【なでしこサッカー新時代】第4回 髙瀬愛実 (前編)|「WEリーグは、日本代表選手が続々と選出される場所であってほしい」

【なでしこサッカー新時代】第4回 髙瀬愛実 (前編)|「WEリーグは、日本代表選手が続々と選出される場所であってほしい」

PSMに出場した高瀬選手。(C)SOCCER DIGEST



 2021年、日本の女子サッカーは新たな時代に突入する。

 2020東京オリンピックも閉幕し、この秋には女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』がいよいよ幕を開ける。節目を迎えるこの時だからこそ、これからWEリーガーとなる選手たちの声に耳を傾けてみたい。彼女たちが語る、なでしこサッカーの未来とはいかなるものか。

 4回目のゲストは、INAC神戸レオネッサのレジェンド的存在になっている髙瀬愛実選手だ。世界の舞台で戦いながら、今年で13年目を迎えたベテランは、現役12年間の開幕戦で6ゴールと、初戦にめっぽう強い。その秘密や、WEリーグ・ファーストゴールへの意欲、さらにWEリーグの未来像などを訊いた。


――シーズン開幕に向けて追い込みの時期なのかなと思いますが、髙瀬選手自身のコンディションはいかがでしょうか?

 個人としては、プレシーズンマッチの頃は、コンディションが上がり切らない状態だったのですが、少しずつ、身体の状態とチームでやろうとしているサッカーがフィットしてきて、今、すごくいい状態です。

――オリンピックも話題になりましたが、ご覧になりましたか?

 そうですね、日本代表戦は見ました。各国のレベルが上がってきて、特に「球際が激しいな」というのは、見ていて感じたことですね。

――単純な身体の強さやリーチの長さという部分で不利は否めないと……。

 日本がテクニックであったり、高い技術だったりで相手を剝がせるのは、変わらず強みですね。ただ、国内であれば(DFを)一度剥がしたら、追いつかれることは滅多にないのですが、やはり海外の選手が相手だと全く違うんですよね。自分自身もそのスピードを体感したこともありますが、映像で見ていて「いやあ、そこ、間に合うのか!」「すごく強いな」と感じました。

――代表は、昔と今で、何か大きく変わったという所がありますか?

(今回のチームには)関わっている日数が少ないので、チーム全体の事を見る時間というのはほとんどなくて、(合宿では)自分のアピールに必死でした(笑)。ただ、代表に限らず、本当に足下の技術の高さはレベルが高い。女子ワールドカップ優勝当時も、当時の先輩たちが持っている技術というのは、本当にレベルが高かった。今は国内リーグでも、足下の上手い選手はたくさんいます。このレベルアップ感は、素直にすごいと思います。

――髙瀬選手自身が、世界を相手に戦って感じたことを教えてください。

 私は女子ワールドカップ(ドイツ大会)、オリンピック(ロンドン大会)のメンバーに選んで頂きましたが、ピッチに立った時間は少なかったので、大きなことは言えません。そうしたなかでも、思い出に残っている試合はあります。W杯で出場したスウェーデン戦(準決勝)です。

 残り5分ぐらいでの出場で、監督からは「キープしてこい!」と明確に役割を与えられてピッチに入りました。とにかく必死で、ライン際でボールをキープしたことを覚えています。しかも、それを先輩方に「良かったよ!」と褒めてもらえたことは忘れられないですね。

 私自身、「自分のできることは何だろう?」ということを、ずっと考えながら過ごしていて、ピッチの中で役割を与えられたことがすごく嬉しかったです。さらに、全力でやった結果を先輩方がしっかり見て、評価してくれたという喜びを鮮明に覚えています。
 

――外から見ている私としては、2009年のU-19女子アジア選手権での走りというのも、すごくよく覚えています。のちにINAC神戸で一緒にプレーするチ・ソヨン選手のすごいドリブル突破から同点に追いつかれて。でも、髙瀬選手が走り切って、最後に岩渕真奈選手のゴールを呼び込んだ決勝戦とか……。

 懐かしい、そういう試合もありましたね。私のプレーに対する考え方というのは、根本的にはずっと変わらないんです。自分がチームのためにできることをやる。あの時は、それが「走ること」だった。それが印象に残っていたとしたら、すごく嬉しいです。自分でも忘れていました(笑)。

――高瀬選手が、世界を相手に戦った経験や得たものとは何ですか?

 まず、「世界一になる」「世界のチームと戦う」っていうことを、若いうちに体感できたことはかけがえのない経験でした。スピード感だったり、身体の強さだったりを、普段から意識しながらプレーするようになりました。「相手は、フィジカルが強い」「足が速い」と言われてもピンと来なかった感覚が、実際に対戦することで自覚できて、焦燥感というものも目覚めました。

 普段の練習時も「こんなもんじゃない」「これじゃ足りない」と奮い立ち、意識しながら練習に取り組めるというのは、間違いなく自分にとっての糧になりました。

――WEリーグができて、INAC神戸以外のチームの環境も良くなるはず。そうなると、世界で戦うための環境が作れると思いますか?

 日本代表のレベルアップは、国内チームの活動があってこそなので、いざプロになったら意識も変わりますし、サッカーにかけられる時間も変わります。プロになった事で、より高いレベルのサッカーをお見せしなければいけないということになります。

 今まで応援してくれていた人たちに「おっ、プロリーグになって変わったな!」と感じてもらえるように、そして新しいファンを増やすために、プロならではの強みや変化を作っていかなければいけないですね。

――ちなみに、「WEリーグが誕生する」と聞いた時の感想は?

