崖っぷちの豪州戦で起用すべき人材は? 柴崎の致命的ミスに象徴される「主軸依存」を払拭できるか

崖っぷちの豪州戦で起用すべき人材は? 柴崎の致命的ミスに象徴される「主軸依存」を払拭できるか

元川氏が推奨するオーストラリア戦のスタメン。



 吉田麻也(サンプドリア)、長友佑都(FC東京)ら守備陣5枚と遠藤航(シュツットガルト)と柴崎岳(レガネス)の両ボランチ、そして絶対的1トップ・大迫勇也(神戸)。この7人は森保一監督が2019年アジアカップ(UAE)の時から絶対的信頼を寄せてきた面々だ。2列目に関しては、南野拓実(リバプール)こそ彼らに準ずる扱いであるものの、クラブでの活躍度や調子の善し悪しによって多少の入れ替えはあった。いずれにせよ、上記の「7枚プラスワン」はこの2年半、「森保ジャパンの主軸」と位置づけられてきた陣容と言っていい。
 
 そのひとりである柴崎のバックパスのミスが決勝点につながり、日本は10月2連戦の最初の大一番・サウジアラビア戦(ジェッダ)を0-1で落とした。

「岳を責められるわけではないし、90分通して岳との距離(修正)だったり、サポートするようなプレーがしたかったなという反省はあります」と遠藤は神妙な面持ちでコメントしていたが、その前から柴崎は狙われ、ボールを失う場面が目立った。

 にもかかわらず、森保一監督は代えやすい2列目こそ早い段階で手をつけたものの、「チームの心臓」と考える柴崎・遠藤コンビは不変だった。ベンチには3・6月シリーズでチームに躍動感を与えた守田英正(サンタ・クララ)と東京五輪で遠藤と好連係を見せた田中碧(デュッセルドルフ)がいたが、彼らを先手先手で投入する策は講じなかった。

「柴崎は疲労が見えてきたので、交代をしようと思っていたところでの失点になりました。ただ、タイミングとしては間違いではなかったかなと思っています」と指揮官は判断の妥当性を主張するが、本当に的確な判断だったのかは疑問符が付くと言わざるを得ない。

 終盤足が止まっていたのにもかかわらず、最前線で棒立ちになっていた大迫、攻撃参加するエネルギーを失っていた酒井宏樹(浦和)と長友にしても同様だ。最後の最後に長友と中山雄太(ズヴォーレ)を代えるくらいならもっと早い段階で起用してほしかった。「石橋を叩いて渡る」傾向の強い指揮官にはやはり大胆さや思い切りのよさが足りないように映った。
 

「万が一、予選敗退でこのチームの活動が終わるなら、おそらくガラッと選手が入れ替わることになるでしょうし、自分自身もそこが区切りになると思っている。そんな不甲斐ない結果になってしまったら、すっぱり辞めようと思います」とキャプテン・吉田は今、代表キャリアを賭けて挑んでいることを改めて明言した。
 
 選手のリーダーがそこまでの覚悟で戦っているのだから、森保監督ももっと闘争心と勝利への戦略を前面に押し出し、真っ向勝負に出るべき。さしあたって12日の次戦・オーストラリア戦(埼玉)はチームに躍動感をもたらせる人材を積極的に選ぶべきだ。

 その筆頭が古橋だろう。59分からピッチに立った彼はタテへの推進力をもたらし、ゴールの予感を漂わせた。とりわけ原口のシュート性のクロスに飛び込んだ88分の得点機はあと一歩という惜しいチャンスだった。やはり彼はゴール前に置いてこそ、得点力を発揮できる。大迫、あるいはオナイウ阿道(トゥールーズ)らと2トップ気味に配置し、とにかくゴールへ突き進む環境を作ることが有効だ。

 前線2枚だと2列目は1枚手薄になるが、2トップの1枚が守備のサポートに入れば問題ないだろう。その前提の下、屈強なオーストラリア人選手に当たり負けしない原口はぜひ使いたい人材。サウジ戦の南野は不調だったため、バックアップの一番手は鎌田だが、南野が復調すれば彼も使える可能性はある。そのへんはしっかり見極めつつ、判断したい。

 もう1枚はもちろん出場停止明けの伊東純也(ヘンク)がファーストチョイス。浅野拓磨(ボーフム)もサウジ戦では悪くなかっただけに、彼も含めて破壊力あるベストなチョイスをすることが重要だ。

 ボランチにしても、球際や寄せなどのスタンダードの高い遠藤航は置いておく必要があるが、精彩を欠いた柴崎は下げるべきか。その代役として有望なのは、東京五輪で遠藤といいコンビネーションを確立している田中碧だ。「自分はゲームの流れをうまく循環させるプレーには自信を持ってますし、クサビだったり、裏に出すボールでは勝負できるんじゃないかなと思っている」と本人も堂々と言っていた。彼の武器である循環力が今の日本に確かに欠けている部分。ここは中盤のタクトを任せてもいいはずだ。
 

 守備陣は連係や意思疎通を考えると変えづらい部分もあるが、長友や酒井の疲労を見ながら、中山や室屋成(ハノーファー)の先発を検討していい。中山であれば、東京五輪で吉田、冨安健洋(アーセナル)と最終ラインを形成していて、計算ができる。しかもオーストラリアがサイドからの攻めを得意とし、高さと強さを兼ね備えている分、長身左サイドバックの存在は心強い。
 
 このようにコンディションがよく、チームを活性化する予感に満ちた陣容で挑めば、仮にオーストラリアに敗れるようなことがあっても、未来にはつながる。グループ3位でプレーオフに回る可能性を踏まえても、戦力の幅を広げておくことは肝心だ。

「これまでのベースを大事にして、手堅く計算できる人間で乗り切る」という固定概念から森保監督が脱することができるか否か。そこに生死を賭けた次戦の行方がかかっているといっても過言ではないだろう。

取材・文●元川悦子(フリーライター)
 

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