ピッチ内の戦犯探しの前に見るべき森保Jの大局。“設計力”の差がサウジ戦の結果に表われた

ピッチ内の戦犯探しの前に見るべき森保Jの大局。“設計力”の差がサウジ戦の結果に表われた

敵地でのサウジ戦は0-1の敗戦を喫した森保ジャパン。最終予選で3試合を終え、1勝2敗と厳しい状況にある。(C)JFA



 完全アウェーでサウジアラビアに敗れてしまった日本代表。0-1というスコアで負けている以上、直接の原因として71分の失点につながる柴崎岳のミスパス、少し視野を広げても酒井宏樹、原口元気、柴崎岳、吉田麻也とつながる右サイドの連係ミスがあげられるのは当然だろう。

 そこで一連のズレと柴崎のミスパスが、吉田の裏でアル・ブリカンがGK権田修一と1対1になる状況を生んでしまった。そこに関しては最終予選の大事な試合において言い訳は許されない。ただ、試合全体の背景を考えると、やはりもっと根本的なところに問題を見ることができるし、残りの試合を考えても建設的な指摘ができるように思う。

 結論から言うと、日本は19年アジアカップの経験を良い意味で糧にできていない。メディアも含めて今回のテーマとしてアジアカップでのサウジアラビア戦があげられていた。つまり70%以上もボールを持たれて、ほとんど自陣に張り付けになってしまった試合だ。

 もちろん、早い時間帯にセットプレーから冨安健洋が先制点を決めたことが導いた試合展開でもあったが、前からのプレスがハマらないと守備が後手に回るという問題は当時から見られた。

 そのサウジアラビア戦よりも、今回はアジア杯決勝のカタール戦に似た現象がピッチに起きていた。日本もサウジアラビアもベースは4-2-3-1だが、ロシア・ワールドカップでモロッコ代表を率いたエルベ・ルナール監督が率いるサウジアラビアは、守備で日本とミラーゲームのような状況を作りながら、攻撃の立ち位置をうまく変えることで、日本の守備をハメさせずに高い位置で起点を作ってきた。

 90分を通すとサウジアラビアが54%のボール保持率で、日本は46%だったが、それは終盤にリードされてからの挽回があった結果で、前半終了の時点ではサウジアラビアが59%だった。
 
 問題なのはその内容面で、4-4-2で構える日本は、ボランチの一枚が落ちるなど3バックを形成しながら両サイドバックを上げてくるサウジアラビアに対して、あらゆるエリアで数的有利を作られてしまっていた。

 アジア杯のサウジアラビアと今回のチームが違っていたのは距離の取り方で、2年半前のチームはボールを保持していても近い距離での横パスが多く、日本がブロックを作って構えていれば、ボールを持たれていても脅威にはなっていないように見えた。当時の試合を経験した選手たちの言動が、ボールを持たれた割に圧倒されたという印象がないのもそのためだろう。

 しかし、今回のチームは右サイドハーフのアル・ムワラド、左のガリーブが攻撃の幅を取ることで日本のサイドハーフを下げさせて、サイドバックが高い位置でボールを持つと中に流れて中央に厚みを作り出すというビジョンの共有が見られた。

 そうした攻撃に対して日本はボランチの柴崎がワイドに流れることで、サイドハーフを下げすぎないようにしていたが、中央が遠藤だけになってしまい、そこをアル・ファラジュ、さらに逆サイドのアタッカーに使われるという状況が生まれていた。
 

 日本が2次予選のように攻撃面で完全に上回る前提であれば、相手を押し込んだところから即時奪回と縦に速い攻撃を繰り出し続けたら強度で相手を押し込めてしまうが、力が接近してくると位置的優位の奪い合いで上回るほうがアドバンテージを取れる傾向が現代サッカーの主流になっているのは周知の事実だ。

 サウジアラビア側から見ると、立ち位置で有利な状況の中で、日本が無理にプレスに来れば周囲にスペースが出来るので、そこをうまく使って行けばチャンスにつなげることができる。それでもミスはあったり、日本は遠藤や冨安の個人能力でリカバリーして、ボールを奪ったところからシンプルに何度か大きなチャンスが生まれたので、日本がなんとか対抗しているように見える時間帯もあったが、総じてサウジアラビアが主導権を握ったまま失点の時間帯まで行ってしまった。

 サウジアラビア戦で1つの解決方法としては、プレビューでもあげていた通り、システムを4-3-3にするのは有効だった。前3枚で相手が4バックでも3バックでもプレッシャーをかけられるようにしたうえで、中盤の3枚が中央とサイドを幅広く守るようにすることで、相手に位置的優位を取らせないメカニズムを作り出せたはずだ。

 その場合、トップ下の鎌田大地をインサイドハーフに下げてしまう起用法もあるが、より守備の強度を意識するならスタートから遠藤、柴崎に守田英正を加えた3ハーフにして、後半途中から田中碧を投入したり、攻撃的に行く場合は鎌田を入れる流れを取るというのが想定できるプランだ。4-2-3-1の中で細かい立ち位置を変える判断は選手にもできるが、やはり戦術設計で大きな責任を負うのは監督であるべきだ。
 
 オーストラリアもサウジアラビアとまた違った形で位置的優位を取りにくる。メンタル面の回復はもちろん、再び長い移動を挟んでの2試合目となるだけに、コンディションは大きなポイントになるが、試合前からの戦術設計で相手の後手を踏むと、同じようにズルズルと行ってしまう危険がある。

 いざピッチに立ってみないと分からない情報もあるかもしれないが、すでにオーストラリアは3試合をこなしており、基本的な戦い方、取ってくる立ち位置の想定は十分にできる。言い換えると日本側の基本的な戦い方もグラハム・アーノルド監督に把握されているのは間違いなく、コンディション、メンタルだけではない領域にももっと向き合っていく必要がある。それがオーストラリア戦で出来ないのなら、残り6試合のために大きな決断もやむなしだろう。

取材・文●河治良幸

【W杯アジア最終予選PHOTO】日本 0-1 サウジアラビア|ミスから痛恨の失点…攻撃陣も不発に終わり、予選突破に向け痛すぎる敗戦
 

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