「え、本当にできるのかな」って(笑)。戸惑いというか。他の選手も「本当にできるのか」と感じた人も多いのでは……。もちろん嬉しさはありましたが、「凄いことになった」「本当に実現できるの?」と。

――「無理じゃないか」という気持ちですか?

 プロ化となれば、それだけお金も動きますし、環境もガラリと変わるかもしれない。想像できるなかでも、いろんな戸惑いがありました。幸せなことに、INAC神戸では普段からサッカーに集中させてもらっていますが、リーグ全体の体制が変わるだろうし……。正直にいうと、「本当に大丈夫かな」という懸念がありました。

――プロリーグに対しての期待はありますか?

 それはもちろんです! 例えば、子供たちが「将来、何になりたい?」と訊かれた時、「サッカー選手」と答えてもらえるようになるかもしれない。私は子供の頃、「プロサッカー選手になりたい」と文集に書いたとき、「女子サッカーにはプロがない」と言われた記憶があるんです。

 がっかりしましたが、「先のことは分からないし、女子だってプロができるかも」と願っていたので、本当にうれしい気持ちです。夢の選択肢を増やすことで、男性女性に限らず、夢を見せられるようなリーグにしたいです。
 

――その「プロサッカー選手になりたい」という夢を抱いたのは、いつなのですか?

 小学生のころの文集に、「ワールドカップで優勝する!」か、もしくは「プロサッカー選手になる」のどちらかを絶対書いていました。学生時代にそうした質問があった時には、必ず、そう答えていました。

――ちなみに、男子サッカーの世界では「日本のサッカーと、海外のサッカーは違う」という意見もあります。WEリーグは、ヨーロッパようなスタイルを目指すべきなのか、それとも日本らしさを追求すべきなのか。この点については、どうお考えですか?

 どちらにせよ、WEリーグは常に世界を意識するべきだと思います。もちろん、選手それぞれで、考え方は違うと思います。プロでプレーできればいいという考えもあるし、選手である以上は日本代表を目指す選手もいる。様々な選手を包括してプロリーグが形成されるのですが、私は常に世界を意識してリーグ戦を戦っていかなければいけないなと。

 意識しなければ、もう一度、今、世界から注目されるようなチームになるというのは難しいと思うんです。常に世界を目指して、自分たちはチャレンジし続けなければいけないのではないかと考えています。

――プロリーグの設立というのは、世界に近づくためのカンフル剤になりうると思いますか?

 個人的にはそうならなければならないと強く思います。WEリーグは、世界基準で戦い、日本サッカーの底上げに役立ち、日本代表選手が続々と選出される場所であってほしい。世界で戦えるチームになっていかなければ、女子サッカーが皆さんにもっと応援してもらえるスポーツにはならないと思うんです。

 だからこそ、このプロリーグが始まる、WEリーグが始まるというのは、またなでしこジャパンが世界で輝くための最高のサポートになってほしいし、自分たち選手たちがそうしていかないといけないですね。

――そのWEリーグ開幕に向けて、各チームにおしゃれなユニフォームも発表されました。

 INAC神戸のデザインは、コシノヒロコさんに考えていただいたのですが、他のチームはアパレルで有名なx-girl さんのプロデュースもあって、多種多様ですごいですよね。サッカーとは直接関係のないブランドさんの力を借りることで、今までサッカーに興味がなかった人の目にも止まるのかなという期待もあります。

――そして INAC神戸は9月12日、リーグの皮切りとなる開幕戦を戦います。

 WEリーグ最初のゲームを戦えるというのは、とても自分たちはラッキーだなと思います! 例えば、リーグ初ゴールが INAC神戸の選手から生まれるかもしれない。歴史が生まれる瞬間というのをチームとしても見てほしいです。

 私たちもアピールしていきたいですし、フロントスタッフの方々も、すごく動いてくれているので、INAC神戸は常にワクワクを提供できているという自負があります。選手としては、「WEリーグ初勝利」「WEリーグ初ゴール」というものを、みなさんにお届けしたいですね。

――そうなると「開幕戦スコアラー」と呼ばれた髙瀬選手の出番だと思うんですけれども。

 何年か前までは、そういうこともありましたね(笑)。

――ここまで12年間で半分の6年、開幕戦でゴールしています。そしてデビューした年は、開幕戦に出場していませんが、デビュー戦の第2節でゴールしています。

 開幕戦でゴールできると、シーズンを通して得点を重ねられるっていうイメージがありますね。ただ、それだけを意識せず、チームの勝利に貢献したいです。

――シーズンの始まりから活躍するためには、コンディションの維持と戦術理解が不可欠だと思いますが、どのような準備をするのですか?

 コンディションはオフシーズンから仕上げられるように努めます。皆よりも“良い状態”を目指すのですが、INAC神戸はきっちり仕上げてくる選手が多いですね。

 もちろん開幕戦スタメンを目指して、監督の考えを理解するために努力して、より積極的に身体を動かしていくつもりです。あとは、やはりFWなので結果を出せるかどうかも重要です。今のところ、自己評価では「良い状態」なので、開幕戦でゴールして勝利も掴めたら最高ですね。

後編に続く。

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