「僕たちを必要以上にリスペクトしていないのは腹立たしい」。初戦黒星で蘇る本田の主張【編集長コラム】

「僕たちを必要以上にリスペクトしていないのは腹立たしい」。初戦黒星で蘇る本田の主張【編集長コラム】

イラク戦後の本田の主張は、アジアの勢力図の変化を示すものでもなかったか。写真:サッカーダイジェスト



 カタールW杯アジア最終予選の大事な初戦で、オマーンに0−1と敗戦。決して油断したわけではないだろう。試合前の会見で、前回大会の最終予選での初戦黒星を経験している吉田麻也や酒井宏樹などは「同じ過ちを繰り返してはいけない」というニュアンスの発言をしていて、ホームで星を落とせばその後の展開が苦しくなることは十分に承知していたはずだ。

 それなのに、相手の術中にハマった形で完敗を喫した。5年前、同じ最終予選の初戦でUAEに敗れた試合はアップセットの感が強かった。 明らかに日本が押し込む時間帯があって、ツキがなかった印象もあったが、今回は違う。選手個々の戦いで劣勢を強いられる場面がかなりあって、戦術的にも明らかに劣っていた。「負けるべくして負けた」という吉田の言葉がピタリとはまるゲームだった。

 日本がアジア最上位というFIFAランクに踊らされてはいけない。決して、日本は強くない。ある意味、オマーン戦はその事実を初戦黒星という強烈なインパクトとともに示してくれた試合とも言えるだろう。

 実際、試合運びはオマーンのほうが上だった。日本に流れが傾きそうな時間帯も焦らず、粘り強く対応。攻撃の局面ではサイド攻撃を有効活用し、揺さぶりをかけた。守備面では大迫に起点を作らせないよう、中央部をがっちりと固めて決定機を作らせなかった。

 端的に言えば、日本は監督を含めた総合力で力負けした。
 

 オマーンの堂々たる戦いぶりを見て、蘇ってきたのが本田圭佑の言葉だ。

 2016年10月6日に行なわれたロシアW杯アジア最終予選のイラク戦、山口蛍の劇的な決勝弾で日本が2−1と勝利したあとのミックスゾーン、本田は少し昂った声でこう言った。
 
「本当はこっちが向こうをバカにしたいんです。あんまりそういうところは戦術的には求められていない。そういうところは僕やヤットさん(遠藤保仁)の真骨頂なところでね。僕もその辺のスピーディーさが欠けるとか、いろんな意見があるんでしょうけど、アジアレベルで言えば徹底的に相手をバカにするプレーは得意としている。

でも、それは(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表では)今求められていない。怖い攻撃をもっと増やしていこうというところが今の代表のテーマなので、それはそれで前向きにチャレンジしたいという気持ちで臨んでいる。自分になかったところなのでね。別に否定的ではないですよ。でも、本来はイラクみたいな国が僕たちを必要以上にリスペクトしていないのは腹立たしい。本当は向こうがうざいと思うくらい回さないといけない」

 この中で印象的だったのが「僕たちを必要以上にリスペクトしていないのは腹立たしい」という件だ。この傾向は前回の最終予選もより今回のほうが強まるのではないか。これがオマーン戦の敗戦を受け、脳裏に浮かんだことだった。
 

 対策されても、その上を行くパフォーマンスで相手をねじ伏せる試合が過去のアジア最終予選ではあった日本が、近年は敵の罠にはまったまま敗れるケースが目につくようになった印象だ。少なくとも、日本とアジア各国の実力差は縮まっている。

 だからこそ監督の手腕がモノをいうわけだが、オマーン戦の采配は結果的に当たらなかった。良くも悪くも森保一監督の采配には驚きがない。オマーン戦での選手交代(左サイドハーフの原口元気→古橋亨梧、トップ下の鎌田大地→久保建英、右サイドハーフの伊東→堂安律)は、おそらく森保ジャパンの試合を観ているファン・サポーターも予想できるものだった。しかも、それがはまらない……。これではオマーンに負けて当然なのかもしれない。

