点回帰を決断。迷いのないボールアタックでプレスが甦るか

原点回帰で後半戦に臨む金沢。果たして、リーグ戦での再浮上はなるか。写真:滝川敏之



 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J2のツエーゲン金沢を取り上げる。

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 中断期間はキャンプを行なわず、戦術的にとくに新しいことを始めたわけでもない。いまのところ補強選手もいない。そんななかで柳下正明監督が示した方向性が原点回帰、先鋭化だった。

 今シーズンはスタートダッシュに成功し、一時は3位に浮上することもあった金沢だが、5月に入って一度歯車が狂うと勝てない時期が続いた。その要因のひとつは積極的にボールを奪いにいく守備に陰りが見えたことだった。柳下監督はボールを失った際、臨機応変に連動してプレスをかけ、それが駄目なら一旦引いてセットした状態から再び出ていくことを選手たちに求めた。また対戦相手によっては中盤のスペースを使われないようにするため、前からプレスにいきすぎないように求めることもあった。しかしそれらがうまくいかず結果的に引いてしまうことが多くなると、持ち味の激しさが失われ、攻撃に移っても前線が孤立することが目立つようになっていった。
 
 そこで中断期間を前に指揮官は原点回帰を決断。できるだけ前からプレスをかけ、攻から守への切り替えの際には誰がどこにプレスにいくかをある程度決めて、迷いなくボールにアタックできるように変化させた。中断期間もボールを奪う・奪い返すことにフォーカスした練習を続けた。

 攻撃面でも立ち返ったのは原点。まずはゴールに一番近く守備側が嫌なところを素早く狙うこと、そしてボールを前に進めること、選手が走ることを求めた。パス&ムーブを繰り返すことで相手を動かし意図的にスペースをつくり、適切なタイミングでそこを使う。局面での数的優位をつくるためにボールホルダーを追い越す。練習ではそういった部分に重点が置かれた。「怖がらずにどんどん行こうということ。新しいことではないけど、もっともっと強調して伝えた」。柳下監督はそう狙いを明かしてくれた。

 指揮官はメンタル面でも選手たちを鍛え直した。毎日の練習は長くても90分ほどと時間は短かったが、炎天下で強度の高いメニューが続いた。選手たちの足が止まり、集中力が切れそうになったときには「きついけど、ここだぞ」とコーチングスタッフから叱咤激励の声が飛んだ。苦しくなったときにどれだけマークにつききれるか、そしてボールを奪って前に出ていけるか。個々のレベルアップと、いかにチームのために戦えられるか、その姿勢が求められた。
 

 いまの金沢は豊富な資金で強力な選手を獲得できるクラブではない。そして監督と強化が一体となって「チームのためになる」と判断した選手しか獲りにいかない。いくらビッグネームや将来有望株が市場に出ていても、だ。そのため既存選手をレベルアップさせること、それが最高の補強になる。
 

 前半戦は嶋田慎太郎や丹羽詩温、藤村慶太といった実績のある選手たちがチームの中心となった。それは後半戦も変わらないだろう。しかし彼らに疲れが見えることもあったし、調子が落ちることもあった。また交代を重ねた試合終盤にチーム力が落ちる傾向も見られた。だからこそ後半戦に求められるのは若手の台頭。

 リーグ戦再開を前に柳下監督は「意識が変わってきた選手が何人か見られた」と言う。キャプテンの廣井友信も「取り組む姿勢などに変化がすごく見られる」と若手選手を評価する。実際、指揮官がそういった選手に「グッド」や「OK」という声をかける機会も増えてきた。ただし、それはまだ「兆し」の段階であり、試合に出場し本当にチームに貢献できるのかはまだ未知数。力安祥伍、高安孝幸、杉浦力斗といった前半戦で燻っていた選手が台頭してこなければ、後半戦も苦しい戦いが続くことになる。

取材・文●村田 亘(フリーライター)

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