苦い思い出が甦る“中東での戦い”… 勝利が欲しい中国戦で森保ジャパンのキーマンとなる選手は?

W杯最終予選で中国戦に臨む日本代表 スポーツライターは森保一監督への心配綴る

記事まとめ

  • カタール・ワールドカップ最終予選で、日本代表はカタールで中国戦に臨む
  • 1トップは大迫勇也、2列目は久保建英、堂安律、鎌田大地が望ましいと筆者は指摘した
  • 森保一監督にはオマーンに敗戦後ショックが見て取れたといい、筆者も心配だと綴った

苦い思い出が甦る“中東での戦い”… 勝利が欲しい中国戦で森保ジャパンのキーマンとなる選手は?

苦い思い出が甦る“中東での戦い”… 勝利が欲しい中国戦で森保ジャパンのキーマンとなる選手は?

初戦を落とし、負けられない2戦目の中国戦に臨む日本代表。果たして、中東の嫌なムードを払しょくできるか。写真は、左上から時計回りに、久保、大迫、森保監督、守田。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



 カタール・ワールドカップ最終予選、オマーンに敗れ、カタールで2戦目となる中国戦に臨む日本代表。ホームでの敗戦の気持ちをリフレッシュして、コンディションを整えてといきたところだが、今回の中国は侮れない。

 FWエウケソンら帰化した選手を加え、チーム力を各段にアップさせてきた。
 
 また、中国は、コロナ感染症対策で外国人の入国が厳しく制限されているので、W杯最終予選のホームをすべて中立国、ドーハを起点に試合を行なうことを決めている。

 今回も8月26日からカタールで合宿をスタートさせ、現地の厳しい暑さに順化させてきた。

 2017年に完成し、ピッチ上まで冷房が完備されたスタジアムで迎えた初戦の豪州戦は0-3で敗れたが、動き自体は悪くなかった。長距離移動してきた日本よりは、はるかにコンディションが良く、スタジアムを知り、気候にも慣れるなど戦う上で優位性を持って中国は日本を待ち受けている。

 森保一監督になってから中東で戦うW杯最終予選は初になるが、思い返せば日本はいつの時代も「この地」で厳しい戦いを強いられてきた

 9月の試合で思い出されるのは、フランスW杯最終予選、2戦目のアブダビで行なわれたUAE戦だ。高温多湿で試合会場はモヤがかかり、座っているだけでシャツが汗でびしょびしょに濡れ、こんなところでサッカーをしたら死者が出るのではと本気で思ったほどだ。実際、試合での日本の選手はもちろん、ホームのUAEの選手も動けないほどで、スコアレスドローで終えてラッキーと思えた試合だった。試合後、名波浩が「こんなところでサッカーできねぇよ」と疲労困憊の身体で語ったのが印象的だった。

 ジーコジャパンの時は、ドイツW杯最終予選2戦目となるアウェーのイラン戦が忘れられない。

 10万人もの男性ファンでスタジアムが埋まり、大声援を繰り広げ、その雰囲気は恐怖すら感じた。当時のイランの主力選手は欧州で活躍し、アジアでも頭ひとつ抜けた存在だった。その力にファンの後押しが重って試合では圧倒され、1-2で敗れた。試合後、キャプテンの宮本恒靖は「経験したことがない強烈な威圧感を感じた」と語ったが、圧倒的なアウェーを肌で感じたのは、このイラン戦が今も断トツだ。

【PHOTO】W杯アジア最終予選オマーン、中国戦に臨む日本代表招集メンバー24人
 ザッケローニ監督時代のブラジルW杯最終予選では、アウェーでヨルダンに苦杯をなめている。この時、日本はグループ首位に立ち、ヨルダンと引き分け以上でW杯の出場権を獲得できた。ホームでは6-0で勝ち、アウェーでも負けることはないだろうと余裕を持って臨んだが、敵地のスタジアムは約2万人の観衆で完全に埋まり、太鼓や歌で異様な雰囲気だった。試合では遠藤保仁のPKの時、レーザー光線が照射されるなど、ありえないことが起きた。また、2-1で試合に勝ったヨルダンの選手がザッケローニ監督にクビを掻き切るジェスチャーをして、それに激高した監督が選手に言い寄るなど騒然した中で終わった。
 