 サッカーはメンタルスポーツでもある。相手に“違和感”を与えるのも重要だ。例えば中国戦は、吉田麻也、遠藤航、冨安健洋で3バックを組ませ、ウイングバックに室屋成、長友佑都を配置。アンカーに守田英正、前の4枚に大迫勇也、鎌田、久保、古橋を起用する。機能するかはさて置き、奇襲とも言える3バックシステムの採用で驚きを与えてもいい。

 そして、前半途中からでも4バックシステムに移行(遠藤をボランチに上げ、久保と古橋をサイドハーフに)するなどして相手に的を絞らせないようにする。机上の空論と言われればそれまでだが、とにかく相手に「おや? 普通の対策では通じないか」と思わせないことには今後も苦しい戦いが続く気がする。
 

 要するに、森保監督に求められるのは“引き出しの多さ”なわけだ。とはいえ、ここまでの采配を見る限り、それを期待するのは酷だろうか。

 前回の最終予選では、原口、大迫、井手口陽介、久保裕也らが台頭して代表チームに新たなパワーをもたらした。ただ同時に、長きに渡って日本代表を牽引してきた本田、岡崎慎司、香川真司を揃って先発から外したハリルホジッチ監督の決断が結果的に良い流れを呼び込んだ点を忘れてはいけない。

 何を強調したいかと言えば、監督の采配次第で悪い流れは払拭できるということだ。
 

 改めてオマーン戦に言及すれば、糾弾されるべきは攻撃陣で守備陣ではない。1失点はどんな試合でもあり得ることで、「なぜあそこで失点してしまったか」以上に「なぜあそこまでゴールを奪えなかったか」が最大の問題点だ。

 パススピードを欠き、あそこまでプレーの緩急がないと、行きつくところは共有意識の薄さである。最前線の大迫にボールが入りにくい状況下で、どう仕掛け、どう崩すか、そういう工夫がまったくと言っていいほどなかった。技術や経験はあるわけだから、もっと頭を使って賢く戦えなかったのかと強く思う。

 古橋が投入されても、周りの選手に彼の前線への抜け出しを引き出そうとする動きはなく、てんでバラバラ。大迫と鎌田が意図的に少しポジションを下げつつ、相手DFを引っ張り出したうえで、空いたスペースに古橋を積極的に走り込ませる、はたまた古橋がサイドで機能しなければ鎌田とポジションを入れ替えて中央でプレーさせるなど、選手の独断でもいいからチャレンジすべきアクションはあったはずだ。

 久保や堂安が入って若干怖さが出たものの、チーム全体のテンポは上がらず、そうこうしているうちにゴールを奪われてしまった。守備に問題がなかったわけではないが、だからといって、「なぜ失点を防げなかったか」とあのワンシーンだけを切り取って考えるのはナンセンスだろう。

 ロシア・ワールドカップのベルギー戦での3失点目もそうだ。あそこだけ切り取っても意味はない。実際、あの試合は前半にかなり押し込まれたせいで、選手たちの体力の消耗は半端なかった。2−0から1点を返された時点で選手の足取りはすでに鈍くなっていたし、そういう伏線があって追いつかれ、最終的に逆転負けを喫したのだ。長友が「ベルギー戦は振り返れば完敗だった」と言うように内容も踏まえれば惜敗ではなく、最大の敗因を挙げるなら押し込まれすぎた前半の戦いぶりにあったと考えている。
 

 オマーン戦に話を戻すと、相手の巧みな戦術(特にハイプレスとサイド攻撃がきいていた)によって膠着状態に持ち込まれた日本には少なからず焦りと戸惑いがあった。それがプレーの精度を狂わせ、チャンスを作れず、悪い流れのまま失点を喫した。攻めが上手く行かない時の守備陣の負担は精神的にも体力的にも相当なもので、むしろあの時間帯での失点は責められない。ノーゴールで終わった攻撃陣が不甲斐なしと、そう結論づけたほうが個人的にはしっくりくる。

 いずれにしても、攻守両局面での切り替えが遅く、チームそのものが機能していなかった日本。森保監督が選手たちを掌握しきれていない印象の現状には大きな不安を感じる。

 同じ初戦でオーストラリアに完敗した中国の戦いぶりは脅威に映らなかった。ただ、その中国とのアウェーゲームを引き分け以下で終えたら……。今予選、日本、恐れるに足らずと、対戦国はリスペクトを排除して臨んでくるかもしれない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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