「心を引き裂かれる思い」決勝で散った黄金世代、選手村で最終日を過ごし…【U-24スペイン代表の東京五輪滞在記3】

「心を引き裂かれる思い」決勝で散った黄金世代、選手村で最終日を過ごし…【U-24スペイン代表の東京五輪滞在記3】

決勝でブラジルに敗れ、銀メダルに終わったスペイン。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



 U-24スペイン代表の東京五輪での挑戦は、延長戦の末に決勝でブラジルに敗れるという無念な結果に終わった。

 メダルを掲げてスペインに帰国するという当初の目標は達成したが、あと一歩のところで頂点を逃したことが選手たちを落胆させた。後半、ミケル・オジャルサバルのゴールで同点に追いついたスペインはさらに攻勢をかけた。しかし立て続けに2本のシュートがクロスバーに嫌われる不運もあり、試合は延長戦に突入。その後半、ヘスス・バジェホの甘い守備対応を突かれ、マウコムに決勝ゴールを許した。

 翌日、一行は選手村に帰還した。予定通りのスケジュールだったが、中にはそのまま帰国することができないことに不満顔を浮かべる者もいた。ラ・リーガは今週末に戦いの火ぶたが切られる。1日も早く所属チームに合流し、開幕モードに切り替えたというはやる気持ちがそうさせていたが、これも金メダルを獲得していれば、状況は変わっていたことだろう。

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 もっとも選手村に到着すると、そうした不平不満も消え、6年前に始まった冒険の終わりをそれぞれの思いで受け止めていた。すべての始まりは2015年7月にギリシャで開催されたU−19欧州選手権だった。

 チームを率いるルイス・デ・ラ・フエンテ監督は1996年、1997年生まれの選手の中から18人のえりすぐりのメンバーを選出。その中にはダニ・セバジョス(当時2部のベティスに所属)、マルコ・アセンシオ(当時2部のマジョルカに所属)、ミケル・メリーノ(当時2部のオサスナに所属)、ヘスス・バジェホ(当時2部のサラゴサに所属)、ウナイ・シモン(当時アスレティック・ビルバオのフベニールに所属)の姿があった。いずれもまったく無名の存在だったが、力を結集してタイトルを獲得した。

 さらにその2年後にイタリアで開催されたU-21欧州選手権ではアセンシオを除いた前述の4人にカルロス・ソレール、ダニ・オルモ、オジャルサバル、ラファ・ミルが加わり、再びタイトルを獲得。今回、東京五輪を戦ったチームの土台が築かれていった。

 スペイン代表のアンダーカテゴリーの歴史において、彼らは最も成功を収めた世代の一つだ。キャプテンのバジェホは、「これで終わってしまうのがとても残念だ。40日間続いた共同生活の中で、僕たちは本当の家族のように過ごしてきた。離れ離れになるのは寂しいよ」と素直な心境を吐露。怪我で決勝戦を欠場したセバジョスもこう続けた。

「チームメイトたちのことをとても誇りに思う。僕はこのチームではベテランだ。年下の選手たちのショックを受けた様子を見るのは心を引き裂かれる思いだ。僕たちが成し遂げたことの価値の大きさを理解させるように励ました」

 さらにエリク・ガルシアはまるでそのセバジョスの言葉に呼応するように「時間が経てば、銀メダルの価値が分かってくるはずだ」と気丈に語る。

 こうして選手たちは前向きに気持ちを整理し、全員が顔を揃える最後の日を過ごした。中にはセバジョスとアセンシオ、ダニ・オルモとハビ・プアドのように無二の親友同士の選手もいて、めいめいが再会を誓った。
 
 彼らが目指す次のステージはもちろんA代表だ。一方、E・ガルシア、ブライアン・ヒル、フアン・ミランダ、ペドリは年齢的に3年後のパリ五輪に出場資格を持っている。この2000年、2001年生まれの選手たちもまた今回は出場しなかったフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)やアベル・ルイス(ブラガ)らも含めてU−17欧州選手権とU−19欧州選手権を制した黄金世代だ。

 2023年に開催されるパリ五輪出の欧州最終予選も兼ねたU−21欧州選手権の予選は9月に開幕する。地元開催の1992年バルセロナ五輪以来遠ざかっている金メダルを目指す新生スペイン代表の挑戦が、再びスタートする。

文●セルヒオ・サントス(アス紙五輪代表番)
翻訳●下村正幸

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