 今回、対戦相手は中東国ではなく、また空調のきいたスタジアムで試合ができるので、暑さの直接的な影響はない。だが、パスを主体にしつつ、ラフな肉弾戦を挑んでくる中国のスタイルを鑑みて、従来のレギュラーにこだわらず、この地で戦って勝つため必要な要素を満たした選手の起用が望ましい。

 まず、当然だがコンディションの良い選手。森保監督はオマーン戦後、海外組のコンディションのばらつきを危惧していたが、ここにきてその心配するなら国内組でもサブ組でもとにかくコンディションが良い選手を優先した方がいい。室温と外気温の差が激しいと試合中、コンディションの悪い選手は身体が急にだるくなったり、体調不良を起こすリスクが高まる。アクシデントなどで交代枠を使うのは、読めないコンディションでの試合だからこそ避けたい。

 もうひとつは、試合中に気持ちの強さを見せられる選手だ。このチームは黙々派が多いので、ピッチ上の熱や激しさが選手に伝播しにくい。また、苦しい時や判断力が鈍った時、喝を入れてくれる選手がいると、気持ちが切り替わる。では、誰が、その役割を果たすのかというと吉田麻也はもちろん、期待しているのが久保健英だ。東京五輪で号泣したあの熱い気持ちをピッチ上で表現してほしい。

 もうひとつは、豊富な個人戦術と柔軟性を持つ選手になる。

 暑さの中での練習で疲労が残り、試合中に動きが鈍ると従来の攻撃がうまくいかなくなる可能性がある。そうなると攻撃面の見直し、修正が必要になる。いろんなことを想定し、時にはシンプルでオーソドックスな攻撃に切り替えて戦える選手が望ましい。

 その観点でスタメンを考えると1トップは、大迫勇也だ。
 
 脱大迫と言われているが、まだ代わりはいない。オマーン戦は動きのキレもプレーの精度ももうひとつだったが、同じ轍は踏まないだろう。また、個人戦術に長けており、シンプルに外からクロスを入るだけの攻撃にも強さを発揮するのでスターターは大迫がベスト。
 
 2列目の3枚は、トップ下が久保、右MFが堂安律、左MFは鎌田大地。久保と堂安の右サイド、中央でのつくり、コンビネーションは武器であるし、精度も高い。鎌田は「どこでもやれる」という自信を持っており、久保と共存ができれば、オプションとして効果的な一手になる。

 ボランチは、守田英正と遠藤航。
 守田はオマーン戦を見て、「ピリッとさせたいとは思います」と語っており、やるべきことが見えている。早くに現地入りし、コンディションが良さそうなので、期待大だ。

 ボランチから後ろのユニットは、個人的に韓国に勝った時のメンバーで十分戦えると思う。

 酒井宏樹が離脱した右サイドバックは、クロスの質が高く、堂安らとの絡みで攻撃を作れる山根視来。冨安健洋がセンターバックに戻り、左サイドバックは佐々木翔で勝負する。佐々木は、クロス対応など高さに強く、CBやGKにとってこれほど心強いものはない。攻撃も無理せず、人をうまく使うことに長けている。森保監督が信頼してメンバーに入れているのであれば、起用することでそのことを証明してほしい。

 ここに来て、少し心配なのは、森保監督だ。

 オマーン戦に敗れた後の記者会見は、かなりのショックが見て取れた。いつものはきはきした声ではなく、沈みがちで同じことを繰り返し、心が抜け落ちた感があった。カタールに来る際、気持ちは切り替えたようだが、プレッシャーは一段と大きくなっているはずだ。絶対に負けられない次の試合、嫌なムードが漂う中東の地だが、それを打ち破って勝てる監督でなければ、とてもW杯では勝ち抜けない。

 中国の棋風を読み、大胆に選手を起用し、勝点3を勝ち取るための手を打てるか。負けた後の次の一手が非常に注目される。

文●佐藤 俊(スポーツライター)

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