名古屋、“カップ戦三冠”へ邁進。これまで見せてきた勝負強さに嘘はない。勝つために死力を尽くせるか

名古屋、“カップ戦三冠”へ邁進。これまで見せてきた勝負強さに嘘はない。勝つために死力を尽くせるか

今季の名古屋はカップ戦三冠の可能性を持った唯一のチーム。来季のACL出場権をかけたリーグ戦での戦いにも注目だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 AFCチャンピオンズ“リーグ”(ACL)を大会方式上、ワールドカップなどと同様に“カップ”として捉えるならば、今季の名古屋はいわゆる『カップトレブル』、カップ戦三冠の可能性を持った唯一のチームとなる。

 ACLは10月17日からの韓国ラウンドで準々決勝を、天皇杯はその遠征から帰ってきてすぐに準々決勝を、そしてルヴァンカップではクラブ初となる決勝進出に、今まさに王手をかけている。リーグ戦でも来季のACL出場権をかけた3位争いの真っ只中だが、今季の名古屋はカップ戦に強い、という評判ももはや定着してきた感はある。

 なぜカップ戦に強いのか、という議論はあまり意味を持たない。ルヴァンカップはACL出場のため予選は戦っておらず、天皇杯の序盤戦はいわゆる格下の相手がほとんど。ACLのグループステージはセントラル開催の超過密日程で行なわれ、どれもイレギュラーと言えばイレギュラーの対応をタフに闘い抜いてきた結果だからだ。

 特にタイに遠征したACLでは、厳格な隔離措置の中でかなり過酷なコンディショニングを強いられ、帰国した後もホテルでの隔離が義務付けられた。合計で1か月あまりに及ぶバブルの中での日々は心身ともに名古屋を消耗させ、その影響で8月の序盤戦には思わぬ脆さを見せてもいる。

 その中でシュヴィルツォクなどの新戦力の力を借りつつ、粘り強く勝利をもぎ取ってきた過程の中に、このカップ戦三冠の可能性は残されてきたのである。
 
 今季新加入の森下龍矢は、苦境のチームが蘇っていく様を見てこう言っている。

「僕たち“途中から”入った選手がどういう風に名古屋グランパスが強くなっていくのか、そういう過程やノウハウを知れたというのはものすごく大きくて、価値のあるものだった」

 堅守をベースに、という見た目の名古屋らしさだけでなく、トレーニングの中で何を突き詰めていくか、メンバーに求められる資質、その鍛錬方法。Jリーグで100勝を挙げた名将マッシモ・フィッカデンティ監督が持つ勝利のメソッドを存分に発揮できる環境も名古屋には揃っており、その中で組み立てられる目の前の1勝をつかむ用意周到な準備の賜物は、あるいは一発勝負のカップ戦では強みとして出ているところはあるかもしれない。

 それは2戦とも2-0で相手を圧倒したルヴァンカップ準々決勝の鹿島戦のごとく、その時に自らが持っている条件を有効活用し、試合運びに反映させられる試合巧者ぶりにも表われている。
 

 ただしその道は険しく、一歩間違えば“二兎を追う者は一兎をも得ず”で3匹目のウサギを追うようなことにもなりかねない。その合間といっては語弊があるが、リーグ戦でも上位争いをするチームにかかる負荷とストレスは想像を絶するものもある。

 一戦必勝をキーワードに戦う名古屋の選手たちも、プレッシャーの強い試合が連戦で重なってくる日程には相当の覚悟が必要で、これまでストイックに突き詰めてきたシーズンの戦いを、さらに研ぎ澄ませていくような作業ができるか否か。負傷者も軒並み戻り、選手層にやや厚みが出てきたのは朗報だが、何より優先すべきはハードワークと堅守という土台の維持だ。

 リーグ31節の広島戦、序盤の決定機を逃して以降は停滞したチームに対し、フィッカデンティ監督は強い口調で「チームのために走れないのであれば使わない、ということをしっかりと選手たちには把握してもらいたい。人の分まで走らないといけないという負担が増えていく。それは今のグランパスにとってはまったく必要のないこと」と言い放った。

 勝つために死力を尽くせるか、それも毎試合できるか、という点をどれだけ徹底できるかが、名古屋のカップ戦三冠の可能性には直結する。
 
 これらすべてを考えたうえで、今季の名古屋には少なくともタイトル獲得への期待が、そして最高の成績としてのアジア制覇を含めた“カップトレブル”という栄冠への希望が膨らんでくる。まずは10月を戦い抜き、各大会でファイナリストへの道を切り拓くことが大前提だが、これまでのシーズンで見せてきた勝負強さに嘘はない。

 負けを何よりも嫌い、勝つためには何でもできる指揮官と選手はあくまで貪欲に試合へ臨んでいく。その意欲と負けん気、チームの一体感は、優勝を勝ち取るチームに特有の高まりを見せていると正直に思うのである。

取材・文●今井雄一朗(フリーライター)

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