バルサが18歳逸材への“特別扱い”を廃止した理由「甘やかすと、ろくなことがない」【現地発】

バルサが18歳逸材への“特別扱い”を廃止した理由「甘やかすと、ろくなことがない」【現地発】

モリバをトップデビューさせたクーマン監督も、ピッチ外での振る舞いに苦言を呈したという。(C) Getty Images



 イライシュ・モリバは2003年にギニアの首都コナクリに生まれた。エスパニョールを経由して、7歳の時にバルセロナに加入。当時から規格外の体格をしていた彼は、飛び級でカテゴリーを昇格していった。

 バルサの将来を背負って立つ逸材と評価され、そのプレーはスペイン・サッカー連盟の関係者の目にも留まり、U-16を皮切りに年代別代表に選出された。そんな中での突然の出来事だった。モリバは母国の代表としてプレーすることを公表した。

 いまモリバは移籍騒動の渦中にいるが、バルサのクラブ内ではこの決断もその一環として捉える向きが少なくない。イギリスのヨーロッパ連合(EU)離脱に伴い、次世代の選手の育成を促進することを目的にプレミアリーグと英国政府の間で「Governing Body Endorsement (GBE)」案が承認。2021年1月1日から適用が始まった。

 同案は英国籍を持たない選手がプレミアリーグでプレーするために取得しなければならない労働許可証のことで、その基準となるのが代表戦の出場数だ。つまりバルサ側は、モリバはそのポイント稼ぎのためにギニア代表を選択したと勘ぐっているのだ。

【動画】バルサが特例を認めてきた“怪物”イライシュ・モリバの厳選プレー集
 
 この夏、モリバが無礼な態度を取ったのはこれが初めてではない。その最初の被害者は言うまでもなくバルサだ。クラブは2022年6月に満了する契約の延長を目指していたが、交渉は決裂。

「おそらく他のクラブとすでに何らかの契約を結んでいるのだろう。代理人にとってはビジネスチャンスだ。しかし選手本人にとってはそうではない。とても残念だよ。ラ・マシアに入団してから、我われはモリバの成長をあらゆる面からサポートしてきた。でもいま彼の行く手を様々な障害物が阻んでいる」と関係者が認めるように、このまま物別れに終わる可能性が大きい。

 入団直後から飛び級でプレーさせるのが1度目なら、バルサがモリバに対し、2度目の特別扱いをしたのが規則違反を犯した時だ。関係者によると本来なら追放に相当する不祥事だったが、期待のホープという理由で穏便に済ませたという。こうしてモリバはラ・マシアを退寮。両親が住む実家に戻り、そこから練習場に通うことになった。
 

 モリバはその後も順調に成長し続けたが、それに比例してエゴも肥大化していった。その一例として、ある日、フィジオセラピストが試合に間に合うように急いでマッサージを施そうとすると、「俺のことは放っておいてくれ。俺が望めば、明日にでもバイエルンに行くことだってできる」と威張り散らしたともあったという。

 そんな中、3度目の特別扱いが認められた。マンチェスター・シティやチェルシーから届いていたオファーを盾に、当時のスポーツマネジメント会社「Stellar Group」が待遇の改善を要求。カンテラーノとしては前代未聞の年俸約70万ユーロ(約9000万円)の契約をモリバは勝ち取った。

 しかし、こうした数々の特別扱いが結果的にモリバを増長させてしまったとクラブ関係者は指摘する「人間、甘やかすと、ろくなことがない。自分がクラブ以上の存在と思い込んでしまうんだ」
 
 モリバは今回新たな契約を結ぶ際に、マネジメント会社を鞍替えしたが、その「Rogon」はバルサに対しペドリとロナルド・アラウホ以上の待遇を要求した。クラブの回答は「受け入れられない」だった。その根拠はチームへの貢献度にあった。関係者は説明する「ペドリとロナルドは昨シーズン、1年間を通してトップチームの一員としてプレーした。その後、それぞれEUROとコパ・アメリカにも出場している」

 もはや交渉の仕切り直しはないと判断したバルサは、モリバの移籍金を2000万(約25億円)ユーロに設定。その条件を満たしたオファーが届かない場合は、練習生としてフベニールB(U-18)行きを命じる方針だ。

「代理人からすればフリーエージェントになったほうがビジネスになる。残念だよ。サッカーは変わってしまった。以前は22歳になるまでは、選手は将来設計を考えることはなかった。でも今じゃ18歳になれば大金を稼ぐ。そして今度は破格の要求だ。たかだかトップチームで20試合(正確には18試合に出場、1得点3アシストを記録)に出場しただけで、だよ」

 こう関係者が嘆く一方で、昨シーズン、モリバを抜擢したロナルド・クーマン監督も18歳の選手の関心がサッカーよりもお金に向けられていることに苦言を呈している。

 バルサはモリバにこれ以上ビタ一文も出す考えはない。もう特別扱いは終わったのだ。

文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙バルサ番記者)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?