勝点3が必要な中国戦で最後尾を託されるのは… 9月シリーズで当面の守護神争いに決着はつくのか?

勝点3が必要な中国戦で最後尾を託されるのは… 9月シリーズで当面の守護神争いに決着はつくのか?

今回の9月シリーズで選出された日本代表のGK陣。左から川島、権田、谷。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



「もう後がないというか、僕らはホントに次、絶対に勝たないといけない試合。もう必死に勝点3を取りに行くことをまず第一に考えないといけないかなと。戦術うんぬんより、ここで負けないところから始まる。それをピッチのうえで表現しないといけない」

 絶対的1トップ・大迫勇也(神戸)が語気を強めたように、2日の2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選初戦・オマーン戦(吹田)を0-1で落とした日本代表は、いきなり崖っぷちに立たされた。
 
 シュート数で相手を下回った攻撃陣はもちろんのこと、終了間際に失点した守備陣も修正が必要だ。7日の次戦・中国戦(ドーハ)は酒井宏樹(浦和)が欠場し、冨安健洋(ボローニャ)が復帰するなど最終ラインの入れ替わりは確実だが、最後尾に位置するGKに手を付けるかどうかも思案のしどころだ。

 というのも、「チームの流れが悪い時はGKに手を付ける」というのが、サッカー界の定石だからだ。権田修一(清水)のままで行くのか、それともベテラン・川島永嗣(ストラスブール)か20歳の新星・谷晃生(湘南)のいずれかを抜擢するのか……。そこは森保一監督と下田崇GKコーチにとって非常に悩ましい点と言っていい。

「ゴンちゃんはGKとしてできることはしっかりやっていた。もちろん失点の部分で、GKというのはつねに『もっとこうすればよかったかな』というのはあると思いますけど、ゲームの要所要所でしっかり抑えるところは抑えていたし、フィードのところでもチームの攻撃に勢いがつくようなボールを出せていた」と外から試合を見ていた川島は、権田のパフォーマンスを前向きに捉えていた。

 確かに、オマーン戦では彼自身が失点シーンで致命的なミスを犯したわけではないし、川島が言うように要所要所でピンチを防ぐプレーもできていた。権田を変えなければいけない明確な理由は見当たらないが、「どういう試合であろうが、僕のミッションは失点を抑えること」と口癖のように言い続けている男だけに、敗戦の責任を強く感じているはず。最悪の結果を受け入れられない部分もあるだろう。そのメンタル面がひとつ気がかりな点ではある。

【PHOTO】W杯アジア最終予選オマーン、中国戦に臨む日本代表招集メンバー24人
 2010年1月のイエメン戦(サヌア)で国際Aマッチデビューを飾ってから足掛け11年。権田が主力としてW杯最終予選に挑むのは、今回初めてだ。「最終予選をコンスタントに戦うために、クラブの試合に出ていた方がいいと思ってJリーグ復帰を決断した」とも話していて、カタールへと続く10試合への闘争心は並々ならぬものがあるはずだ。

 その言葉通り、今季からプレーする清水エスパルスではJ1全27試合にフル出場。チームが下位に低迷している分、失点数が少ないわけではないが、コンディションはいい状態をキープしている。そこは新シーズン開幕直後でサブに甘んじている川島、東京五輪6試合でフル稼働した疲労の残る谷より上回る部分。年代別代表時代に中東の試合経験もあるため、カタールでの現地適応も問題ないだろう。こうした要素を視野に入れると、中国戦も権田の先発継続で問題ないように映る。
 
 とはいえ、その一方で、A代表で修羅場をくぐり抜けた経験値が少ないというマイナス面もある。本人も言うように、2014年ブラジルW杯最終予選は川島の控えとしてチームに帯同しただけで、2018年ロシアの時はメンバー外だった。W杯本大会の出場経験ももちろん皆無だけに、いきなり訪れた苦境下で彼にゴールマウスを任せ続けることに一抹の不安がないとも言い切れないのだ。

 その点、何度も天国と地獄を味わってきた38歳のベテラン守護神は肝が据わっている。
「最終予選というのは取り返しのつかないゲームしかないですし、一つひとつのプレーも取り返しがつかない。本当に消極的ではいけないし、積極的になるところでもどれだけリスクを考えるかというところで、本当に微妙な差が大きな結果に変わってくる部分がある」と川島は含蓄のあるコメントも残していた。

 今回と同じように初戦黒星からスタートした前回最終予選でも、一度負けているUAEとのアウェー決戦で長期間のブランクを経てスタメンに抜擢され、凄まじい闘争心を押し出して神セーブを連発。宿敵を完封した。これをきっかけに日本は波に乗り、出場権をもぎ取るところまで辿り着いた。川島が停滞していたチームをテコ入れし、上昇気流に乗せる大仕事をしたのは紛れもない事実なのだ。

「経験のある選手が必要だ」と当時のヴァイッド・ハリルホジッチ監督(現モロッコ代表)も強調していた。果たして森保監督は、絶対に負けられない重要局面で現状維持を選ぶのか、変化を選ぶのか。その決断が大一番の行方を大きく左右しそうだ。
 
 もちろん、選択肢は権田と川島だけではない。A代表経験ゼロの谷を大抜擢するという奇策も有効ではないか。実際、谷は東京五輪で好セーブを連発していて、吉田麻也(サンプドリア)や冨安ら最終ラインとの連係も確立している利点がある。加えて、若さゆえのチャレンジャー精神も前面に出せるのだ。
 
 かつて2010年南アフリカ・ワールドカップ直前に、正GKに浮上した川島も「あの時は何も考えていなかった。無心になれたからいいプレーができたのかもしれない」と話していたことがあった。実績重視の森保監督はギャンブルを冒さない傾向が強いが、かつての川口能活(U-20代表GKコーチ)が21〜22歳でW杯アジア予選を戦った過去を踏まえれば、決して若すぎることはないのだ。

 いずれにしても、日本は中国戦で悪い流れを断ち切らなければならない。GKの人選は極めて重要なポイント。誰がピッチに立ったとしても結果が求められるのは間違いない。ここで大仕事をやってのけた選手が、熾烈なサバイバルを一歩リードするのは確かだ。

 ただ、今回呼ばれていないシュミット・ダニエル(シントトロイデン)や中村航輔(ポルティモネンセ)、東京五輪世代の大迫敬介(広島)や鈴木彩艶(浦和)らも控えている。有望なGKが数多くいるのは、日本サッカー界にとって明るい材料。そういった人材を有効活用しながら、最終予選を乗り切る術を指揮官にはしっかりと見出してほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

関連記事(外部サイト)