目指すは大学三冠! 法政大が2017年以来の総理大臣杯制覇。劇的な逆転勝利で“シルバーコレクター”を返上

目指すは大学三冠! 法政大が2017年以来の総理大臣杯制覇。劇的な逆転勝利で“シルバーコレクター”を返上

2017年大会以来、3大会ぶり(2020年は開催せず)5度目の優勝を果たした法政大。逆転で東洋大を下した。写真:安藤隆人



「シルバーコレクターを返上したい」

 法政大の選手たちにとってここ3年、ずっと抱き続けた気持ちだった。2017年の総理大臣杯決勝で法政大は明治大を相手に、上田綺世の豪快な1点を守り切って、実に35年ぶり4度目の優勝を手にした。さらに2018年のインカレでも決勝で駒澤大を1-0で下して、42年ぶりに冬の大学王者に。ここから一気に時代は法政大のものになると思われたが、以降は常に“あと一歩”のところで涙を飲んできた。

 前回大会となる2019年の総理大臣杯決勝では明治大に1-2のリベンジを許して準優勝、昨年の特例全国大会となったatarimaeni Cupでもファイナリストとなったが、決勝で伏兵の神奈川県リーグ(現関東リーグ2部)の東海大に敗れて準優勝に終わった。
 
 そして今年も天皇杯東京都予選において2年連続で決勝敗退。さらに総理大臣杯の関東予選にあたるアミノバイタルカップ決勝でも、関東2部の産業能率大にPK戦の末に敗れて準優勝。壁を突き破った2017、2018年から足踏みが続いている状態だった。

 もちろん、裏を返せばその舞台まで必ずやってくる法政大のチーム力は特筆に値する。だが、それでは法政大の選手たちは納得しないだろう。それゆえ、今回の総理大臣杯は全員のモチベーションが全く違っていた。

 初戦のIPU・環太平洋大戦では、試合前のウォーミングアップにおいて、ボランチで精神的な支柱だったキャプテンの田部井涼が左足の肉離れを起こし、直前で離脱するというアクシデントに見舞われた。しかし、「すぐに涼の分まで戦おうと切り替えられた」と、田部井からキャプテンマークを託されたFW佐藤大樹が語ったように、4年生を中心にチームはまとまった。

 さらに代わりに出場したMF渡邉綾平が安定したプレーを見せ、3-1の快勝で好発進を切った。3回戦で日本文理大を2-1で下すと、準決勝では同じ関東1部の筑波大を4-0で圧倒し、ファイナルまで勝ち進んだ。

「去年のatarimaeni Cup決勝でも主導権を握りながら、一瞬の隙を突かれた。昨日のミーティングでも少し話したのですが、今までやられている傾向を見ると、コーナーキックやFK、スローインなどのセットプレーからのちょっとした隙をやられてしまった。そこをいかに抑えて、相手に隙を与えないことが大事になると話をした」

 長山一也監督がこう語ったように、この試合はいかに自分たちのペースになった時に冷静にリスクマネジメントをしながら攻め続けられるかがポイントだった。選手たちもそれを理解し、ピッチに入った。

 先制したのは関東2部の東洋大だった。11分にMF梅津凌岳に豪快なシュートを突き刺されリードを奪われるが、「まだ時間帯も早かったので、もう一度落ち着いて戦えば大丈夫だと確認した」とMF松井蓮之が語ったように、失点直後に選手たちが集まり、松井と佐藤ら4年生を中心に気持ちを一つにした。

 そして、前半中盤から徐々に法政大が主導権を握り出すと、41分には松井が積極的な攻撃参加から同点弾を叩き込んで試合を振り出しに戻す。後半は完全に法政大ペースとなった。ポゼッションとFW佐藤をターゲットにして、トップ下の中井崇仁、左MFの田中和樹らプロ内定のアタッカーが果敢に前線に飛び出し、かつアンカーの松井もアタッキングエリアに頻繁に顔を出して波状攻撃を仕掛けた。
 

 52分、松井の浮き球のパスを受けた右MF陶山勇磨が、胸トラップからシュートを放つが、これはサイドネット。56分には松井が左サイドをえぐってマイナスの折り返し。中井のシュートはGK青木祐太のファインセーブに遭い、こぼれ球を佐藤が決定的なシュートを放つも、これはカバーに来たCB中村勇太の身体を張ったブロックに阻まれた。

 78分にも左サイドを突破したDF今野息吹のクロスを佐藤が落として、最後は田中がシュートを放つも枠を捉えきれず。さらに84分には交代出場のFW飯島陸が決定機を迎えるが、放ったシュートはまたもGK青木のビッグセーブに遭った。
 
 何度決定機を作っても決めきれない。ararimaeni Cup決勝を彷彿させるような展開となったが、選手たちの中に嫌なムードは漂っていなかった。それは何度もピッチの中やベンチから「隙を見せるな」という声が出ていたからだ。「決してネガティブにならなかった」と松井が語ったように、決めきれないで焦れて自滅するのではなく、チャンスを作れていることをポジティブに考えてやり切ることに全員が集中できていた。

 そして後半アディショナルタイムも指定された3分に差し掛かった時だった。交代出場のMF中川敦瑛のスルーパスに抜け出した佐藤が後ろから倒され、絶好の位置でFKを獲得。これを「絶対に自分で決めると思っていた」と佐藤が左足を振り抜いて突き刺し、劇的な決勝弾をチームにもたらした。

 試合再会直後にタイムアップのホイッスルが鳴り響き、法政大が3大会ぶり5度目の優勝を手にした。

「正直ほっとしています」。試合後の長山監督がこぼしたこの言葉が法政大全員の気持ちを代弁していた。だが、ここで一喜一憂をしている暇は彼らにはない。来週からはすぐに関東1部リーグ戦が控えている。

「あとは関東1部リーグとインカレを制して、全てのタイトルを獲得したい。この勢いを無駄にしないようにしたい」(松井)

 不本意なシルバーコレクターという称号を捨てて、王者の栄冠を手にした彼らのその目は、すぐに次へ向けられていた。これまで過去の偉大な先輩たちでさえ成し得ることができなかった三冠という大きな目標に向かって、彼らはすでにその歩を進めている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
 

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